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29wa

 よっしゃ、とりあえず町に入っていくとしますか。これで、俺も初めて異世界の町へ突入だ。それに、この世界の人間と出会うのも初めてのことだし、初めてばっかりでテンションが上がってきたな。これはちょっと頭を冷ましてから言ったほうがいいじゃないか? そうだよな。このまま行ったんじゃ、俺は馬鹿みてぇなテンションで一人騒いでしまいそうだし、そんな醜態晒すわけにはいかないからな。俺も、人並の羞恥心は持ち合わせてるんだよ。

 それじゃあ、一旦、ここで今までの出来事を顧みようか。俺がこの世界に来てから起きた出来事と言えば、まずはとてつもなく広い森に転生させられてことかな。まず、これのせいで俺の計画が大幅に狂っちまったんだよな。俺も少し歩けば、森を抜けて町が見えてくるものとばかり思っていた。まんまといっぱい食わされたってわけだ。これも、今俺が町の目の前にいるから笑い話みたいなテンションで思い出せてるけど、実際これが、まだ森の中とかだったら今頃森を全部消し炭にして一面焼け野原にしてしまっているだろう。そうしてしまえば、どこまでも見渡すことができるしな。町だってもしかしたら見えてくるかもしれねぇってことで躊躇なくやっちまってることだろう。俺としても、そこまでのことをしなくて済んだってのは相当でかかったな。かといって、あれだけ歩かされたのは今でもそれなりに根に持ってるんだけどな。一直線に森を焼いちまったのは自分で鎮火したからノーカウントだってな。あれは、もう俺も歯止めがきかなかったんだよ。どう考えても俺をあそこまで追い込んだじじいが悪い。じじいももしかしたら、本当にもしかしたら悪気はなかったのかもしれねぇけど、それでもあの森は広すぎだって。俺じゃなかったら今頃あの森でお陀仏だぞ。俺だからやったのかもしれねぇが、やっていいことと悪いことの線引きくらいしっかりしてくれって言う話だよ。

 それから、あの森で俺は雨を降らせたんだっけな。雨を降らせるって簡単に言ってるけど、俺は天候操作っていうとんでもない魔法を軽々使っちまったんだよな。あれって今思えば相当凄い魔法だったんじゃないか? もはや、世界に干渉しているといっても過言じゃないもんな。俺は世界に干渉することができるって言う肩書を手に入れたと思ってもいいんだろうか? それくらいやばい魔法だったということにしておこう。例え、大したことなかったとしても俺がそう思っていればそれはそう言うことなんだよ。誰の目の前でも使わなかったら俺は自分の思い込みで完結することができるからな。


「それにしても、雨を降らせた後に濡れたくないからってバリアを作り出しちまったのもすげぇよな。今も使ってるけど、このバリアさえ纏っていれば俺は無敵だからな。どんな攻撃だろうと、このバリアを貫通することは不可能だと思ってるくらいだ。自分で割ろうと思えばそりゃ割れるんだけど、俺並みの力を持った奴なんてこの世界にはいねぇだろうし、実質的には絶対に割れないバリアってことだ。これは大きな収穫だったな。今後もこのバリアは戦闘で大いに役に立ってくれることだろう」


 バリアは少しやりすぎた感はあるけど、俺の身を守るという面では絶対に必要なもんだしな。これが無かったらいくら俺と言えど不意の一撃でやられてしまう可能性を捨てきれない。しかし、このバリアがあることで、俺は不意打ちにも負けることがないってことなんだよ。つまり無敵だ。俺に不意打ちまで効かないってなったらそりゃ誰が勝てるんだよって話だよな。じじいとの戦闘でもこのバリアさえあれば、楽勝で勝ちをもぎ取れていたことだろう。


 その後、ついさっきまで賢明に歩いていた草原も無駄にだだっ広かったよな。相当な距離を全力疾走で駆け抜けたってのに、町なんて一向に見えてこなかったんだぜ? ふざけてるだろ。なんとか、森を抜けてその喜びとともに走り出した俺の純粋な気持ちを返してくれよ。今思えばあの全力疾走ってどれくらい走ってたんだろうか? 絶対、普通の俺だったら考えられないくらいの間走ってたよな。これも、魔力が原因で知らず知らずのうちに自分を強化していたのかもしれないな。もしかしたらだけど、既に強化魔法を自分に付与してるじゃないか? それとも、このバリアを纏っているからなのか? いずれにせよ、俺は前世では考えられないほどの力を手にしているってことだよ。俺はこんな力を持ちながらもまったく自覚することなく人生を終えたんだもんな。世界が変わるだけで、こんなにも自分の力が変わるなんてすっげぇ不思議だ。俺をこの世界に転生させてくれたじじいには本当に感謝しないとな。いつの間にかライバル関係になってたけど、じじいって普通に神様だもんな。俺も、もう少しくらいは尊敬してやるべきなのかもな。悔しいから絶対に本人の前では言わねぇけど、まぁ、心の片隅止めておこうか。


「それじゃあ、落ち着いたことだし今度こそ町の中へ!!」

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