第17話「商人キャラと怪しい依頼」
テルミナ村での“紙橋事件”が小さな話題となり、村を出て数日後、レントたちは街道沿いの宿で思わぬ人物と出会う。
「おやおやおやぁ~、もしやあなた方が噂の“紙で橋をかけた”ご一行ですか?」
声をかけてきたのは、全身ピカピカの金ボタンに、胸元はだけたカラフルなスーツ姿の――どう見ても怪しい男だった。
「……絶対詐欺師だろ、これ」
リーナが即断するが、男は胸に手を当てて深々と一礼した。
「これは失礼! 私は“商売の申し子”こと、ガルド・ファーレン。行商人ですとも!」
「……余計怪しくなったぞ」
ツッコミつつも話を聞くと、どうやらガルドは実際に商人ギルドにも登録されているれっきとした正規商人らしい。そして彼は、紙の硬化を見込んである提案を持ってきたのだった。
「ずばり、商品化! その紙硬化、家具とか建材とか! 全部バカ売れですよぉ!」
「いや、俺のスキルって、一定時間しか持たないんだけど……」
「それがまたいいッ! 一時的な硬化って、撤去も簡単、用途も柔軟、ほら、イベント用ステージにぴったり!」
「わー、どんどん現実的な使い道が増えてくるー!」
リーナとミーナが呆れる中、カイルが真面目に質問する。
「でも、それって冒険者としての時間が削られるのでは?」
「ふっふっふ、それを解決するのが、私の役目ですよ!」
ガルドが取り出したのは、契約書。そして特製の紙束(レントが作った紙の試作品)だった。
「要はね、あなたが“一日一枚硬化”してくれるだけで、私が勝手に流通させるわけですよ! 報酬はしっかり配分、定期的に納品、ほらもう未来が見える!」
そしてレントの心を動かしたのは、最後の一言だった。
「……資金があれば、より大きな魔物退治にも備えられるでしょう?」
「……それって、確かに」
リーナがレントの耳元でささやく。
「やるならやるで、ちゃんと値段吹っかけときなよ。あんた、交渉下手そうだから」
「ぐっ……否定できない……」
こうしてレントは、“紙硬化商売”に週一の納品という形で協力することに。
「やったぁ! ありがとうレントさん! これで私も、紙製ステージでミラーボールを回せる日が来るっ!」
「いや、ミラーボール関係ある?」
「イベントって、そういうの必要じゃないですかー!」
いつもよりさらにカオスになっていく道中。だが、レントは一つ学んだ。
(俺のスキルには、戦うだけじゃない“可能性”があるんだ)