古代龍と神官 【Ancient Dragon and Divine Sage】
古代龍編
【The AncientDragon】
魔法、それは、大きく炎、水、風、土、光、闇に分類される。
この世界では、魔素と魔力によって魔法が発動されると信じられていた。
だが、この魔法の廃れた世界では、魔力を感じることさえ難しくなってしまった。
僕は、ルミオ、怪盗シャドウとして、悪の組織をぶっ潰すべく活動している途中、悪の組織「ガルマス商会」の馬鹿な幹部が、よりにもよって古代の遺物を持ち出し、古代龍を呼び出してしまった。
フィアンセのセノンと僕は、古代龍の封印の秘密を探るべく古代の遺跡のあるバルカ大森林へと向かった。
遺跡の中には、ドラゴンを封じていた鏡を置く祭壇があり、そこへ鏡を置くことによって、古代へと移動してしまった。
古代へと行った僕たちは、古代語をマスターしたのはよかったが、現代へ帰ろうと祭壇まで来ると、そこに鏡はなく現代へ戻れなくなってしまったのだった。
「どこにもない•••」
「イヤーーー」
セノンは、大声で叫んで塞ぎこんでしまった。
しばらく、動けずにいた。
「ねえ、セノン•••」
「ルミオ!」
セノンは、泣きながらルミオに抱きついた。
「セノン、こうしていても埒が明かないだろ?」
「うん•••」
「とりあえず、情報を集めよう!」
「うん、分かった」
ルミオは、セノンの手を引きながら町へと向かった。
「食堂のようなところはないかな?」
「あそこは?」
「そうだね、行ってみよう」
ルミオは、手をつないだまま食堂へ入っていった。
「いらっしゃいませ!」
「ここで食事はできますか?」
「もちろん、食堂ですから•••」
「あなたたちはここらの人ではないですね?」
「はい、少し遠くから来ました」
「食事は、何と交換すればいいのですか?」
「ああ、食事はテンシェン様のご加護によって、民に与えられるものなので、何も必要ありません」
「テンシェン様?」
「テンシェン様は、あそこの絵にあるお方ですよ」
店の奥の壁にひときわ大きな絵が飾られていて、大きなドラゴンが描かれていた。
「あれが、テンシェン様•••」
「この国は、テンシェン様のご加護によって守られているのです」
「そういえば、あなたアリア様に似ていますね?」
「アリア様?」
「アリア様は、テンシェン様と唯一話のできる神官様です」
「神官様•••」
「テンシェン様の意向は、アリア様によって民に伝えられて、エルム様によって守られているのです」
「あなたも、エルム様に似ていますね?」
「そうなんですか?」
「何を召し上がりますか?」
「ああ、おすすめの物をお願いできますか?」
「分かりました、少々お待ちください」
店員は、そう言って奥へと下がっていった。
「どうも、アリア様という人に合う必要がありそうだね」
「そうね、エルム様も気になるけど」
「はい、お待ちどうさま」
「すいません、アリア様にはどこに行けば会えますか?」
「神殿にいらっしゃると思いますが?」
「神殿へは、どのように行けばいいのでしょう?」
「この道をまっすぐ行けば、大きな建物が見えてくるので、すぐに分かると思いますよ」
「ありがとうございます」
「いえいえ」
店員は、少し不思議そうな顔をして奥に戻っていった。
「とりあえず、これを食べたら向かってみよう」
「分かったわ」
「うん、美味しいね」
「本当ね、美味しいわね」
「ご馳走様」
「うん?」
店員は、不思議そうな顔をした。
「ありがとうございました」
「ああ、ご馳走様って言わないのかもね•••」
「なるほど•••」
ルミオは、セノンの手を握ると神殿へと移動した。
「なんだ!お前たちは?」
「おい!」
「ああ、これは失礼しました。アリア様とエルム様でしたか•••」
「そのようなお召し物なので分かりませんでした。申し訳ありません」
衛兵は、頭を下げた。
「ああ•••」
「いえ、少し外出を•••」
「そうでしたか、こちらへどうぞ」
衛兵は、すんなり中へと通してくれた。
「あなたは?」
「アリア様?」
「セノンが、二人•••」
「早くこちらへ、誰かに見られては大事になります」
アリアは、二人を別室へと案内してくれた。
「アリア様、どうして?」
「あなた方が、何者かは分かりませんが、私に関係あることは分かります」
「ありがとうございます」
「あなたは、エルムにそっくりですね」
