伝説の魔女と鳥籠のカギ 【The Legendary Witch and The Key to the Birdcage 】
ルミオには、秘密があった。
実は、魔力があって、魔法も使うことができる。
しかし、この世の中では、魔法を使うと蔑視されてしまうため、ずっと悩んでいた。
「ああ、早く来過ぎちゃった」
ルミオは、楽しみすぎて30分前に着いてしまった。
「あれ、セノンさんもういる」
セノンも楽しみすぎて、1時間前から待っていた。
「セノンさん、ごめんなさい。お待たせしました」
「いや、全然待ってないよ」
セノンは、紫色の長い髪をふわっとさせるとニッコリと笑った。
「じゃあ、行きましょうか?」
「はい」
「何か、観たい映画とかありますか?」
「ううん、映画より公園に散歩でも行かない?」
「はい、もちろんです」
ルミオは、ちょっと緊張気味だったが、セノンの顔を見ていると、とても心が安らかな気持ちになった。
「ベンチに座って、話しましょ」
と言った瞬間、急に風が吹いて来て、セノンの被っていたつばの広い帽子が飛ばされてしまった。
セノンは、素早く動けば容易に取ることができたがあえて動かなかった。
すると、ルミオがサッと飛びついて、指先でクルっとすると、帽子が手の方に吸い寄せられるように受け取った。
「はい、飛ばないようにしてね」
眩しい、イケメンスマイルで言った。
「あ、ありがとう」
ちょっと、カッコよすぎるんだけど•••
「どうかしましたか?」
「いいえ•••」
「セノンさん、探偵なんですよね?」
「うん」
「どんな依頼が来るんですか?」
「探偵に興味があるの?」
「はい」
「でも、大したものはないわよ。
人探しやペット探し、今日なんて家のカギ探しなんてのもあったわ」
「大変ですね」
「あ、そうだ、今からそのカギ探しのお宅に行くんだけど、よかったら助手として同行してくれない?」
「僕がですか?」
「もし、よかったらね!」
「もちろんです」
「じゃあ、一緒に行きましょうか」
私たちは、事務所へ戻ると、
愛車の「スカイレイダー1100XR」に乗って例の住所へ向かった。
そこは、丘の上に建つ一軒家で、木の温もりが感じられる可愛い家だった。
「ああ、こんな家に住みたいな」
ルミオが、クスクス笑っている。
「もう•••」
セノンは、頬を赤くして笑った。
セノンが、呼び鈴を鳴らすとインターホン越しに女性が現れた。
「あ、お母さん•••」
セノンは、一瞬動揺したが、
「あ、申し訳ありません。
ご依頼の件で伺いました。
PW探偵事務所セノンと申します。
こちらは、助手のルミオです」
ルミオが、画面にお辞儀をした。
「えっ、アルク?」
「ううん?」
「ああ、ごめんなさい。知り合いに似ていて•••」
「あの~、用件ですが?」
「ああ、そうだったわね。申し訳ないんだけど、いろいろ事情があって家の中には入れないの画面越しで失礼しますね」
「いえ、お構い無く。それで依頼についてですが、自宅のカギの捜索ですか?」
「ええ、その前にお知らせしておくことが、私の名前は、シオンと言います。あなたのお、お、おばあ、言えない•••」
「やっぱり、シオンお婆ちゃんなんでしょ?」
「お婆ちゃんって言わないで•••」
確かに、画面越しでも彼女は、30代そこそこに見える。美しい紫色の長い髪でお母さんの若い頃にそっくりだった。
「ああ、ごめんなさい。シオンさんは、あの伝説の魔女なんでしょ?」
「そうよ、セノン来てくれてありがとう」
ルミオは、あまりにも急な展開で呆然としていた。
「ごめんなさい、ルミオさん。話が変な方向にいってしまって•••」
「いえ、びっくりしましたが、大丈夫ですよ•••」
「ルミオさんにも関係ある話なんです」
「僕にも?」
「シオンさん、ルミオを見てさっきアルクって言ってましたよね」
「そうなの、私の夫のアルクに瓜二つなのよ」
「あなた、魔法が使えるでしょ?」
「ギクッ」
「ああ、やっぱりさっきの帽子の時のは魔法だったんだ」
「隠していてごめん」
