千年魔女の物語 【The Tale of the Millennial Witch 】
注意! ネタバレを含みます!
ソーサリーエレメントシリーズを先にお読みください。
よろしくお願いいたします。
千年迷宮編
【The Millennium Labyrinth】
魔法、それは、大きく炎、水、風、土、光、闇に分類される。
この世界では、魔素と魔力によって魔法が発動されると信じられていた。
だが、この魔法の廃れた世界では、魔力を感じることさえ難しくなってしまった。
私は、怪盗ウィッチ、18歳だ。
名前はセノン。
私の、ひいひいお婆ちゃんは、
伝説の魔女で「ミレニアムウィッチ」《千年魔女》と呼ばれていたらしい。
名前は、シオン。
でも、科学が発達したせいで、人々は、魔法を使わなくなり魔素も魔力もどんどん薄れていった。
魔物や幻獣なども今では、全くいなくなってしまった。
もちろん、私も魔法は使えない•••
両親は、私の小さい頃に事故で亡くなってしまった。
私のお婆ちゃんは魔道具の職人だったが、今では魔道具の需要もなくなってしまった。
お爺ちゃんは武術の達人で、昔から剣術と体術を叩き込まれていた。
でも、私を育ててくれた祖父母ももう他界してしまった。
天涯孤独の私が、なぜ泥棒なんかをしているかというと、
家に代々伝わるお宝があるそうで、今までに盗まれたり、売り払われたりして、各地に散らばってしまったらしい。
そのお宝を、すべて取り戻すためだ。
正確には、その中に伝説のお宝、
「古代の秘薬」というものがあり、
それを飲めば、魔力が得られると言われていて、それを手に入れたかったからだった。
このあたりには、昔からよく聞く、誰もがよく知る物語がある。
ある国の神様のお話。
その国には、神様が二柱おりました。
実は、神様はもともと人間で、夫婦となって一人の可愛い娘が生まれました。
その娘は、神様たちの能力を受け継いでいて、全属性の魔法と、多くのスキルを持っていました。
しかし、その娘にはなぜか、魔力が全くなかったため、魔法もスキルも使用することができませんでした。
ですが、娘は、めげることなく神様たちの修行を受けて、魔法なしでも立派に暮らしていました。
ある日、娘は男の子と出会いました。
彼は、なんと魔力が過剰すぎて、魔法が使えないという病気でした。
二人の境遇が、似ていることもあり、すぐに友人となりました。
ある日、神様からの助言で、娘は、彼との間で、魔力をうまく分けあう魔道具を作りました。
おかげで、魔法もスキルも使えるようになりました。
しかし、喜びも束の間、二人は、ある事件に巻き込まれて、「千年迷宮」へ閉じ込められてしまいました。
前人未踏の古代魔道士の造った1000階にもおよぶダンジョンを、完全踏破した二人は、伝説の存在となりました。
おわり
一般的よく読まれている本は、ここまでで終わってる。
しかし、私のうちに伝わる本には、この続きが書かれていた。
それはというと、
二人は、ダンジョンで古代の魔道士と会い、伝説のお宝を授かっていました。
そのお宝こそ、「古代の秘薬」で、飲めば魔力を得られるというものだったのです。
魔道具がないと、魔力を得られない娘は、それを飲めば普通の体になることができます。しかし、
彼との絆を大切に思った娘は、その秘薬の入った小瓶を投げ捨ててしまいました。
その後、彼女たちは、結婚して幸せに暮らしましたとさ。
さて、小瓶の行方はというと•••
実は、その小瓶を拾った娘の父である神様が、娘のアイテム袋にそっと戻しておいてくれました。
おわり
となっていた。
実は、うちに代々、伝わるお宝の中に、「三種の神器」というもがある。
私の持っている、この水色のアイテム袋だった。
まず、この袋は魔道具で無限にアイテムが収納できる。
中には、飾りのついたホウキと光る珠が入っている。
