『月のひげを持つ猫』
十歳の少女ソフィアは、仕事を失った父親が明日、大きな町へ職探しに出発することに心を痛めていた。夜中、窓から月を眺めながら「父さんが仕事を見つけられますように」と願う。その時、庭に一匹の不思議な猫が現れる。銀白色の毛並みと、星のように輝く長いひげを持つその猫は、ソフィアに語りかけた。自分の名はルナといい、この村の月のひげを持つ者だと。ルナはソフィアの心からの願いを光に変え、それを叶うための「きっかけ」を与えると約束する。願いが現実になるには、ソフィアと父親自身が心を動かし、行動を起こす必要があることを告げた。翌朝、ソフィアが父に「お父さんなら大丈夫。きっと良い仕事が見つかります」と伝えると、その言葉に父の心は少し動く。そしてその日、突然、父の古い友人から仕事の紹介が入るのだ。父は無事に良い職を得ることができた。ソフィアは、頬に付着したルナの銀色のひげをノートに挟み、月に向かって感謝の言葉を呟くのであった。
第一話 「銀白色の訪問者」
2025/12/29 18:17