28話
それの鎮火に雨を降らせてびしょ濡れになる必要もなかった。まぁ、これはおかげでバリアを覚えれたしギリギリ良かったか。その後もこんなだだっ広い草原をダッシュして死にそうになることもなかったんだ。あれ? 俺は瞬間移動を思いつくまでにこんなにもあほな行為を繰り返していたのか? それが、この瞬間移動を使った瞬間すべての過ちを認めてなかったことにするってことか? いやいや、それはおかしいだろ。今までの過程だって全部必要なことだったんだ。一つだってなかったら俺はこの場所にたっていない。そもそも、瞬間移動だって思いついてないかもしれないだろ。なら、瞬間移動を使っても今までの過程は無駄じゃなかったことになるな。使おう。もう使おう。絶対に使おう。使って見せ る!!
「そりゃぁぁぁぁーーー!!!!」
俺は瞬間移動を使った。
すると景色が一瞬で変わった。特にこれと言って何かをイメージしたわけでもないが、とりあえず成功したみたいだな。
「おお!! マジで町の目の前まで来てるじゃねぇか。俺ってやっぱりすげぇよ。こんなの普通の人間じゃできねぇってな。俺しかできねぇよ。無駄に使うのしぶって損したぜ。マジで何でも魔法なら使えそうな勢いだよな。でも一度、瞬間移動を覚えちまうとほかの移動手段何てあほらしくて使ってられねぇっての」
遠く彼方にかすかに見えていた程度の壁が今では俺の目の前にそびえ建っている。これが、瞬間移動の性能だ。マジで一瞬だった。流石に、俺が一瞬に感じてるだけで、実は結構な時間が立っているとかそんなオチはありえねぇよな。いくら何でもそりゃ考えすぎか。ありえねぇ話だ。
「でもあまりにも一瞬でちょっと張り合いがねぇな。しょうがないことだってわかってるんだけどさ、これから移動手段をすべて瞬間移動にしちまったらどんだけイージーモードになっちまうんだろうな。マジで、こればっかりは使い過ぎに注意しとかねぇと。俺が楽になる分には一向に構わないんだけど、これのせいで俺が強くなる機会を失っている気がしてならないんだよな。精神的な成長とか色々なものがあるし、これは絶対によくない。自分の力の上に胡坐をかいてるようなもんだろ」
とはいいつつも一度この快適さを体験してしまったら、歩いて移動なんて馬鹿らしくてやってられないのも事実だよな。どうにかしてこの瞬間移動に依存しないようにする方法を考えとかないとな。このままじゃ、俺はとんでもねぇナマケモノになっちまう。普通の人間だったら瞬間移動なんて大技を使ったら、それなりに魔力を消費しちまったりするんだろうけど、今のところ俺にはなんの影響も出てないんだよな。だから、この調子で何発使おうが特に影響は出ないだろう。なら、俺が瞬間移動を我慢するのは不可能だって話になっちまうところだが。そこは俺の鋼の意思で完璧に我慢してやろう。でもあんまり我慢のしすぎもよくないし、一日に使う回数の制限でも決めておこうかな。そうだな、一日に10回以上使わないってことにしておこう。ちょうどいいくらいの数だと思う。我ながら、バランスを取って、考えるのは天才的だな。
今日はもう一回使っちまったから後は9回まで使えるってわけだな。でも、この瞬間移動ってどれくらいの範囲を移動できるんだろうか? 今回は、見えているところに移動するのにつかったけど、これって普通に歩いたりしたら何日もかかるような場所を一瞬で移動してこそ真価を発揮する魔法だよな。一回試してみておくのもいいかもしれないな。試すだけだから使用回数には含まれないよな。当然だ、これは俺が率先して使おうってわけじゃないんだ。ただ、実験をしているに過ぎない。だから、これから何度実験しようがそれは制限の回数にカウントするべきじゃないんだ。俺はそれくらいはわかっているからな。ひとまず、俺が転生してきた森に移動でもしてみるか。一度通った場所だし、簡単に終わっちまいそうだな。
「ものは試しだ。見えない場所にも使えるってことがわかれば今後活躍の場はとてつもなく広がるだろう。俺はやればできる子なんだ。やろうと思わないでもできるけど、よっしゃ!! 行くぜ!!」
俺は最初の森をイメージし、瞬間移動を発動させた。
すると、景色が一瞬で切り替わり、見覚えのある森の中へぽつんと立っていた。
「お、成功だな。やっぱり簡単だったか。一度来た場所だもんな。これくらい成功してくれなきゃ困るってもんだ。それじゃあ、成功したし、町の目の前まで戻るか。そりゃ!!」
俺は町の前に帰還した。
ここまでかかった時間はほんの数秒だろう。移動だけにかかった時間を考えてみれば、それはほんの一瞬だ。森の中で成功したのを確かめてたので少しタイムロスしちまったって思ってるくらいだ。それにしてもこの瞬間移動はちょっと便利すぎるな。今後も活躍してくれそうで頼もしいが、やっぱり使うのは控えておくべきだな。使い時は考えよう。




