22話
バリアをこれからも使っていくか否かの葛藤を続けていたが、俺はとんでもないことに気が付いてしまった。
そもそも、バリアを使おうが使わないようにしようが俺がモンスターを一方的に蹂躙することは確定している。それを考えるとこんな馬鹿らしいことに時間を費やしている自分が恥ずかしくなってきた。
「そうだっての、元々俺とモンスターじゃ力の差がありすぎるんだ。俺がバリアを使ったところで大きな差なんてないな。むしろ、バリアを使わないほうが微妙な気がしてきたぞ。俺は、手を抜いたりなんて失礼なことはしねぇからな。どんなに雑魚なモンスターを狩るのにも全力で取り掛かるのが俺だ。俺の力は無駄に使うための力じゃねぇんだよ。どんな時でもしっかり使ってやらねぇと宝の持ち腐れってやつだ。モンスターは俺がこの世界に転生した時点で詰んでるんだ、後から何をしようがどうってことない」
俺は真理に至ってしまった。俺がこの世界に転生した時点でモンスターのこれからは終わってしまっているんだ。もしかしたら魔王がほんの少しだけ手ごたえがあるかもしれねぇが、それも淡い期待と散るんだろうな。俺の力は神であるじじいと比べても見劣りするもんじゃない。なんで俺がこれほどまでの力を持っているのかって話になるかもしれねぇが、それは俺だからだ。俺は世界で一番強い存在だったし、存在するすべてのものを超越した存在だからな。だから、神が相手だろうが、魔王が相手だろうが俺が勝つ。それが当たり前の当然だ。当然すぎて当然すぎるくらいだ。それくらいに当然なのだ。俺の力がこの世界で発揮されるようなことはあるんだろうか? もしかしたら、特に全力を出すこともなく終わっちまう可能性も高いよな。むしろ、全力を出しちまったら、この世界ごと消滅させちまうはずだ。俺の手加減次第でこの世界は滅んでしまう。魔王よりも俺のほうがよっぽどたちが悪いってもんだな。魔王もとんだとばっちりだよな。まさか、俺みたいな最強の存在が刺客として送られてくるなんて思ってもいないだろう。というか、異世界から転生してくるっていう発想自体がないか。俺だって、自分が体験するまでそんなこと考えもしなかったんだ。俺が考えもしないんだったらどう考えても無理に決まっている。魔王ごときが思いつくはずもない。魔王はどうせ、その辺のしょぼい村でも侵略して図に乗ってるんだろうな。お山の大将を俺がしばいてやるよ。魔王なんて名前だけの雑魚に決まってるんだ。どうにかして、何かがどうにかこうにか間違ってとてつもない強さであってほしいと願っているが、所詮はこの世界での最強だ。じじいと比べるべくもないだろうな。じじいとの戦いが懐かしい。あの戦いは熾烈を極めた非常に厳しいもんだったな。俺も途中で何度心が折れそうになったことか。流石は神だって褒めてやりたいところだけども、あれは流石に大人げなかったな。じじいが神としての力を解放して来たときは正直、きついんじゃないかって思ったときもあったけど、俺の実力も俺の想像を軽く超えてきたからな。それが無かったら、俺はじじいとの戦いでこの世から消滅してしまっていたんだろうな。考えるだけでも恐ろしい。よく俺も生き残ったよ。一回、森で餓死してるやつが神と互角に戦ったんだぞ? この世の中何が起きるかわからねぇな。俺自身が一番感じてることだけどさ。どう考えても、俺は普通の人間じゃなかったもんな。前世で普通に生活している時からこの力の片鱗はあったんだよ。妙に、大人びていたしな。俺も、周囲のガキとは思考回路が異なっていたし、今思い返してみれば、中の良かった友達なんて一人もいなかったな。俺が精神的に成熟しすぎていて、高校生のガキとは何もかもが違っていたんだよ。俺はじじいと話してたほうが百倍楽しかったぞ。まぁ、そこまでの精神状態ではないんだけどさ。それでも、高校生のガキと比べたらッて話だ。俺も、前世ではもっといろんなことがしたかったな。特にこれといって何かを成し遂げたわけでもねぇし、俺がこれから世界中に名を轟かせる予定もすべてがくるってしまったんだ。こんなことになるんだったら、もう動き出しておくべきだったのかもしれねぇな。高校を卒業してから活動を始める予定だったからな。俺も、爪が甘い。これじゃあ、この世界では生きていけないかもしれないな。もっと、気を引き締めて行こうじゃないか。俺の力を余すことなく発揮してすべてを出し切って魔王を討伐。それで、じじいとの再戦だ。ぼこぼこにして、神へと昇格してやろう。むしろ、俺が神を超えた存在として新たに名前を貰うって言うのもありだな。そうしたら、じじいは俺の子分と言うことになるな。絶対にこき使いまくってやろう。ああ、これから怒ることが楽しみすぎる。俺もまだまだガキだってことだな。こんなしょうもないことで心を躍らせているようじゃまだまだだな。
絶対に勝って俺が神になるんだ。




