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開けても、開けても…。

作者: 赤虎鉄馬
掲載日:2025/08/21



扉。

開けても、開けても、また扉。


最初は気まぐれだった。

古びたビルの廊下を歩いていて、何気なく扉に手をかけただけだ。

――ギィ。


薄暗い部屋を通り抜け、反対側の扉を開けると、また同じ廊下。

壁の色も、床の模様も、照明の位置さえも変わらない。

不思議に思いながらも、もう一度、扉を開けてみた。


――ギィ。


そこにも、また同じ扉。


三度目。四度目。

気がつけば、数えるのをやめていた。


背後を振り返ると、そこにはもう“来たはずの扉”は存在しない。

ただ、目の前に続く扉だけがある。


汗ばむ手で取っ手を握り、震える指で押し開ける。

――ギィ。


また、扉。


その時、ふと気がついた。

ほんのわずかに……取っ手の位置が低くなっている。


そして次の扉では、さらに低く。

次の扉では、さらに、さらに。


しゃがみ込まなければ掴めないほどに下がっていった時、ようやく悟った。


――これは“出口を探す扉”ではない。

――これは“入り口へ近づく扉”だ。


最後の扉の下には、もう取っ手が無かった。

暗闇の底へと吸い込まれるように、床が開いていた。


……その先を覗き込んだ者がどうなったのかを、知る者はいない。


ただこの話には、ひとつの決まりがある。

夜中に何気なくドアを開け続けてはいけない――

気づかぬうちに、“あちら側”へ行ってしまうからだ。





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