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20話

「ほんとにいつまで歩かせるつもりなんだよ。とっくに町についてないとおかしい距離を歩いてるはずなんだけどなぁ。あのじじい、まさか本当にやってくれやがったのか? あれだけの激闘を繰り広げたライバルである俺を貶めるようなことをしてきやがったのか? いやいや、そんなはずないっての。俺の運がちょっとばかし悪いだけだよな。そうに決まってるよな」


 疑ってはいけないことくらい俺もわかってるんだが、こうまで状況が悪いとつい疑ってしまうってもんだ。俺が悪いって言うことなんて誰にもできないだろ。それぐらい俺は不幸な目にあってるんだ。どれくらい歩いたかなんてのはもう忘れちまったが、どう考えても距離的にも時間的にも町にたどり着いてなくちゃおかしいはずなんだ。はじめの町なんて、森からすぐ近くに設定してくれているのが優しい神様ってもんだろ。それを、故意に遠くの設定しているようなことがあればそれはじじいが俺をはめたということだ。あれだけ深く語り合った俺に対してこんなことができるようなじじいとは思えないんだが、これでは疑ってもしょうがない。俺がじじいの気遣いを無駄にしちまっている可能性は考えられるんだが、それにしても町に着かなすぎる。真反対に進んでしまっていたとしても別の町がそっちには存在しているはずだろ? それが、いつまでたっても俺が焼いた木しか見えないのは意味不明だ。俺は、同じ場所をずっと歩いているとでもいうのか? そんなわけないっての。おかしいのは俺じゃなくて、この世界だ。俺がおかしいなんてのは絶対におかしい。俺よりも世界がおかしいんだ。おかしいったらおかしいんだ。


「駄々をこねても始まらねぇか。我慢してこのまま進んでみるとするか。俺は忍耐力には自信があるんだ。さらに進化した俺の忍耐力でこの窮地を脱出してやるぜ。俺だって、神と引き分けた実力者だ。これくらいのことで俺の心を折ることはできないんだ」


 鋼のメンタルで、俺は道を進み続けた。

 この道は絶対に町へ続いているんだ。俺がそう信じているから、そうに決まってるんだよ。町に続いている道を俺は進んでいる。そう、この道は町に続いている道なんだ。ここで、折れてしまったら俺は一生町に着くことはできないし、このまま森で餓死することになっちまう。町にすら着けづに死んでしまうなんて無様な真似をすることなんてできないからな。町に着いたらまず何をしようかな。そうだな、俺はまずは飯かな。飯をたらふく食ってやるんだ。異世界初の飯だし、どんなもんが出てくるんだろうか? 今から想像するだけでもよだれが出ちまうな。カレーなんていいかもな。異世界らしさはないかもしれないが、純粋に俺の好物だ。でも、折角の異世界なんだし、まったく見た目から味を想像できない料理なんてのもありかもしれないな。ちょっと怖いけど、それくらいの方が異世界らしいよな。どんな飯が出てくるんだろうな? めちゃくちゃ楽しみでしょうがないな。

 おい、ちょっと待てよ。飯を食うのにはどう考えても金がいるよな? 俺ってこの世界での金とか持ってるのか? 嫌持ってるはずねぇよ。だって、俺が異世界に来てからやったことと言えば、森を焼き払ったくらいだ。それで、この世界の金を持ってるはずもない。まずいぞ、このままじゃ。町に着いたところで俺は飯にありつけない。それどころか、泊まる場所だって確保もできないし、ただ町に着いただけの人になっちまうじゃないか。どう考えても意味ねぇっての。じじいからこの世界の金を少しでも貰っておくんだったな。マジで困ったぞ、これから俺はどうすればいいんだ? アルバイトか? いやそんな都合よくあるもんなのか? あったとしてもすぐに給料をもらえるとは限らないよな。ただでさえ、積んでいる状況でアルバイトをして金を貰えるのは来月ですなんて言われたらそれこそ完全につみだ。ただ無駄に時間を消費してしまっただけになっちまう。厳密には来月金が入ってくるから無駄にしたわけじゃないんだけどさ。それでも、今この時にはなんの役にも立たないんだ。それじゃあ、今すぐ金が必要な俺にしてみれば意味はないってことだ。じじいのやつ、本当に俺のことをだましやがったのか? 色々と俺に対して不利なことが起きすぎなんじゃないのか? 俺はこの森に転生させられた時点で終わっていたって言うのかよ。そんなのありえねぇだろ、俺だってじじいを信じてたんだぞ? それをあのじじいは一方的に裏切ったって言うのか? そんなありえねぇ、俺だって戦った相手のことくらいわかるってんだよ。じじいはこんなことをするような奴じゃない。これは

ただ不幸が重なっちまっただけで、決してじじいが考えて実行したわけじゃないはずだ。


「くそ、嫌なことばかり考えちまう。これじゃあ、俺がくそ野郎じゃないか。俺は騙されているわけじゃないし、俺もじじいのことを疑ってるわけじゃない。ただ、本当にただこの状況に違和感を覚えてるだけだ。それを確認しようと考えを巡らせてるだけなんだ」


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