ただ、アイテム袋以外の使い方が分からない。お婆ちゃんに聞いても分からなかった。
不思議なホウキは、袋から出すと空中に浮いた状態で止まる。そこには座ることもできるが、動かしかたが分からない。
光る珠も、どうやって使うのかが全く分からない。ただの光る珠だ•••
神器というくらいなのだから、すごい力があるとは思うのだが•••
今度のお宝は、「ルミナスナイフ」
国立科学博物館に特別展示されている。
「ルミナスナイフ」は、光属性の短剣で、星々の光を纏っている美しい逸品だった。
セノンは、愛車でピンク色のバイク「スカイレイダー1100XR」にまたがると、颯爽と向かいのビルに乗り付けた。
ビルの屋上には、紫色の長い髪を棚引かせた、美しい女性の影が見えた。
奥には、大きな満月が、彼女を美しく照らし出していた。
「くそ、またお前か?」
「ふん」
「今度こそ、殺してやる!」
セノンは、展示されているルミナスナイフを手に取ると、相手の攻撃を受け流した。
「バカ野郎!お宝で受けるな!」
「バカはそっちでしょ!短剣は武器なんだから使ってなんぼでしょ!」
そう言って、ルミナスナイフで攻撃を仕掛けた。
「傷でもつけたら、俺が殺される!」
もちろん、ナイフには傷一つ付いてはいなかった。
セノンは、隙を見て姿を消すとアイテム袋から、バイクを取り出し颯爽とその場を去っていった。
私は、表の世界では探偵をしている。
「セノンさん、おはようございます」
「おはよう」
「今日の依頼は、一つお手紙が届いていましたよ」
「ありがとう、手紙なんて珍しいわね」
手紙の内容はというと、
「拝啓、時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
私はシオンと申します。
以下の調査を依頼いたしますので、ご対応いただければ幸いです。
【調査内容】
調査対象 :自宅のカギの捜索
【その他の情報】
おかしな依頼と思われると思いますが、直接会ってお話したいと思います。
調査の詳細や料金についてお知らせいただければ幸いです。また、契約書や必要な書類に署名させていただきますので、ご指示いただければ幸いです。 何かご不明な点がございましたら、お気軽にお知らせください。
敬具
住所:○○○○○○○ 」
とこんな内容だった。
「おかしな依頼ね。ちょっと怪しいけど、何か気になるわね」
私は、「PW探偵事務所」を経営している。表向きにやっているだけなので、依頼内容は大したものはない。
「ちょっと下の喫茶店でお茶してくるね」
「はーい、いってらっしゃい。イケメン君によろしくね」
「うう、」
喫茶店に入って、いつものコーヒーを注文して、ゆっくりとした時間を楽しみながら、イケメンのバイト君を眺めていた。
「いつも、ありがとうございます」
「ああ、どうも」
ええ、声かけられたんだけど•••
「二階の探偵事務所の方ですよね?」
「はい、そうですよ」
ええ、なんで知ってるの?
「もしよろしければ•••」
ええ、もしかして、もしかして?
「もしよろしければ、今度の日曜日に映画でも見にいきませんか?」
うおーーキターーー、よし!
「ああ、いいですよ」
「よかった。断れたらどうしようかとヒヤヒヤしました」
「でも、仕事中にこんなことしていて大丈夫なの?」
「ああ、ダメですよね。内緒でお願いします」
「うん、分かった」
「じゃあ、日曜日の朝9時にこの喫茶店の前でもいいですか?」
「うん」
「じゃあ、、楽しみにしています」
そう言って、奥に下がっていった。
これって、デートだよね?
ここに来て春が来たーーー。
なんて、浮かれていた。
彼の名前は、ルミオ。
近くの大学に通う1年生で19歳だ。
一人暮らしで、家族は隣町に住んでいた。
次回
【The Legendary Witch and The Key to the Birdcage 】