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伝説の魔女の玄孫の私は、この魔法の廃れた世界で 怪盗ウィッチとなって無双する    作者: 吾妻 八雲


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謀略の神殿 【Cathedral of Conspiracy】

「グリム様、斯々(かくかく)然々(しかじか)です」

「そうですか、ご苦労様」


グリムは、アリアと並ぶ大神官の一人で、アリアが穏健派であるのに対し、何事も実力行使でことを進めようとする武闘派として知られていた。


グリムの配下には、手練れの者や、隠密に秀でた忍者のような者たちもいた。


「グリム様、ご命令を」

「まずは、あの二人の素性と目的を探りなさい、始末できそうならそれも許します」

「了解しました」


配下の者は、スッと姿を消した。


「ルミオ、とりあえずローブを着て町に行ってみようよ」

「オッケー」


セノンたちは、町の探索も兼ねてこの時代の生活習慣や情勢などを見極めに出掛けた。


「テンシェン様のお陰で、かなり裕福な暮らしをしているようだね」

「そうね、貧困という感じは全くないわね、食事も美味しいし」


「セノン、気づいてるよね」

「もちろん!」


二人は、何気ない様子で町外れの人気のない場所へやって来た。


「あなたたち、何者?」


「チッ、気付いていたか」

「隠れてないで、姿を見せなさい!」


物陰から、ゾロゾロと十人ほどの黒ずくめの者が、姿を現した。


「何か用かい?」

「バレたらしょうがない、殺ってしまえ!」

「承知!」


頭領らしい者が、合図をすると一斉に二人に襲いかかった。


「グレーシャル•チェーンズ!」

セノンが詠唱すると、いくつもの氷の鎖が現れ、曲者どもの足を拘束した。

すると、徐々に氷が広がっていき下半身は完全に凍りついてしまった。


「おっと!そうはさせない!」

ルミオが、拘束を逃れた頭領の首もとへナイフを突きつけた。


「お前ら、何なんだ?マナス使いか?」

「まあ、そんなもんね」

セノンが、綺麗な紫色の長い髪をかきあげながら言った。


「お前たちこそ、何のつもりだ!」


頭領は、一瞬で全身の肌を金属のような鋼色に変化させると、自分からルミオのナイフに首をぶつけてナイフを弾いた。


「何!」

手裏剣のような物をいくつか飛ばすと、距離をとった。


「本当に、忍者みたいだな•••」


「火龍爆裂陣!」

頭領が、印を結ぶと四本の炎の柱が立ち昇ると渦を巻きながら、龍の形となってセノンとルミオに襲いかかった。


「タイダル•ヴェール!」

セノンは、二人を水のヴェールで包み込むが、炎の龍は勢いを増して何度も襲いかかってきた。


「アビス•バインド!」

ルミオが、両手から闇のオーラを放つ、頭領の身体の周りを黒い霧が渦のように包み込むと、いくつものどす黒い手が出てきて、頭領の身体を捕まえた。


「く、なんだこれは?」

頭領は、もがきながらも気合いで弾き返した。

「ハッ!」


「焔龍波•漆黒!」

頭領が、再び印を結ぶと黒い炎をまとった龍が印を結んだところから現れ、口から煙を吐きながらルミオ目掛けて放たれた。


「ルミナス•ウィングストライク!」

すかさず、セノンが聖水で作られた大きな鳥を黒龍目掛けて放つと、黒龍の身体を大きな鳥が真っ二つにしながら飛び去っていった。


「くそ、最大奥義をあっさりと!」

「ここまでか!」


頭領が、セノンに走りよりながら、そう叫ぶと曲者どもは次々と自爆して、そこらじゅうが火の海となった。


「しまった、セノン!」

ルミオが、セノンの方へ瞬間移動してすぐさま助け出した。


「セノン、大丈夫?」

「ありがとう、ルミオ、まさか自爆するなんて•••」

「よほど素性を知られたくないようだね!」


セノンが、おもむろに髪を触ると、綺麗な長い髪の先が焦げていた。


「ああ、切らなきゃ•••」

「ううう、許さない!絶対に犯人を見つけて殺す!」


それを見たルミオは、今までにみたことのないような形相でキレていた。


「ルミオ、切れば大丈夫だよ」

「•••」


ルミオには、全く聞こえていないようだった。


「ああ、起こらせちゃった•••犯人さん御愁傷様•••」


一度、神殿に戻ると事の顛末をアリアとエルムに報告した。


「それは、許せませんね」

エルムもかなりご立腹のようだった。


アリアとセノンは、そんな二人をみて少し呆れていた。


「おそらくそれは、グリムの差し金だね」

「そうだと思うけど、明らかな証拠はないわ、今は事を荒立てたくないわ」

「それもそうか•••」


アリアの話によると、武闘派のグリムは、神官でありながらテンシェン様を崇拝するあまり、穏健派の殲滅を企んで自分たちだけで神殿を牛耳ろうと企んでいるとのことだった。


事あるごとに、邪魔や因縁を吹っ掛けてくる厄介な存在だった。


「心配しないで、私たちが守ってあげる、ね?ルミオ!」

「ああ、二人は僕たちが必ず守るよ」


「ありがとうございます」

アリアとエルムは、少し安心した様子だった。


あの忍びの件もあったせいか、しばらくは手出しをして来る様子はなかった。


「ああ、これを渡しておくわね」

セノンは、そう言って二人にテルミットを手渡した。


「テルミットっていう。便利な道具だよ」

ルミオが、使い方を一通り説明して実際に使って見せた。


「すごいですね!」

「これで、遠くはなれていても連絡がとれるし、この神殿に設定しておけば、一瞬で戻ってこれるよ」

「ありがたい!」


アリアは、時間をみてはセノンに古代文字とマナスについての授業をしてくれた。その合間にセノンは、魔法について教えてあげた。


「魔法は、イメージなのよ」

「イメージって何?」


「う~ん、例えばそこのコップに水が入ってる絵を頭に浮かべてみて」

「こうかな?」

「それが、イメージよ」

「そして、マナスの水という字を思い浮かべてみて」

「ああ、水が入ってる!」

「それが、無詠唱のマナスよ」

「魔法も一緒だけど、こちらの時代の詠唱を覚えるよりもマナスを応用した方が、分かりやすいかもね」

「なるほど•••」


「そのイメージをうまくできるようになれば、こんなこともできるようになるよ」


セノンは、そう言うと机の上にアリアの精巧な人形を土で作り出した。


「ええ、これ私ですか?」

「うん、簡単なものならアリアならすぐ出きるんじゃないかしら」


「そこにある、果物をイメージして、土のマナスでやってみて」


アリアは、一生懸命イメージしながら、マナスを使ってみた。


「ああ、できた!まだ形がいびつだけど•••」

「いや、これだけできれば上等よ!」


そんなやり取りをしながら親睦を深めて、お互い勉強会をしていた。

次回 【AgriRogues】

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