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農業と盗賊【AgriRogues】

「ところで、アリア様」

「なんでしょう?」

「食料の自給率はどのくらいですか?」

「ほぼ無いに等しいでしょう」


「そうなの•••今はテンシェン様がいるからいいけど、もしものことを考えると•••」

「私も、この状態はあまりよくないと以前から考えていましたが、ついテンシェン様の恩恵に甘えてしまって•••」


「アリア様、旅へ出ましょう!」

「私たちは、国を離れる訳にはいきませんし、今までに他国へ行ったこともありません」


「第一移動方法がありませんから•••」

「ああ、その辺りは任せて下さい、いざとなればルミオが一瞬で送ってくれますし!」


「はあ•••」

「エルム様、他の国へ行って他国の現状や技術などを学ぶことは大切だと思いませんか?」

「アリア、僕はこの提案を受けるべきだと思うよ」

「将来のことを考えると、そうするべきなのでしょうけど•••」


「じゃあ、とりあえず隣の国に散歩がてら行ってみましょう!」

「散歩って•••どのくらい遠いかも分からないのに•••」

「アリア、行ってみよう!」

「うん、エルム」


アリアは、エルムの手を握り優しく微笑んだ。


「よし、そうと決まれば早速明日から出掛けるわよ!」

「セノン、気が早いね!」

「善は急げっていうでしょ!」


「アリア様、明日までに手頃な袋を二つ用意しておいて下さい」

「わ、分かりました•••」


明くる朝、セノンは早々に準備をして、旅立つ気満々ではりきっていた。


「アリア様、おはようございます!」

「おはようございます、袋はこんなものしかありませんが?」


「うん、これで充分よ!」

セノンは、袋にチョチョイと設定すると、

「できました!」

「は、はい?ただの袋ですが?」


「これは、無限収納袋です」

「無限収納?」

「ええ、何でも入るし、いくらでも入りますよ」


「ちょっと何が何だか?」

「まあ、このバイクをと•••」

セノンは、話ながら自分の袋からエアーバイクを取り出した。


「ええ、今どこから?」

「これは、エアーバイクと言って、まあ、馬みたいなもんです」

「いえいえ、全然違いますよ•••」


「こちらもっと」

ルミオが、自分のエアーバイクをエルムの前に出して見せた。


「すごくカッコいいですね!」

「おお、エルム分かってるね!」


エルムが、バイクに座ってみると、ルミオが少し使い方を説明した。


エルムは、バイクで走り出すと空中を自由自在に飛び回って見せた。


「エルム様、やりますね!」

セノンが、嬉しそうに手を叩いた。


「さあ、アリア様もやって見てください!」

「私にできるかしら•••」


アリアは、恐る恐るバイクに座ると、急にスピードを上げて走り出した。


「アリア様、ゆっくりね!」

ルミオが、瞬間移動でアリアの後ろに座ると優しく運転を変わった。


「ルミオ様、ありがとうございます」

「優しく握れば大丈夫ですよ!」

「はい•••」


セノンとエルムは、少しイラッとしているようだった。


「さあ、イチャつかないで!行きますよ!」

「そんなんじゃ、ありませんよ•••」

「ウソです、アリア様、さあ行きましょう!」


「アリア様、そのエアーバイクを自分の袋にしまってみて下さい」

「こんな大きいものが入るわけって•••入りましたね•••」

「この袋•••」


「エルムもしまってみて!」

ルミオが、そういうとエルムは素早くしまって見せた。

「これは、便利だ!」


「でも、お二人は?」

「ああ、私たちはホウキがあるから心配しないで!」

「ホウキですか•••?」

「アリア、あまり考えても意味ないよ、そう言うもんだと受け入れるしかないよ•••」

「そうみたいね」


「では、早速出発!」

四人は、バイクとホウキに乗って隣の国へと向かった。


しばらく行くと、国とは言えないような村が現れた。


「こんなところに人が住んでいたなんて•••」

「ちょっと、私が先に行って話をしてきます」

エルムが、バイクをしまいながら言った。


「では、お願いします」


エルムが、歩いて村へ入っていくと、入り口まで戻ってきて手を大きく降った。


「大丈夫みたいですね」

「そうね」


三人も歩いて村へ入っていくと、そこには大きな水田や畑が広がっていた。


