26話
お? もしかして町なんじゃねぇか?
俺の完璧で完全無欠な視力が遠くにある壁を発見した。これも俺の視力が限界突破していなければまだ気が付けない距離だ。やっぱり俺は超絶ハイスペックチート人間だな。もはや、人間であるって言うこと自体が詐欺みたいなもんだぜ。早めに、人類を超越した存在に進化しとかないと俺も自己紹介するときに人間っていいづれぇよ。
「この広大な草原にいきなり壁があるって言うこと自体がとてつもない違和感だ。これは間違いなく町を覆う壁だろう。モンスターから町を守るためってところだろうかな。この世界の人間も最低限の知恵を身に着けている用で安心したぜ。モンスター対策もしてないような馬鹿な奴らを俺が魔王から救ったところで同じことを繰り返すだけだもんな」
魔王討伐を成し遂げることは確定だが、めちゃくちゃ強いと言われている魔王をそのまま討伐してしまうって言うのも少しもったいない気がするな。超絶美少女だったら仲間に加えよう。強さは及第点くらいはあるだろうし、後は見た目と性格だな。あまりにも終わっている性格だったらすぐに討伐してしまおう。人格破綻系はちょっと勘弁だからな。何をしてくるかわからねぇようなやつを子分として連れて歩くのはリスクがでかすぎる。何かあった時に俺まで責任が来ちまうからな。子分を作るって言うのも楽じゃないな。特に俺なんて基準からして相当厳しいだろうし、この世界で子分にできるような奴は人類最強の戦士か、魔王本人ぐらいだろうな。人類のほうは対して期待してないからどうでもいいけど、魔王のほうは強さはじじいの折り紙付きだからな。せめて、俺の2割くらいの強さがあれば子分として取り立ててやってもいいんだけど。そこは実際に確認してみてからになるかな。
でもこれで俺は死なずにすみそうなのあか? ……かなり遠いよな。俺の視力でギリギリ見えるラインだからここからだと歩いて数キロはあるだろうし、そこまで俺のなけなしの体力は持ってくれるのか? 結構きわどいラインだよな。通常の俺からしてみれば全然大したことのない距離ではあるんだけど、こうやってかなり疲労を蓄えてしまった状態だと流石に厳しい気がしてしまう。
一旦冷静になって考えてみよう。俺は残りどれくらいの距離だったら歩けそうなんだ? 正直、今すぐにでもこの地面に倒れこみたいくらいだ。目がちかちかするとかそのレベルまでは来てないから気を失ったりはないだろうけど、それでもここからあそこまでの距離を歩けるのか? いや、歩くしかないだろ。それ以外に俺が助かる道はないんだからな。冷静になる必要なんてなかったんだ。歩ききるしかないこの状況でごちゃごちゃ考えてもしょうがない。無駄なことに体力を使うくらいだったら少しでも先に進んだほうが建設的だ。もはや俺には前に進む以外の選択肢は残されていない。絶対に町へたどり着いてやるんだ。大体、俺はありえないほどの魔力を有してるって言うのに、体力は一般人ってのがそもそもおかしいんだよ。それこそ、何か魔法で解決すればいいんじゃないか? ……それだぁぁぁ!!! なんで俺は今まで気が付かなかったんだ。最初から俺には魔法があったじゃないか。全部魔法で解決できることばっかりだったじゃないか。最初に森を焼き払って、雨を降らせて、なんでそこから俺は魔法を使わなかったんだよ。あれだけの魔法が使えるんだ。体力を回復したり、自分自身を強化したりするくらいの魔法なんて簡単に使えてしかるべきだ。俺の魔法を自分が一番信頼していないとはな。とんだ、馬鹿だ俺は。
「こうなったらガンガン魔法を使って、すぐに町までたどり着いてやる。どれだ? どの魔法を使えば町までたどり着けるんだ? やっぱり、瞬間移動か? いやいや、ここでそんなチートみたいな魔法を使っちまったら今まで俺が頑張って進んできた実績がすべてなかったことになっちまうじゃないか。それは、個人的に了承できないな。瞬間移動はやめておこう。もうちょっと、今までやってきたことを生かして町までいける魔法はないか? 俺のスピードを強化して町まで走るか? これも、生身の状態で走ってきたのをすべて台無しにしちまうな。やめておこう。となると、空を飛んだりももちろんアウトだし、無難に体力を回復するか、体力を強化して普通に歩くしかないな。それが、今までをなかったことにすることもない最良の手段かもしれないな。時間はかかっちまうが、それでもいいか」
これで、瞬間移動なんてしちまったら本当に俺は今までなんのためにきつい思いをして歩いてきたんだって話になっちまう。森を抜けるのにも、この草原で町を見つけるまでも相当な苦労があったんだ。それを瞬間移動一発で町に着いちまうなんてことになったら俺はとんでもねぇ馬鹿野郎だって認めてるようなもんだ。絶対に瞬間移動だけは使わないぞ。
とりあえず、自分自身に強化魔法をイメージしてかけてみる。
すると、一気に力が湧いてきた。これなら、どれだけダッシュしようが歩こうが疲れなんて感じないだろう。俺はもう無敵だ。全知全能だ。それほどまでの充足感が俺を満たしている。これは来たぜ!!