「全然、気にしてないわよ。むしろうらやましいくらいよ」
「そう言ってくれると•••」
「おそらく、アルクの家系の子孫だと思うの」
「えっと、シオンさんはおいくつなんですか?」
「女性に歳を聞いちゃダメ!」
二人が同時に言った。
「ごめん」
「最初から説明するわね」
シオンの話によると、
セノンのひいひいお婆ちゃんにあたるので、
セノンは、玄孫になるそうだ。
100年以上前に、「千年迷宮」を踏破した後、アルクの父であるレオンが創設した「ソーサリーエレメント」という組織の幹部であるリナの裏切りによって、レオン、ミリア、トリガー、リセのすべての幹部が罠にはまって殺されてしまった。
レオンたちは、「魔法陣使い」と呼ばれる謎の存在によって作られた。【MACOK】と呼ばれる異能力者で、
「魔法陣使い」に強いたげられていたところを、レオンとミリアの活躍で「魔法陣使い」たちの封印に成功した。
それには、ミリアの白昼夢魔法陣という能力が重要であったが裏切り者のリナが、ミリアを殺害してしまったため封印が解けてしまった。
「魔法陣使い」たちは、リナを除いたソーサリーエレメントにいたすべての【MACOK】たちを皆殺しにして、組織をそのまま乗っ取ってしまった。
今の「ソーサリーエレメント」が暗殺や窃盗などで裏の世界で名を馳せているのはそのせいで、今の幹部たちはすべて「魔法陣使い」の子孫であった。
まさにクズの集団である。
アルクには、年の離れた弟がいてレオンたちとは全く別の場所で生活していたため生き延びたそうだ。
その子孫にあたるのがルミオだろうとのことだった。
シオンとアルクも裏切り者のリナの策略にまんまとハマってしまい、この「時の鳥籠」に封印されてしまった。
鳥籠は、意外と範囲が広くちょうどこの一軒家が入るくらいの大きさがあるため暮らすにはあまり困らなかった。
「時の鳥籠」の中の時間は、10年で1歳しか歳を取らない呪いがかけられている。
アルクは、100年以上前に持病が悪化して亡くなってしまった。それ以降は、シオンはずっと一人で暮らしてきた。
この「時の鳥籠」を解除するためのカギが存在する。
そのカギは、破壊不可能なため、リナは以前から目を付けていた「千年迷宮」へ隠してしまった。
「情報量が多すぎる•••」
「ということは、僕も深く関係しているのですね?」
「そうね」
「ちなみに、私の物語があるでしょ?」
「ああ、伝説の魔女の話ですね」
「なんか大げさに伝わってるけどね」
「シオンさん、その中に出てくる「古代の秘薬」って本当にあるんですか?」
「ああ、あるわよ。ここに•••」
「ええ!」
「ほら!」
画面越しに小瓶を見せてくれた。
「私は、それをずっと探し続けていたの魔法使いになるために!」
「ああ、これは偽物よたぶんね」
「だって、私は飲まなくても、千年迷宮を踏破したら、魔力が生成できて魔法が使えるようになったからね」
「ええ、偽物?」
「まあ、あなたにあげてもいいけど、100年以上も前のものを本当に飲むの?」
「うう、」
「それよりは、もっといいものをあげるわ」
シオンは、二つの腕輪を見せた。
「それは、魔力を共有していた魔道具の?」
「そうよ、セノン、左手の甲に模様みたいのがない?」
「ああ、あります。これ何ですか?」
「代々、うちは女系の家系で女性にはみんなこの模様が入っているのよ」
「まあ、この腕輪を付けてみなさい」
シオンは、ピンクのアイテム袋を郵便受けからセノンへ渡した。
「ああ、このアイテム袋、やっぱりピンクだったんだ」
「やっぱり?」
「私は、水色のアイテム袋を持っているんです」
そう言って見せた。
「ああ、アルクの•••」
セノンは、袋から腕輪を取り出すと黒くてカッコいい方をルミオへ、六芒星の可愛い方を自分の左腕にはめた。
すると、左手が真っ赤な光を放った。
ルミオが、少しクラっとするとセノンの方を見た。
セノンの身体は、薄い光に覆われていた。
「これが、魔力?」
セノンは、身体中に駆け巡る魔力を感じ取っていた。
「セノンも、これで魔法が使えるはずよ」
