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2、華の姫

 クラスに戻ってくると、私以外の全員が席についていた。

 まだ昼休み中のため、席で読書をしている人もいれば、何かをノートに書いている人もいるし、隣同士で会話している人もいる。


 後列の窓際にある空いている席。それが私の席だ。

 そして私の隣には――。


「お、お帰りなさい……光……くん」


 席に戻ると隣の彼女が声をかけてくれた。

 頬を林檎のように真っ赤にして話す『華の姫』雛乃(ひなの)ちゃん。私が物語に出てくるような王子様ならば、彼女は物語に出てくるお姫様だ。

 

「ただいま、雛乃さん」


 心の中ではいつも『ちゃん付け』で呼んでしまう。彼女の雰囲気に合うからだろうか? 私が微笑むと、彼女は更に顔を真っ赤にして照れているように見える。こんな彼女の表情が見られて……なんて役得なんだろう。

 この時ほど、私の見た目を良く産んでくれた両親に感謝した事はない。


「次は何があるんだっけ?」

「えっと……あ! ホームルームで学園祭の話をするって言ってたよ?」

「そうだったね、ありがとう」


 首を傾げたり、頷いたりする雛乃ちゃんは可愛い。

 そんな彼女を見つめていると、ふと複数の視線を感じた。


 前の席に座っている二人と……。

 雛乃ちゃんの斜め後ろで、何かをスケッチブックに書き付けている翡翠さん。


 「あああ、インスピレーションがああぁぁ……!」

 

 彼女の創作意欲が何に刺激されたのかは分からないが、ちらっと見えたスケッチブックの絵に描かれていたのは……いや、きっと気のせいだ。うん、気のせい。


 それよりも前の二人の視線が気になるんだが。


「りおなさん、朱音さん、私の顔に何かついていたりする?」


 そう尋ねても二人はニヤニヤと笑うだけ。

 

「やだ〜、ウチらのことなんて気にしないでよ〜、ね? 朱音っち~!」

「気にせんでよかよ〜、うちらのことは置物と思っとってよ!」


 いや、視線が気になるから無理だが? そう視線で訴えると、りおなさんがウインクをして私に言った。

 

「んも〜、ウチらのことは気にしないで〜、雛ちゃんとラブラブしといて〜☆」


 ラブラブ、という言葉に、俯く雛乃ちゃん。

 俯いた彼女の耳まで、真っ赤に染まっている。もしかして怒っているのか……?

 ああ、もしかして……私とそう見えてしまって、ショックを受けているのかもしれない。本当に申し訳ない。


 ――ほら、やっぱり二人の様子もおかしいだろう?

 これでいつも雛乃ちゃんを困らせてしまうのだ。本当にどうしたことか……。

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