第1話 初めまして異世界
「え、なんで、どうして…」
嬉しいのか、悲しいのか、なんとも言えない気持ちが津波のように押し寄せてくる。
どうして自分がここにいるのか、なぜここに来たのか、理由には検討がつくが、それが確実だとは分からない。
深呼吸を3回ほどし、気持ちを落ち着かせる。
この世界でどうやって生きていくか。それか、どうやってこの世界から抜け出すか。
この世界に滞在したいのか、帰りたいのか、自分の気持ちをまだハッキリとできない。
どうしようか、
まじで詰みの状態かもしれない。
お金もないし、ワンチャンここで野垂れ死ぬって可能性もある…
まじでどうしよう…
こういう時、黒髪ロングの優しいお姉さんが手を伸ばしてくれるのが王道の展開だが、
村のど真ん中で棒立ちし、しばらく動かない男に声をかける人なんてこの世に存在しないと言っても過言では無い。
「とりあえず、探索するか…」
あんまり乗り気ではないが、今の状況ではこれ以外にやることが無い。
村のど真ん中にあるどデカい噴水から足を動かし、ゲームの村という村のような商店街を歩きさ迷う。
当たりを見れば幸せな家庭や、これから戦いに行くのであろう装備をした人達が居る。
村だけ見れば元の世界とあんまり変わらないが、やっぱり文化などは全然違う。
歩き始めて10分程だろうか、対して動いた訳では無いのに体が痛い。
今までずっと部屋にこもり運動をしてなかった今までの自分を殴りたい…
「ふぅ…」
流石に限界なので、目の前にあったベンチに腰をかける。
それにしても、こうやってみたらほんとに異世界って感じだな。
今までこのゲームは何度もしてきたが、こうやって見るとゲームでの見方と全然違う。
ぐぅぅ…
腹がなってしまった。
ここに来る前に食事すら済ましてないし、ここに来て何もべず歩き続けた(10分)から、死にそうなほど腹が減っている。
しかしお金も、この世界の文化も知らないので、為す術もない。
まじで今日で死ぬのかもしれない…
そんな最悪なことを考えていた時、
「どうぞ、」
目の前に天使が現れた。
少し古い茶色の羽織物を深くはおり、顔すら見えなかった。しかし、顔を見なくてもこの人はすぐ可愛い人だとわかった。
もしかしたらこの人が僕の運命の人…?!
などと変な妄想をしていたら
「要らないの…?」
と心配させてしまった。なんて優しいのだろうか。
「あぁ、ぜひ貰います。ほんとにありがとうございます。」
彼女(多分)の手からパンを受け取る。
こんな空腹状態に食べるパンは世界で1番と言ってもいいほどに美味しかった。
30秒もしない間に手のひら程の大きいパンを食べきってしまった。
「ほんとうにありがとうございます。」
今まで生きてきた中で多分最大級の感謝をし、話しかけた。
「あの、名前を聞いても…?」
少しなんぱ気味だったかもしれないが、命の恩人の名前だ。絶対に知っておきたい。
「名前は無い…」
「え…」
予想外の闇深返答に少し戸惑ってしまったが、彼女(多分)はそんな事は気にせず、これからも頑張ってと言わんばかりに去っていってしまった。
もう1回会いたいな。などと思いながらベンチに深くもたれる。
全身の力を抜き、もうこのまま寝てしまおうかななどと思っていた時、目の前に心躍る最高の建物が目に入った。
「冒険者協会」
とうとう異世界らしい展開がきたじゃないか…!