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21話

 俺が撃った魔法の炎ってこんなに消えないもんなのか? 結構な時間歩いてるけどずっと燃えてるよな。もしかして、この森を燃やし尽くすまで消えないとか言わないよな。そんなことになっちまったら俺はこの世界を救う前段階で森を一つ消滅させちまうことになるぞ。魔王並みの所業じゃねぇか。こんなんじゃ、俺は魔王と同じ扱いになっちまうぞ。どうすればいいんだ? 一旦、進むのをやめて消火活動をしておくべきだよな。このまま燃え続けたらまずいことぐらい俺にもわかる。とりあえず消そう。消火してからでも別に時間的な問題はないだろうしな。前と後ろに広範囲の水魔法を撃てばいいか? でも、それだとまた木を薙ぎ払ってしまうよな。ここは天候操作で雨を振らせたほうがいいか。ここら辺一体に、大雨を降らせよう。俺の魔力ならそれくらい容易いことだろう。見てろよ。俺の魔力の凄さを見せつけてやろう。この炎でも十分に伝わっているだろうが、まだまだこんなもんじゃないからな。天候を操作するくらいのことは朝飯前なんだ。


「雨よ降れ!! どれくらいの範囲で降らせればいいかよくわからないな。森全体を覆いたいが、そもそもこの森の広さがわからん。まずいぞ、これじゃあ森を全体に雨を降らせることができない。もし、全部を消火できなかったらそこから炎が燃え移ってしまう。それじゃあ元も子もないっての。とりあえずひたすら広範囲にするしかねぇ。俺の魔力を燃え上れ!! いや燃え上ったらダメか。森全体に雨を降らせるんだ!!」


 俺は念じた。

 精一杯念じた。これでどんな魔法かわからないが、俺の溢れる才能が勝手に魔法に変換してくれるだろう。俺の才能はとどまることを知らないからな。俺自身、俺がどこまでのことができるのか想像もできない。本当の底なしって奴だな。人間底なし沼って呼んでほしいくらいだ。俺のことはこれから人間底なし沼と呼んでもらおう。今度から、自己紹介するときは絶対に言うようにしとかないとな。俺も意外と忘れっぽいところがあるからな。メモしときたいが……メモ用紙なんかあるわけないか。名刺でもあれば、それに書いとくんだけどな。都合よく名刺があるわけもないし、俺が自分で覚えとくしかねぇか。それくらい覚えとけるだろ。

 おっと、雨が振り出したな。俺の魔法がうまく発動したってことか。

 でも、このまま歩いてたんじゃ俺もずぶ濡れになっちまうじゃないか。馬鹿か俺は。そんなこともわからなかったのかよ。自分自身が情けなくなってしまう。このまま歩いて行くのは無理そうだし、とりあえず雨宿りを……してる場合かぁぁぁぁーーー!!!! 自分が濡れないように魔法でバリアでも張ればいいじゃないか。そうだよ、そうしよう。自分にバリアを張って雨から守ろう。俺の才能ならバリアを張るくらいのことは簡単だし、当然できて当たり前だ。魔力で俺自信を覆うイメージでっと。


「ふっ!! こんな感じか」


 イメージ通りにバリアを展開することができたのか。先程まで喰らっていた雨がまったく当たらないようになった。

 これは便利だな。雨だけじゃなくモンスターの攻撃なんかもこれですべて防げるだろう。これで俺の異世界生活もぐんと楽になったな。モンスターからの攻撃をすべて無効化してしまうのは難易度的にどうかとも思うが、実際にそれくらいの実力差は余裕であるからな。しょうがないことだろう。モンスターが弱すぎるのが悪いってもんだ。俺はただ、軽くバリアを張っているだけだからな。もちろん、全力でバリアを張ればこの程度の威力じゃないことをわかっていてほしいな。俺が全力を出せば、それこそ何も通さない最強のバリアが完成することだろう。それくらい、当たり前にできる。俺からしてみれば、当然できて当たり前のことなんだ。バリアだけ取ってみてもこのクオリティ。俺ってやっぱり最強だな。この異世界でさらに実力をあげてじじいをぼこぼこにできるくらいにならないといけないからな。でも、じじいも神たちと戦って修行をしておくみたいなこと言ってたから俺も油断するわけにはいかねぇ。相手のことを考えれば、俺のほうが格段にしょぼいんだ。でも俺は不利な戦いほど燃えるタイプだからな。これは、最強のシチュエーションと言っていいだろう。俺が最高に輝ける舞台を用意してくれてありがとう。俺がかっこよく、じじいをフルボッコにしてやるからな。今回は妙に実力が拮抗していたせいでいい戦いになっちまったからな。今度こそは圧倒的な実力差を見せつけて圧勝してやるんだ。


「このバリアを常時展開できるようにしとこうかな。これで、いついかなる時に不意打ちされても俺には何のダメージも負わせることはできないしな。でも、あんまり強すぎるか。俺自身最強なのに、防御まで完璧になっちまったら、この世界での修行をどうやってするか問題が発生するな。ただただ、モンスターどもの攻撃を無効化して俺が一方的に蹂躙するだけになっちまうぞ」


 そんなことじゃあ、修業とは呼べないよな。俺の実力をあげる役にたっていない。


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