序章
広大な領土を持つ大国である天蘭王国。
そんな天蘭王国の第一王女であるセナは現国王の一人娘であり、この天蘭王国の跡継ぎでもあった。
「ルソン〜! 見て、この髪飾り可愛いでしょ?」
麗らかな昼過ぎ頃。
セナは中庭で鍛錬をしていたルソンの元に訪れるなり、満面の笑顔で自身の空色の髪につけている青色の薔薇の形をした髪飾りを指差して見せつけてくる。
「あ、姫さまじゃないですか? ん? 本当だ可愛いですね」
黒髪に黒い瞳。
セナよりも背の高い護衛であり、幼なじみのルソンはセナの空色の髪についている青色の薔薇の形をした髪飾りを見てから返事を返した。
「でしょ! これね、外交から帰ってきたシウォンから貰ったの!」
「え、シウォン様、帰ってきたんですか?」
「ええ、今日の朝、帰ってきたわ!」
ルソンはシウォンが帰ってきたことを知らなかったのか少し驚いた顔をしてから嬉しさが混じった声で呟く。
「後で会いに行くかぁ」
「私も付き合うわよ!」
「でも、姫さま、もう会ったんですよね?」
「ええ、朝に会ったわ」
「ですよね、姫さまは本当にシウォン様が好きなんですねぇ」
セナはそんなルソンの言葉に恥ずかしがることなく「ええ、好きよ!」と返答する。
ルソンははっきりと好きと言えるセナとセナに好きと思われてるシウォンが少し羨ましいなと思いつつ、セナを見て優しく笑い「そうなんですね〜」と返した。
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ルソンは鍛錬を終えた後、待ってくれていたセナと共にシウォンの元へと訪れる。
「シウォン様、久しぶりですね」
「ルソン! 久しぶりですね!」
「はい、外交は上手くいきましたか?」
「ええ、上手くいきましたよ〜」
ルソンとシウォンは久しぶりの会話に少しばかり声が弾んでいた。
セナはそんな二人を見てにこやかな笑みを浮かべて口を開く。
「二人共、明日は何の日かわかる?」
「明日? 明日は確か春祭りでしたよね?」
「そうですね。ん? 何か言いたげですね、姫さま」
ルソンは目の前でにこやかな笑みを浮かべているセナを見てセナの口から発せられる次の言葉を待つ。
「去年は二人と春祭り行けなかったじゃない。ルソンは故郷のフィルラ村に帰省していたし、シウォンは父親の手伝いで忙しそうにしていたから」
年に一度、春に行われる春祭りは初春を祝うお祭りだ。
シウォンとセナ、セナの護衛であるルソンの三人は幼い頃からの付き合いでいわゆる幼馴染という関係であった。
そんな三人は毎年、かかさず一緒に春祭りに行っていたが去年初めて途絶えたのである。
「そういえばそうでしたね、去年は三人で行けませんでしたね」
「じゃあ、セナ、今年は三人で行きますか?」
「ええ、行きましょう! 二人とも、予定入れちゃダメだからね!」
セナはシウォンとルソンを交互に見て、嬉しそうな顔をする。
シウォンとルソンはそんなセナを見て、微笑み頷き返した。
そんなセナ達の姿を春の穏やかな日の光が照らしていた。




