第15話「それぞれの決意、そして旅立ち」
魔王の気配が刻々と増していく中、レントたちは神殿を後にした。
「とりあえず……紙封印は機能してるみたいだけど、時間の問題だね」
ミーナが不安げに言う。レントのスキルで一時的に魔王の力を封じたが、魔力は確実に増してきている。
「いずれあの封印は破られる。それまでに……俺たちは、もっと強くならなきゃならない」
レントの目は、これまでにないほど真剣だった。あの日、紙の剣で魔物を倒した時のような偶然では、もう勝てない。
「そうと決まれば――」
リーナが腰に剣を収め、振り返る。
「まずは、もっと経験を積む。危険な地域での討伐依頼をこなすのが一番手っ取り早い」
「俺、硬化スキルでサポートもするし、いろんな応用方法も試してみるよ!」
レントは紙束を抱え、こよりを一本作って「シャッ」と空に向かって投げてみせた。もちろん、当たる相手はいない。
「……レント、それ、ただの紙ふぶき」
「いやいや、当たれば痛いかもしれないし!」
「ないから」
リーナのキレのあるツッコミが飛び、ミーナとカイルがくすっと笑った。
空気は和やかだが、胸の奥には、確かに重たいものが宿っていた。あの禍々しい気配。確実に迫る“魔王の復活”。
「でも、ちょっと楽しみかも……」
ミーナがぽつりとつぶやく。
「レントと一緒に旅するの、すっごくバカバカしいけど、なんだかんだ面白いし」
「お、おう……それって褒めてる?」
「まあまあ。バカだけど、前向きなのはいいとこよ」
「ツッコミが辛辣なんだよなー!?」
そんな掛け合いの中、カイルが真面目な顔で言った。
「でも本当に、レント。君の“紙の力”は、想像以上の可能性を秘めてる。俺も、もっと盾としての役目を果たせるよう努力するよ」
「ありがとう、カイル。……みんな、ありがとう!」
そうしてレントたちは、再び旅立った。
強大な敵に立ち向かうために――
失われつつある平和を守るために――
そして、いつか再び、あの神殿の前に堂々と立つために。
異世界に生きる者としての、冒険者としての、新たな一歩がここから始まる!