第18話「通せんぼゴーレムと、紙の奇策」
商人ガルドとの契約も無事に終え、再び冒険者としての旅を進めるレント一行。山を越えようとしたその時、険しい山道の途中で彼らは巨大な“壁”に行く手を阻まれた。
「……ゴーレムだな、あれは」
カイルが構えた槍の先にいるのは、二階建てほどの高さを誇る岩の巨人。全身が岩盤で覆われ、ただ立っているだけで山道を完全に塞いでいる。
「通せんぼ……いや、地味にめっちゃ強そうじゃない!?」
「む、無理かも~~っ!!」
ミーナがすぐに泣きそうになる中、リーナが大剣を構えた。
「とりあえず一発かま――」
ガンッ!!!
リーナの一撃はまるで効かず、逆に大剣が跳ね返される。
「……岩硬すぎ」
「さすが物理無効系……!」
どうやらこのゴーレム、物理攻撃に完全耐性を持つ特殊個体のようだった。魔法攻撃も、ミーナの癒しの魔法すら全く通らない。
「ど、どうするの!? このままじゃ通れないよ!?」
焦るミーナに、レントがある案を出す。
「――上から行こう。ゴーレムの背中を越えるんだ」
「は!? そんなアクション映画みたいなこと――」
レントは背負っていた紙束を取り出し、細長い“紙ロープ”を作り始める。
「俺の“硬化”でこのロープを補強して、崖から飛ばして、向こう側に引っ掛ける。そこに板紙を渡して橋代わりにする!」
「……また紙橋か」
「いや、今回のは“紙の空中歩道”だ!」
名付けに謎の情熱を込めつつ、レントはロープを崖の向こうに投げる。運良く木に引っかかり、なんとか張ることに成功。
そして何枚もの硬化紙板を吊り下げ、レントたちはゴーレムの頭上を越えていくことに。
「うおおおおおおおっ!!」
「これ……地味にすごいけど、怖すぎるっ!!」
「高い~~~!! 落ちたら確実に死ぬ~~!!」
ゴーレムが下から見上げているのをよそに、一行はなんとか通過に成功。着地した瞬間、紙橋は崩れ落ち、ゴーレムは困惑したように首をかしげた。
「よし、作戦成功! 名付けて“紙のスカイダッシュ”作戦だ!」
「それ、命名センスどうにかならないの!?」
レントの突飛なアイデアにより、一行は難関を突破。
(紙は道を塞ぐ壁さえ、超えられる。なんかもう……すごいな、紙って)
新たな可能性を感じながら、彼らは次の目的地――王都ラグレインを目指す。