「これが作物•••」

「そうよ、本来はこのようにお米や野菜を自分たちで育てるの」

「そうですよね•••」


エルムが、手招きをしている。

「こちらが、この村のおさのマルキス様です」

「はじめまして、アリアと申します」

「こちらは、セノン様とルミオ様です」

「はじめまして、よろしくお願いいたします、できれば農作業のことを教えていただけると助かります」


「もちろんじゃ、ゆっくりしていくといい」

「ありがとうございます」


「アリア様、良かったですね」

「ええ、本当に•••」

アリアは、今まで自分たちが何もできていなかったことを痛感していた。


「今晩は、村長の家でご馳走してくれるそうです」

「お言葉に甘えて」

「泊まる所はあるのか?」


「私たちは、野宿をするのでお構いなく•••」

セノンが、丁寧にお断りを入れた。


「セノン様、野宿ですか?」

アリアが、心配そうにセノンに小声で聞いた。


「心配いりません、私にお任せ下さい」

「はい•••」


「まずは、農作業の様子や作業の仕方を見学させてもらっても、いいでしょうか?」

「どうぞどうぞ、村のものたちにも言ってあるので、自由に見て回って下さい」

「ご親切にありがとうございます」


「では、アリア様とエルム様、私が案内させていただきます」

そう言って、一人の若い娘が現れた。


「私の名前は、ユウヒと申します」

「ユウヒさんよろしくね」


ユウヒは、村の中を案内しながらいろいろな作業を見せてくれた。


アリアは、全てが新鮮で熱心に説明を聴いていた。


「あの方は、何をなさっているんですか?」

「ああ、あれは•••」

ユウヒも、その熱心さに心を打たれたのか、丁寧に質問に答えてくれた。


「今日は、ありがとうございました。ユウヒ様」

「もったいない、様などつけないで下さい」

「ユウヒとお呼びください!」

「ありがとう、ユウヒさん」


「晩御飯は、村長さんの家にお集まりください」

「ありがとう」


セノンたちは、村長のお宅に向かうとひときわ大きな家が建っていた。


「立派ね!」

「このような作りの家は初めて見ました」

「日本のお屋敷みたいね!」

「日本?」

「ああ、私たちの住んでる国よ」

「なるほど」


村長が、出迎えてくれた。

「よく参られた」

「お邪魔します」

「たくさん食べていきなされ」

「うわ、美味しそう」


「和食みたいね!」

「うん、いただきます」


ルミオが、真っ先に口に頬張った。

「うん、なかなかいける」

なにやら、ルミオがセノンに合図を送った。


セノンは、食事を食べようとする二人を制止して言った。


「村長、どういうことですか?」

「何がじゃ?」

「この食事には毒が入ってますね?」


「ああ、いや•••」

村長が、困ったような顔をしてうつ向いた。

「ごめんなさい、私のせいなのです」

「ユウヒさん?」

「おじいちゃんが、私の身代わりにと•••」


「どういうこと?」

「ああ、それよりルミオ様はそんなに食べて大丈夫なのですか?」

「うん、僕は毒が一切効かないからね!」

「そ、そうだったのですか•••」


「実は、明日の晩、山から盗賊が来て村の作物なんかを奪いに来るのです」

「ええ?」

「そのときに、娘も一人連れていくと•••それが私の番なんです」

「すまんかった、ユウヒをやるくらいなら戦うつもりじゃったが、あんたらが、現れてつい出来心で•••」


「まあ、私を身代わりにしようってことねなるほど•••」

「セノン、悪い顔になってるよ•••」

ルミオが、肩をポンと叩いた。


「ああ、失礼!分かったわ、私が身代わりになってあげるわ」

「また始まった•••」


「セノン様、何をおっしゃっているんですか?」

「そうだよ、危ないよ!」

アリアとエルムが、心配そうにそう言った。


「まあ、私に任せなさい!」

「村長、そう言うことだから!」

「ああ、いや•••」


「毒の入っていない食事もあるんでしょ?みんなに食べさせてあげてね」

「ああ、もちろんじゃ」


ルミオが、確認すると、みんなで美味しく夕飯をご馳走になった。


「セノン様、やっぱり野宿ですか?」

心配そうにアリアが訪ねると、

「よっこいしょと」

セノンは、村のすみに家を出した。


「ええ、家ですか?」

「そうよ、何でも入るって言ったでしょ!」

「いやいや、それはおかしいでしょ•••」

