6、クラス代表
職員室に向かうと、丁度両クラスの担任が休け――いや、仕事をしていたので、事情を説明する。
「ほう、執事メイド喫茶か……いいんじゃないか? そっちはどうだ?」
「面白そーじゃない、いいわよ」
……二人ともあっさり許可を出してくれたので、私たちはそのまま自分の教室へと帰る。別れる時に真くんが「そっちもそっちでちゃんと考えときや!」と言い残して去っていく。
考えておくのは良いけれど、どうやって両クラスの意見をまとめるのか……? と疑問に思っていた私だったが、流石紗夜さんだ。そこの事は考えてくれていたようだ。
クラスに戻ると、渚くんが私に教えてくれた。
「紗夜さんがね、『クラス代表を二名選出して、四名で内容を擦り合わせましょう。後ほど伺います』って言っていたよ」
「紗夜さんの働きは素晴らしいな……」
まるで真くんの言動を見越していたようだ。苦笑いする私を見たのか、不思議そうな表情で朱音さんが訊ねてくる。
「黒の王子はなんち言いよったと?」
「『そっちもそっちでちゃんと考えときや!』と言い残していったよ」
「「ああ〜」」
皆が納得した表情をしている。分かる。真くんならそう言いそうだろう事は。
「じゃあ、クラス代表を決めないといけない、という事だね」
渚くんの声にみんながハッとする。そうだ、紗夜さんは『クラス代表二名』と言っていたな。
「一人目は光くんで良いと思うんだ。先生からご指名が来ていたし。光くんはどう?」
「あ、ああ。別に構わないよ」
それくらいなら良いだろう。今、そこまで忙しいわけじゃないからな。
「後はもう一人、クラス代表が欲しいのだが……誰か――」
そう私が言うのと同時に、勢いよく手が挙がった。りおなさんだ。
「もしかして、りおなさんがやってくれるのか?」
「え〜? ウチ? ウチは無理〜⭐︎」
じゃあ何で手を挙げたのか、という空気が周囲を取り巻くが、彼女はそれを気にする事なく満面の笑みで告げた。
「はいはいはーい! もう一人は雛ちゃんを推薦しちゃう〜⭐︎」
その言葉でピリついていた空気が、一瞬で離散する。
「僕も良いと思う」
「良いっちゃね!」
「あら、良いじゃない」
クラスのみんなが賛同している。私としては……二人で一緒に何かできるなんて……とても嬉しいのだが。心臓の音が激しくなっているような気がする。そう言えば、今まで二人で何かする、なんて事はなかったよな……?
そんな事を考えていると、少しだけ頬が熱くなったような気がした。気のせいだろうが。
それよりも雛乃ちゃんが良いのかどうか、だ。私が嬉しくても、彼女は嫌かもしれないからな。
「雛乃さん、りおなさんはこう言っているけど……」
「……ります」
「えっ?」
俯いてプルプルと小刻みに震えている雛乃ちゃん。何かを言ったみたいだけれど、壇上にいる私には何て言ったのか、残念ながら聞き取れなかった。
ただ、彼女の周囲に座っている朱音さんと、りおなさんはニマニマしているし……渚くんも満足そうな表情をしている。これは……これは期待して良いのだろうか?
――そうだったら、嬉しいのだが。
期待が十分に高まった頃、雛乃ちゃんが立ち上がって握り拳を作る。そして――。
「引き受けさせてください! 私、光くんと一緒に頑張りますね!」
光くん、と不意に呼ばれて私は胸が高鳴った。
周囲から拍手が起こる。彼女の頬は、まるで林檎のように真っ赤になっていた。
……ああ、やっぱり雛乃ちゃんは可愛いなぁ。