表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暁夜の下で姫は誓う 〜父を殺され、居場所を失った王女が再び王になるまで〜  作者: 藍凪みいろ
第三章 紅蘭国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/24

第24話 王女奪還


 セナが連れ去られた先――

 その可能性が最も高い場所として、ルソンたちが辿り着いた答えは一つだった。


 黎明国(れいめいこく)の王都。


 月影村(つきかげむら)を発った一行は、街道を東へと進み、昼夜を問わず歩き続けた。

 黎明国へ近づくにつれ、道行く旅人の数は増え、行商人の荷車や巡回兵の姿も目立つようになる。


 だが、それは同時に――

 人攫いが紛れ込みやすい場所でもある、ということだった。


「……王都か」


 遠くに見えてきた高い城壁を見上げ、ルソンは低く呟いた。

 黎明国の王都は、名の通り“夜明け”を象徴する国の中心。交易も人の往来も盛んで、華やかさと活気に満ちている。


 しかし、その光の裏側に、深い闇があることをルソンは知っていた。


「犯罪組織が根を張るには、うってつけだねぇ」


 セルの言葉に、ルソンは無言で頷く。

 彼の視線は、城門へと続く道の先ではなく、その脇へと逸れていた。


 王都へ入ってからしばらく。

 繁華街を抜け、人気の少ない裏路地へと足を踏み入れた頃だった。


 石畳はひび割れ、建物の壁には古い傷跡が残る。

 昼間だというのに、陽の光はほとんど届かず、空気は重く澱んでいた。


「……ここだな」


 シウが足を止める。

 彼の視線の先にあったのは、街の景観から浮いた一軒の建物だった。


 表向きは倉庫のように見えるが、窓はすべて板で塞がれ、出入り口には不自然なほど頑丈な鍵がかけられている。

 周囲には人の気配がない。

 だが――静かすぎた。


「この場所、嫌な感じがする」


 リタが小さく呟く。

 鼻を突く、微かな薬品と鉄の匂い。

 そして、建物の裏手へと続く地面に残された、引きずられたような痕。


 ルソンはその痕の前に膝をつき、指先でなぞった。


「……新しい」


 胸の奥が、ぎり、と軋む。


「間違いない。セナはここに連れてこられた可能性が高い」


 ルソンは立ち上がり、建物を見据えた。

 その目に、もう迷いはなかった。


「……行くぞ」


 一行は無言で頷き合う。

 ここが、犯罪組織の隠れ家であることは疑いようがない。その奥に、セナが囚われていることを信じて。


✾✾✾


 隠れ家の裏口は、古い木製の扉だった。

 鍵は掛かっているが、長年使われていないのか、金属の擦れる音は鈍い。


 ルソンはシウ達に視線を送り、静かに頷く。

 シウが一歩前に出て、短剣を差し込み、わずかに力を込めた。


 ――カチリ。


 小さな音と共に、鍵は外れた。

 扉の向こうから、湿った空気が流れ出てくる。

 薬品と血の混じった、不快な匂い。


「……間違いないな」


 ルソンの呟きに、誰も返事をしなかった。

 一行は息を殺し、闇の中へと足を踏み入れる。


 薄暗い通路、無造作に積まれた木箱、壁に残る擦り傷――

 ここが、人攫いや密売を生業とする犯罪組織の拠点であることは明白(めいはく)だった。


「足音が聞こえた……来る」


 セルの小さな声と同時に、通路の奥から複数の足音が近づいてくる。


「侵入者だ!」


 怒号が響いた瞬間、空気が一変した。

 男たちが武器を構え、襲いかかってくる。

 ルソンは即座に剣を抜き、先頭の男の攻撃を弾き返した。


「邪魔をするな!」


 鋼と鋼がぶつかり合う音が、狭い通路に反響する。

 リタは素早く距離を詰め、敵の懐に潜り込むと、確実に動きを封じた。


「数が多いですねぇ……!」


 ルイアが弓を引き絞り、闇の中で動く影を射抜く。

 倒れた男の背後から、さらに別の男が飛び出したが、シウの一撃がそれを阻んだ。


「先へ行くぞ! 姫さまを優先だ!」


 ルソンの声に、一行は頷き合いながら前進する。

 奥へ進むにつれ、抵抗は激しさを増していった。

 だが、誰一人として足を止める者はいない。

 ――そして、地下へと続く階段の前に辿り着く。


「……いる」


 シウが低く告げる。

 階段の下から、微かに感じ取れる気配。

 ルソンは剣を握る手に力を込め、一段ずつ降りていった。


 地下室は、粗末な石壁に囲まれた空間だった。

 その中央、鎖に繋がれ、床に座り込んでいる少女の姿があった。


「……姫さま……!」


 その名を呼んだ瞬間、セナははっと顔を上げる。


「……ルソン……?」


 掠れた声。

 だが、確かに生きている。


「動くな!」


 背後から現れた組織の男が、刃を突き出す。

 だが、ルソンは迷わなかった。


 一瞬の踏み込み。

 剣閃が走り、男は声を上げる間もなく倒れ伏す。


 残った者たちも、仲間たちの連携によって次々と制圧されていく。

 やがて、地下室には荒い呼吸の音だけが残った。

 ルソンはセナの前に跪き、震える手で鎖を外す。


「……遅くなって、すまない」


 セナは一瞬、目を見開き――

 次の瞬間、力が抜けたようにルソンの胸に倒れ込んだ。


「……来て、くれるって……信じてたわ」


 その言葉に、ルソンはそっとセナを抱き寄せる。


「ああ。必ず、迎えに行くと決めていた」


 セルとリタが周囲を警戒し、シウとルイアが出口を確認する。


「ここはもう危険だ。すぐに出よう」


 ルソンはセナを抱え上げ、静かに頷いた。

 こうして――

 黎明国の王都の影に巣食っていた犯罪組織は崩れ去り、セナは、仲間たちのもとへと戻ったのであった。



セナ達の旅はまだまだ続いていきますが、これにて完結とさせて頂きます!ここまでお付き合いくださり、本当にありがとうございました!


また、今後も色々とお話を書いていく予定です。

作者ページからお気に入りユーザー登録をしていただくと、すぐにお知らせが行くのでぜひ……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