第21話「旅立ち! はじめての国境越え!」
「よーし、荷物よし! こよりよし! 今日から国外冒険スタートだー!」
レントは張り切って叫び、リーナに後頭部を叩かれた。
「うるさい。そんなテンションで入国審査通ると思ってんの?」
「えっ、そんなのあるの!?」
「あるに決まってんでしょ! どこも魔物の流入警戒してるんだから!」
「む、無理かも……私、パスポートとか持ってな……い……」
「そんなもん無くても大丈夫だ。王の渡航許可状があるからな」
カイルが王から渡された公文書を大事そうに取り出す。
「これがあれば、隣国フィーレントには入れる。だが――」
「ただの観光気分じゃ危険ってことね」
目的の地は、かつて魔王が封印されたという「ヘルヴァの荒野」。今は魔物の出現率が高い未開地とされ、ほとんどの人間が近づかない禁域だ。
そこへ向かう理由は一つ――
「……最近の魔物の動き、全部西の“封印地”に向かってる。あれ、何か起きてるよ」
王都で集めた資料を見せながら、レントがつぶやいた。
旅のルートは、まずフィーレント王国の首都「ガランティア」を目指し、そこから南下して封印地を目指す計画だ。
「よし、じゃあ国境を越えるぞ!」
「うおーっ、国外初体験!」
「それは変な言い方だからやめて」
レントたちは王都を出発し、長い道のりを旅していく。
その途中――
「ん? あれって……」
森の中で助けを求める人影を発見。魔物に襲われている馬車を、即座に救出。
「いけっ、こよりシュリケン!」
紙を硬化させた無数の投擲こよりが、魔物を打ち抜く。
「す、すごい……紙で戦ってる……!」
助けたのは商隊の一団。中にいた一人の少女が、興味津々でレントに近づいてきた。
「あなた、面白いわね!」
「えっ、照れる!」
「照れるな」
少女の名はティナ=グリム。フィーレントの商人の娘で、今回の旅の途中で“同行”することになる。
「封印地に行くなら、案内できるかも。父さんが昔、あそこに物資を届けたことがあるの」
「まじ!? 神様か!?」
「わたしは神様じゃないけど、案内はできるかも!」
こうして、レントたちは新たな仲間(?)を加え、未知の大地へ一歩を踏み出した。
だが、この旅の先には――
眠れる災厄の鼓動が、少しずつ強まっていた。