エルムが、首を横に振った。


「まあ、入って」

「何この綺麗な部屋に、キレイなベッドは•••」


アリアたちは、快適な夜を過ごした。


朝になると、

「セノン様、本当に大丈夫ですか?」

ユウヒが、心配そうに訪ねる。


「どうしたら信じてくれるかしら?」

「盗賊たちは、どの山から来るの?」

「あの山です•••」

「オッケー!」


「スチーム•デトネーション!」

そういうとセノンは、その山目掛けて大きな水の玉を飛ばしたかと思うと、凄い勢いで爆発させた。


「山、山が、えぐれた•••」

ユウヒは、腰を抜かしてしまった。

「ごめんね、ちょっとやりすぎちゃった」

セノンは、可愛く舌をだして笑った。


「セノン•••」

ルミオは、困り顔で両手をあげた。


「今の何の音ですか?」

みんなが驚いて駆けつけたが、


なんとか、ユウヒがみんなに説明をして帰ってもらったが•••


「これで分かった?」

「は、はい•••」


夜になると、盗賊が村へやってきた。


「おい、村長!準備はできてるだろうな?」

「あ、はい•••」

「娘をだせ!」

「私が、そうです」

「おお、こんな上玉がこんな村にいたか?まあ、いいだろう•••へへへ•••」


「は~い、そこまで!」

セノンが、手を叩きながらみんなの動きを止めた。


「何だ、お前は、何してる?」

「あなたたち、そこへ正座しなさい!」

「うるせい!」

頭領らしき奴が、セノンに斬りかかった。


すかさずエルムが、攻撃を受けた。

「セノン様、ここは私が!」

「うん、お願いいたします」


エルムが、剣を構え直すと無詠唱でマナスを発動させた。


頭領の手足は、闇の腕によって拘束されている。


「エルム様、やるう!」

セノンが嬉しそうに手を叩く。


「くそ、なんだこの気持ち悪い手は」

頭領は逃げようとするが、そのまま無理やり正座をさせられた。


「アビサル•チェーンズ!」

ルミオが詠唱すると、無数の腕が現れて、盗賊の仲間たちも正座をさせられた。


「はい、人の物を奪ってもいいのですか?」

セノンが、手を叩きながら訪ねる。


「い•••いい•••」


「聞こえませ~ん!」

「いいえ!」


「分かってるのになぜそんなことを?」

アリアが、優しく尋ねた。


「俺たちだって、この村で静かに暮らしたかったさ!」

「はい?」

「でも、村長に追い出されて、やむなく盗賊に•••」


「もとは、この村の住民だったのですか?」

「ああ、そうだよ」


「村長、どういうことですか?」

「この者たちは、村八分むらはちぶにした者の集まりじゃ!」


「連れていった娘たちは?」

「山で一緒に暮らしているよ」


「ああ、間違いないさっき行ってみんな連れてきた」

ルミオが答えた。


「そう言うことね•••村にも責任がありそうだけど、このまま、この村で一緒に暮らせって訳にもいかないわね」


「アリア様、この者たちを受け入れてもらえませんか?」

「そうですね•••」

「悪さしないって約束できる?」

「はい!」


「少しでも悪さしたら、エルムが黙ってないぞ!」

「はい!」


「分かりました、我が国で受け入れましょう」

「ありがとうございます」

「村長もそれでいいですか?」

「はい、お願いいたします•••」


その夜は、おとなしく山へ帰ってもらって、次の日の朝、あらためて出向いた。


山の暮らしは、ごく普通で拐われたという娘たちも楽しそうに暮らしていた。


「皆さん、隣の国へ移住するので、要るものは全て、この袋に入れて下さいね」

「ええ?こんな袋に入る分だけですか?」

一人の娘が尋ねた。


「その袋ならいくらでも入るから大丈夫ですよ」

アリアが、優しくいいながら大きな鍋をしまって見せた。


「本当だ、凄い袋だ!」

要るものを全て入れると、ルミオがみんなを集めて、一瞬でテンシェン様の国へ移動した。


「ここで、暮らしてください、食事はテンシェン様のご加護で、支給されますが、あなたたちには、農業をこの国で広めて頂きたいのです」

「分かりました、頑張ります」


しばらくは、エルムが監督して問題なく暮らしていけるように面倒を見てくれた。


水田や畑も軌道に乗り数ヵ月が過ぎていた。

次回 【Majestic Tournament】

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