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24話

 お? あれは!?


 歩き続けること数十分。

 俺はついに森の出口へと至った。ここまでの道のりは苦難の連続だったな。とんでもねぇことばっかりだったぜ。思い出せば長くなるから思い出すのはやめておくが、それくらいとんでもねぇことばっかりだった。俺もよく五体満足で生きているなと感心するくらいだぜ。

 いや、特に何かあったわけじゃないけど、こうやって試練を乗り越えてここまで来たって言うアピールはやっぱり必要だよな。俺も暇だったんだ。これくらい羽目を外すくらい誰も怒らないだろ。暇だったんだよ、暇だったんだ!!


「でも、やっとこの森ともおさらばか。ほんと良かったぜ。じじいが正真正銘の人でなしなのかと思ってたところだぞ。ライバルをはめる何て普通の奴にはできねぇからな。じじいももう少し気を使って町の近くに転生させてくれれば良かったもんなのにな。これもささやかな嫌がらせなのか? 残念ながら俺には対して効いてないけどな。俺はこれくらいじゃ怯まないし、特にダメージもないぞ。精神的にだってこの通り元気だぜ!! どうせ俺の今の状況も見てるんだろ? どうだ? 俺は無事に森の外へ出てやったぞ!!」


 厳密にはまだ、出口らしきものが見えただけなんだけどな。俺はもう完全に森を出た気になってる。もういいよな。これくらいはしゃいで喜んでもいいくらいこの森をさまよったよな。でも、よく考えたら俺が餓死してしまった時に比べれば十分の一くらいの時間しか森に滞在してなかったんじゃないか? 俺もまだまだだな。これくらいで心を揺らされてるようじゃ、この先が思いやられるってもんだぜ。この調子で行こうなんて思ってた俺をぶん殴ってやりたいな。


 森の出口まで歩いてきたが、特に感動とかはなかった。唐突に森が終わり、そこからは草原が広がっている。

 ちょっと待ってくれ……森から出たらすぐに町じゃないのかよ。もうこの先には町が広がってるのかと思ってガッツポーズの準備までしてたぞ俺。ふざけんなって、次は草原ってことか? もういい加減にしてくれよ。どんだけ町が遠いんだ? 俺が真逆にでも歩いちまったのか? そんなはずねぇだろ。俺の勘が間違ってるわけねぇんだ。これ以上俺を歩かせるつもりなんだったら、こっちにだって考えがあるぜ。この世界を俺の魔法で消滅させて、完璧に消失させちまえばいいんだよ。そうすれば、俺はこれ以上町を探す必要もなくなるもんな。もうそれでいいか。待てよ、そんなに早まるんじゃない。俺がこの世界を消滅することはじじいに負けを認めるようなもんじゃねぇか。そうなってしまえば、俺は勝負から逃げた卑怯者の烙印を押されてしまうことになる。それだけは勘弁だ。俺は誰にも負けてやるつもりなんてない。俺は全戦全勝、完全無敗なんだ。俺はこの世界でもどの世界でも最強の存在じゃないといけないんだよ。


「いいだろう。俺もとことんまで付き合ってやるよ。どうせ、またこの草原もあほみたいに広いんだろ? それくらいわかってるさ。でもなぁ、俺だってただむやみやたらに進むだけじゃないんだぜ? 俺には絶対に信頼できる勘があるんだ。俺の勘によると、町はあっちか!!」


 俺は二時の方向へ完璧なスタートダッシュを決めた。

 これ以上ないくらい完璧なクラウチングスタートだった。審判がスタートのピストルを鳴らしたんだったとしたらそれと同時にスタートを切ったくらい完璧なスタートスタートだった。これこそ、審判の呼吸と完全に合わせた新のスタートダッシュだ。

 周りの選手はスタートの時点で大きな差をつけられたことだろうな。もちろん、今の俺の横には競う相手何て一人もいないんだけどな。でも、俺はそれでも常に完璧を目指しているんだよ。こういう時に手を抜くやつにいざって言う時に完璧な対応ができるはずがないんだ。一つ一つに全力を尽くす、それが俺のスタイルだ。

 もはや、俺がスタートダッシュを決めたことに世界が気が付いていない。俺は世界さえ置き去りにして走っている。俺の体はぐんぐん加速していき、全盛期の力のすべてを発揮している。


「今俺は風を切っている!! これこそが、ダッシュだ!! 俺のダッシュは誰にも止められねぇぜ!! オラオラオラァァァァァーーーー!!!!」


 こんなに早く走ったのなんて初めてだ。もう何ものも俺に追いつくことなんて叶わないだろうな。

 それくらいの速度で俺は走っている。じじいとて、ぎっくり腰になりかけの体では俺に追いつくことなんてできないだろうな。たとえ、全盛期の若々しい頃でも結果は同じだろうな。俺の力を見せつけてこのまま全速力で町にツッコんでやる。俺はミサイルだ!! 俺はもう町を粉々に破壊するまで止まらねぇぞ。俺を止めたくば、何か俺の満足するものを用意するしかないんだ!! 俺を満足させてみやがれ!!


 俺は走った。

 息が切れることすら忘れ、何ものにも縛られずに走った。もう酸素が足りていなくて頭がぼぉっとしてしまっているがそんなことも気にせず走った。ただひたすらに走った。]


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