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32話

 俺は今空を飛んでいる。こんなことができる何て前世の俺は夢にも思わなかっただろうな。俺の力は無敵だ。無敵の力で空すら飛んでしまう。

俺はどれだけこの世界の法則を無視すればいいんだろうか? いやいや、この程度はまだ序の口なんだが、これから先もずっと規格外の行動ばか

りすることになってしまうのかと考えると少しばかり申し訳ない気持ちになる。こんな俺から命を狙われている魔王なんてたまったもんじゃない

よな。俺なら、怖くて夜も眠れねぇよ。それくらい俺の力はこの世界では規格外のはずだ。絶対にやりすぎちまうんだろうな。魔王を倒すついで

に世界を半壊させちまったりして……それは流石に笑えねぇか。俺も怒られちまいそうだ。じじいに見つかったら怒られちまうよ。俺はこの世界

を救うために派遣されたのであってこの世界を破壊するためにはけんされたわけじゃないからな。俺の力を見せつけるのはいいけど、この世界に

迷惑をできる限り、そうできる限りかけないように立ち回りながら生きていかないといけないんだ。俺はこの通り、すっげぇ強いからさ。空だっ

て楽勝で飛べちまうし、魔法を放てば見せないようなところまで焼き払ってしまう。そんな俺が戦闘のために魔法を放とうもんならそりゃとんで

もねぇことになっちまうよ。俺の魔法が戦闘用に撃たれるってことを想像するだけでも魔王は夜も眠れねぇはずだ。天気も操作しちまうし、俺に

できねぇことは何もねぇな。ほんとにかわいそうだぜ。ただ、ちょっと強く生まれちまっただけの魔王がこんな俺みたいなチートでしかない人間

から討伐されちまうんだぞ? 魔王だって、まだそんなに悪いことをしてないかもしれないじゃないか。俺は知らんけども。それでも、俺はじじ

いと約束しているから、魔王がどんな善人であっても討伐しなくちゃならないんだ。無駄な殺生はこのまない俺だが、こればっかりは俺の意思が

どうのこうのというわけにはいかないんだよな。俺の意思であって俺の意志ではない。じじいからの指令って奴だな。でも、本当に魔王がとんで

もない善人だった場合はどうしようか。俺の一存で助けてやっても別に構わないか。悪いこともしてない奴を成敗するなんて意味がわからないか

らな。それはただの暴力だ。俺は自分の正義のもとに力を振りかざすだけだからな。正義の伴わい行為をするつもりはさらさらないぞ。俺は正義

に生きているんだ。俺こそが正義の象徴で、俺自身が正義だ。もう俺イコール正義ってことでいいだろう。誰も異存はないはずだ。だって、この

世界で俺に逆らえるような奴なんてただの一人もいないんだもんな。俺最強。俺が世界だ!!


「ちょっと待てよ。俺に逆らえる奴が一人もいないんだったら、俺が服装に気を使う必要なんてないんじゃないか? 俺のことを馬鹿にするよう

な奴がいたらそりゃ正義の名のもとに死刑執行することになるし、そうすりゃ誰も俺の服装がおかしいなんて馬鹿な話をしなくなるはずだ。俺が

この世界で一番偉いんだし、俺こそが流行の最先端であるべきだ。なら、俺が町を観察してそれに合わせるって言うのはおかしな話だよな。向こ

うが俺に合わせろよ」


 とんでもないことに気が付いてしまったな。今まで俺が思い悩んでいたことは本当にどうでもいいことだったんだ。俺がこの世界そのものなん

だからそりゃ俺がルールだ。俺のルール上ではこの服は一般的なものなんだし、それを浮くなんて考えている俺自身が馬鹿だわ。そんなことあり

得るはずがないんだよ。俺自身の服装が世界でもっともはやっている服装になるんだ。

 もう観察なんてやめて、このまま町に降臨してやろうか。そうすりゃ町の住民たちも俺が登場したことに涙して大歓喜するだろう。それくらい

俺は崇め奉られる存在だもんな。俺はこの世界においては神みたいな存在だし、俺は地上に舞い降りた神そのものだ。俺の神々しいオーラにただ

の一般人でも簡単に気が付いちまうんだろうな。全員の視線を釘付けにしちまう俺……なんて罪深いんだ。俺にそんなつもりはなくとも、世界が

俺を放っておかないもんな。俺にどうこうすることはできねぇ。俺はただ注目を浴びないよう、地味なオーラを出して誤魔化すしかないんだ。そ

れをしても、俺の抑えきれない輝かしいオーラの千分の一も隠すことはできないんだろうけどな。俺の力を俺自身で隠すことは実際可能だが、そ

こまで本気で隠すってのも俺の美学に反する。それはちょっとできねぇ相談だな。俺がルールなんだ、俺が全て決める。俺ができねぇって言った

らそれはどうしても世界がひっくり返ろうが、巨大隕石が降ってこようがこの世界が滅びようが曲げることのできねぇルールになるんだよ。俺の

力を舐めるなよ。すべてにおいて超越したとてつもない存在。それが俺だ。おれに歯向かうやつは誰であろうと鉄拳制裁してやろう。このまま町

に降り立つのは流石に目立ちすぎるからやめて、いったん戻ってから正面の入口を堂々と入って行こうじゃないか。見てろよ。


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