「ルミオは、大丈夫?」
「はい、はじめはクラっとしましたがすぐに魔力もいっぱいになりました」
「さすが、アルクの子孫ね」
「さあ、今度は魔法とスキルの使い方についてレッスンしていくわよと言いたいところだけど、もう時間も遅いし今日は帰りなさい」
「ああ、もうこんな時間•••」
「いつの間に•••」
「あとは、ネットでレッスンするからよろしくね」
「ネットでって•••」
「すっかり、現代人ですね•••」
二人は、シオンにお礼を言うとまたバイクで颯爽と帰ってしまった。
「ルミオ、変なことに巻き込んじゃった。ごめんね」
「いや、僕にも関係あることだしついていってよかったよ」
「そう言ってもらえると助かるわ」
こうして、セノンとルミオの初デートは終わった。
私は、事務の娘に悪いと思ったが探偵事務所をしばらく休業にして、シオンのレッスンに集中することにした。
「セノン、ルミオ、まずは、三種の神器の説明からね」
「ホウキには、乗ろうとしたけど使い方が分からなかったわ」
「ああ、今ならもう乗れるはずよ」
「えっ?」
「そのホウキは、ただのホウキで魔道具なのはその猫の人形の方なの」
「これがですか?」
「そうよ、ルミオ、ホウキを宙に浮かせて乗ったら、その人形を軽く持ってみて、軽くね!」
「こうか?」
「ああ、動いた!」
「外でやれば、自由自在に飛ぶことができるわよ」
「これは、どうやって作るの?私にも作れる?」
「そうね、セノンは作れるけどルミオには無理かな•••」
「なぜですか?」
「これが、スキルよ」
「スキル?」
「セノンは、私と一緒でいろんなスキルを持っているけど、ルミオは二つのスキルしか持っていないはず」
「じゃあ、まずルミオの方から説明するね。あなたは、闇属性なので「破壊」というスキルを持っている」
「でも、風魔法も使えますよ?」
「うん、そうね、魔法は、簡単なものなら、みんな全属性使用することができるけど、自分の属性だけは、魔力さえあれば、最大まで力を引き出すことができるの」
「つまり、ルミオは、闇属性だから、闇魔法ならどこまでも強くすることができるってワケね」
「ちなみに、セノンはその最大まで引き出せる属性は全属性なの」
「えっ?全部?」
「完全にチートですね•••」
「ルミオのもう一つのスキルは、「隠蔽」といって、
どこかに忍び込むときなんかに役に立つわ」
「なんか忍者みたいでカッコいい!」
「ちなみに、セノンのスキルは、全属性の
「解析」「合成」「分解」「精製」「構築」「破壊」
そして、無属性のスキル「設定」、さらにレアスキルの「統合」まで持っているはず」
「なにそれ?」
「無双状態ですね•••」
「ただ、すべては魔力がないと全く使用できないから、今までは宝の持ち腐れだったってワケね」
「なるほど」
「今なら、「解析」が使えるからルミオのスキルを見てあげて」
「ルミオ、見せてもらっていいかな?」
可愛い顔でお願いした。
「うん、もちろんだよ」
ルミオは、少し照れながら言った。
「ちょっと、イチャイチャしないの!」
「そんなことしてないですよ•••」
二人は、頬を赤く染めた。
セノンが、ルミオをみてみると確かにさっきの二つのスキルを持っている。
「シオンさん、ルミオにはもう一つスキルがあるみたいです」
「本当?」
「ええ、「空間転移」ってのがあるみたいですよ」
「そっか、レオンの力を受け継いでいたのね」
「何ですか?」
「実際に使ってみないと分からないけど、レオンは情報さえあればどこにでも一瞬で移動できていたわ」
ルミオは、優しくセノンの手を握ると
「ああ、シオンさんの家の前だ•••」
「できた•••」
「すごいわね」
ルミオは、一瞬で家に戻った。
「それも、かなりチートね」
ルミオの胸を人差し指でチョンとついた。
「だから、イチャイチャ•••」
「はい、はい、イチャイチャしてません•••」
ルミオが、クスクス笑っている。
次回
【Customize The Three Sacred Treasures!】




