第6話「泣き虫ヒーラー、現る」
ある日、ギルドで新しい依頼を探していたレントたち。
そこに、ぴょこぴょこと慌てた様子で受付に駆け寄る少女の姿があった。
「す、すみませんっ! ケガしてる人がいてっ……! だ、誰か、誰か癒せる人いませんか~っ!?」
「え、ヒーラー……なのに他の人を探してるの?」
「わ、わたし……その、戦闘はちょっと、む、無理かも~っ!」
白いローブにふわふわの三つ編み、背中には大きすぎる回復杖。
声も体も震えっぱなしの少女の名は——ミーナ・クレア。
「だ、大丈夫ですか!? 治療しますねっ……えっと、えっと……あわわわ……!」
「落ち着いて! 魔法の詠唱、噛んでるから!」
慌てながらも、彼女はしっかりと傷を癒やしていった。
回復魔法の腕前は確か。だが、それ以上にビビりすぎている。
「……いや、すごいね。治ったよ?」
「ほ、ほんとですか!? わたし、うまくできましたか!?」
「すごいけど、すっごいビビってたな……」
「うん、魔法は一流、メンタルは最弱だな」
「むぅっ……が、がんばってるんですぅ……!」
なんだか放っておけないタイプ。というわけでレントは——
「ねえ、一緒に冒険しない? 俺たちのチーム、まだヒーラーがいないんだ」
「えぇぇぇぇぇっ!? む、無理ですぅぅ~っ!」
「じゃあ紙で防御バフするから!」
「そ、そういう問題じゃなぁぁぁい!」
「でも俺の紙、硬化するよ? 物理も友情も!」
「友情かたいのはいいけどぉぉ!?」
そうしてなんやかんやで、ミーナは渋々同行することに。
次に受けた依頼は、廃墟に住み着いたスライム退治。
だが、スライムの群れに囲まれてミーナは—
「ひぃぃぃぃぃっ!? ぬ、ぬるぬる攻撃ぃぃぃっ!?」
即座に尻もち、転びながら涙目で回復魔法を連発。
レントの紙剣が硬化してスライムを斬り裂き、リーナとカイルも息の合った連携で片付けていく。
「ミーナ! 落ち着け! むしろ君がいないと、俺たち全滅するから!」
「わ、わたしぃ!? が、がんばるぅぅっ!」
泣きながらも、仲間を癒し続けるその姿に、誰もが気づく。
——この子は弱虫じゃない。強いんだ、と。
帰り道、レントは微笑みながら言った。
「ようこそ、紙パーティへ!」
「や、やだそんな名前ぇぇぇ!」