「そうなんですか?」
少し頬を赤く染めてルミオを見ている。
「コホン•••アリア様•••」
「ああ、ごめんなさい•••」
「アリア様、信じてもらえるか分かりませんが、私たちは、別の時代から来ました。でも、戻れなくなってしまったのです」
「そういうことでしたか」
「なぜ、この時代の言葉が話せるのですか?」
「ああ、このイヤーカフスのお陰です。魔道具で、この時代の言葉と現代の言葉を翻訳することができます」
「なるほど•••」
「あまり驚かないのですね。私たちと言い、魔道具のことと言い•••」
「ああ、驚いてはいますが、あなたたちを見ていると、なぜか落ち着くのです」
「そうですか•••」
「アリア様、テンシェン様の祭壇に祭られていた鏡は、どこに行ってしまったのですか?」
「鏡?」
「はい•••」
「ああ、あれはテンシェン様の鱗ですよ。とても綺麗ですよね」
「鱗だったのね、では、その鱗は?」
「祭りが終了したら、天へ返す決まりになっているのです。今は、燃えて灰となっているでしょう」
「そんな•••」
「あれが、帰るカギなのです」
「そうでしたか、また、1年後に祭りがあるのでそれまで待つしか•••」
「えっ、1年後•••」
「嘘だろ•••」
「テンシェン様にお会いできますか?」
「それは、難しいかと•••」
「そうですよね•••」
「私なら、毎月お会いする機会があるので、その時にご相談してみます」
「よろしくお願いいたします」
二人は、丁寧にお辞儀をした。
「1ヶ月か•••それでも長いね•••」
「そうね」
「それはそうと、あなた方がからはマナとは違う何かを感じます」
「マナ?」
「もしかして魔力のことかな?」
「ああ、ファイア!」
セノンが、ファイアで火を着けて見せた。
「それは、マナスとは違う力?」
「マナス?」
アリアは、目の前の空間に文字のようなものを描くと、掌の上に火を着けて見せた。
「ああ、ファイアと同じ•••」
「なるほど、こちらの魔法をマナスというのですね」
「魔法というのですかそれは•••」
「マナは、人間誰しもが持つものですが、その量が多く、操る技能に長けている者しか使用できません」
「なるほど、さっきの文字を教えてもらえますか?」
「分かりました」
アリアは、石板の上に「炎」にあたる文字を書き留めた。
セノンは、空中にその文字を指で描いてみると、掌の上に火が着いた。
「できた!」
「まあ、驚いた!」
アリアが、今までになくビックリしているようだった。
「こんな簡単にマナスを使ってしまうとは!」
「そんなにおかしいこと何ですか?」
「ええ、マナを操る修行は何年もかけて行うものなのです。私も幼い頃から修行をしてきたから使えるのです」
「もしかして、こちらの文字が分かればどんなマナスも使えるんじゃないかな?」
「そうかもね、アリア様私たちに修行をお願いできませんか?」
「もちろん構いません」
「ありがとうございます」
そこへエルムが帰ってきた。
「アリア、ただいま•••お前ら何者だ!」
エルムは、すかさず剣を抜いてルミオに斬りかかった。
ルミオは、瞬間移動で軽く交わすとエルムの剣は空を切った。
「ああ、エルム違うの、申し訳ありません」
アリアが、エルムを抑えながら頭を下げた。
エルムは、何が起こったのか分からないようで、困惑していた。
アリア様が、これまでの経緯をうまく説明してくれてようやく落ち着いたようだった。
「大変申し訳ないことをした、ルミオ殿」
「いえ、大丈夫ですよ」
ルミオは、イケメンスマイルで返した。
「でも、本当に似ているわね」
「そうですね•••」
セノンとアリアは、二人を見比べながら、頬を赤らめて見とれていた。
「それはそうと、あなた方は目立ちすぎるから、町へ出る時はこのローブを着てください」
「ローブ?」
「はい、他の者からは別人に見えるようにマナスがかけてあります」
「へえ、魔道具みたいなものね」
「ありがとうございます」
「これなら、町に出ても大丈夫そうだね」
「セノン様、私にも魔法とやらを教えて頂けますか?」
「もちろん!」
二人は、姉妹のように仲良くなっていた。
「当面は、この神殿でお過ごしください、部屋も用意させました」
「何から何まで、助かります」
その様子を、柱の影から伺う者がいた。
次回 【Cathedral of Conspiracy】




