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やばいぞ、とんでもなく腹が減っている。これまで感じたことがないほどの空腹だ。俺はこれほどの空腹に耐えることができるのか? いや、無理だろ。これは耐えていいレベルの腹ペコじゃねぇ。これは耐えてたらそのまま餓死しちまうタイプの腹ペコだ。まずいぞ、さっきから無駄に色々考えていたせいで何もうまくいっていない。腹は減るばっかりだ。腹が減っては何もできねぇ。俺はこんなことで死ぬなんて絶対に御免だぞ。俺はこの世界で死ぬつもりなんてねぇよ。腹が減ったんだったら飯を食えばいいだけじゃねぇか。飯を食えばすべて解決。相当簡単なことじゃねぇか。俺の頭は何を考えてたんだよ。飯を食えばいいだけだ。俺はあほなのかよ、飯を食えば解決することにどんだけ時間を使ってるんだ。ふざけんなよ、さっさと俺に飯を食わせろよ。それでいいだろ。何をもったいぶってるんだっての。俺は飯を所望する。早く飯を持ってきやがれ!!
「どうなってんだってのマジで。俺はなんでこんなひもじい思いをしてるんだ? どうなってんだよ。ふざけんなよ!! 俺はさっさと飯が食いてぇんだよ。俺に飯を食わせてくれぇ!!」
俺は今猛烈に腹が減っている。この状況を腹が減っているという一言でかたずけてしまうのはいささか変な気もするが、言葉通り俺は腹が減っている。このままじゃ俺は餓死してしまう。やばい、俺は腹が減っていただけじゃないんだ。とんでもねぇほどに疲労していたんだ。こんなに疲れて腹が減ってるなんて絶望的な状況で何をどうしろって言うんだ。確かに俺の実力はすべてを超越しているほどに強大だが、それでも、疲労と腹ヘリには効果なんてねぇんだよ。これを解決する方法は飯を食って休憩するしか方法はないんだ。それでも、その休憩がままならないんじゃどうしようもねぇし、飯も食えねぇってんじゃ俺にはどうすることもできねぇんだよ。誰か俺に飯を恵んでくれ。そうしてくれれば俺の仲間に入れてやるぞ!! 魔王を討伐する俺の仲間だ、とてつもないと名声と富みを約束するぞ。だから、俺に飯を恵んでくれ!! 俺は今にも死んでしまいそうなほどに弱ってるんだ。こんな状態でアルバイトして金を稼ぐなんてのは夢物語だ。俺にはもう時間が残されてねぇし、これからもアルバイトをするつもりなんてねぇ。だから、俺に飯を恵んでくれ。俺に飯を恵んでくれ!!
「ダメだ、町に入らねぇと誰もいやしねぇ。俺は何て無力なんだ。ただ無尽蔵な魔力を持っているだけのあほじゃねぇかよ。腹が減って死にそうになっている世界最強の男なんて間抜けにもほどがあるだろ。でも、これも全部悪いのは俺じゃねぇからな。悪いのは俺に金も渡さねぇし、町の遠くに転生させたあのじじいだ。俺は悪くねぇんだよ。だから、誰かが俺のことを助けるべきじゃねぇかよ。おいっ!! 誰かいねぇのか」
俺は町に入ればすべてが解決するということも忘れ、町の外でわめいていた。
こんなことをする体力があるんだったら町に入ればいいということに気が付いたのはこれから、10分後のことだった。
俺は自分のあほさ加減に頭を抱えてうずくまった。それはもううずくまった。俺は何てあほなんだ。いや、こんなあほなことするのは俺の意思じゃありえねぇんだ。俺はあほじゃねぇんだからな。俺の意思じゃなくてまた誰かが俺の体を乗っ取ろうとしていたに違いない。俺はこんなことをするようなほど無能じゃないからな。いくら何でも俺のことくらいは自分でわかっているつもりだ。そうだよ、さっさと町に入っていけばいいじゃねぇか。俺が町に入って魔王を倒すパーティーに入れてやるからって声をかけていけばいつかは俺に食べ物を恵んでくれる美少女がいるはずだ。この世界では誰もが魔王への恐怖心を抱いているはずだからな。それを倒すパーティーに入れるんだ、食料の少しくらい分けてくれてしかるべきだ。むしろ、あちらからお願いしてくるべきだとすら思うな。俺の力を見ていないからまだちょっと信じられないところはあるかもしれないが、それでも俺の力を見てしまえば魔王を倒せることがわかるだろうし、全員が俺に食べ物を差し出して、心休まる寝床を提供してくれることだろうな。ああ、最初から町に入っていれば、こんなグダグダすることもなかったんだろうなと思うと、絶妙に萎えてくるな。俺が馬鹿だったからしょうがないということにしておこう。俺は馬鹿じゃないが。
「しょうがねぇ。ついに町に入る時が来ちまったようだな。俺は行くぜ。俺は町に入って腹いっぱい飯を食うんだ。そして、ついでに仲間も集めちまおう。それで俺の任務は万事オッケーだ。空腹さえ取り除くことができりゃひとまずは安心だし、最初はそこから目指していこうかな。俺の力を見てわかるような奴がいたら声をかけてくることだろうな。人だかりとかできちまったらどうしようか。俺もファン対応をするのはやぶ差ではないが、どうも性に合わないんだよな」




