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2話

 地面に寝っ転がってどれくらいの時間が経ったんだろうか? 俺は一体何をしてるんだ? 寝転がって大地と一つになるとか意味不明すぎるだろ。かれこれ数時間はこの調子で寝そべっている。そろそろ飽きてきた。寝転がったくらいで大地と一つになるはずがないんだよ。こんなことしようとした数時間前の俺に吐き気がする。いくら声がでなくなって焦っていたとしてもこれはないだろ。俺は自分自身のあほさ加減にすさまじく萎えている。これはありえない萎え方だ。このまま大地と一つになってしまいそうだ。俺は何を言ってるんだ。この数時間で俺はどうやら頭をやってしまったらしい。思考が勝手に大地と一つになろうとしている。勝手にそっちの方向へ持っていかれる感覚に戦慄を覚えながらも何とか平常心でいようと俺は耐える。それはもうありえないほどに耐えている。常人であれば、気が狂って自殺しているところだ。残念俺にはこの程度の心理攻撃は効果がないんだよ。日頃からどれだけの誘惑に耐えて生きてきたと思ってるんだ。寝転がっても数時間寝ないでいるなんて俺以外に誰ができるんだ? 俺以外にいないだろ、なぁそうだよなぁ。俺以外にいねぇよなぁ?


「ふぅ、いい加減ずっとこうしてるのにも飽きてきたな……うん……こ、声がでるぞぉぉぉぉーーーー!!」


 何気なく発した声に俺は歓喜のあまり叫んでしまった。

 失ってしまったとばかり思っていた俺の美声はまったく色あせることのない輝きで俺ののどからこぼれおちていた。

 俺はいつから再生能力を手に入れていたんだ。もしかして、俺は気が付かないうちに山の守り神へと進化していたのかもしれない。いや、それしか考えられない。明らかに俺の声帯は死んでいた。そう、完膚なきまでに死んでいた。疑う予知すらないほどもう絶対に死んでいた。あそこから復活するなんてことは不可能なんだ。俺がそう思っていたんだからそうに違いない。そうであってくれ!!


 しかし、なんとまぁ、自分の声がまた聞けるなんて思ってなかった。しかも、簡単に叫べてしまっている。これはもう完全復活したといっても過言ではないな。俺はここに宣言しよう。俺の声帯が、守り神へと進化したことで完全復活を果たしたと。世界中のみんなに俺の声を届けたいという衝動に駆られてしまうが、同じ轍を踏む俺ではない。わざわざ叫ぶ必要なんてないんだ。叫んだところで聞こえる範囲なんて高が知れている。むしろ、この状況だったら誰一人聞こえることはないだろう。それなのに俺は叫んでしまったんだ。なぜか知らないが叫んでしまった。もう、これは溢れる衝動に押し流されたとしか言いようがないだろう。しかし、さっきまでの俺と守り神へと進化した俺では心の耐久値が桁違いだ。それはもう、百倍どころの話ではない。何億何万何千倍の世界だ。さっきまで通用していたからって二度も俺に同じことが通用しないと思ってほしいもんだな。俺に二度も同じ攻撃は通じない。通じないったら通じないんだ。凄い攻撃でもそれはもう通じない。地球が爆発しようが宇宙が爆発しようが爆弾が爆発しようが俺には通じない。なんてったって守り神なんだからな。この程度で死ぬくらいなら俺は神を名乗っていない。名乗る資格があるのは真に神たるものだけだ。つまり、俺のような完全無欠の超絶スーパーマンだけってことだよ。


「はっ、俺にはこのスマホ、そうネットがあるんだよ。無理に叫んだところでネットには勝てない。神である俺ですらこのネットには勝てないんだ。だから、利用しよう……圏外だ……なぜだぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!」


 俺は力の限り叫んでしまった。完璧だと思われたプランが粉々に崩れ去ってしまったんだから当然だ。俺にはこの先の未来まで完璧に見えていたというのに、こんな電波がたたない程度のことで道が閉ざされてしまうなんて思わなかった。まったく思わなかったんだ。どうすればいいんだ。この先の未来はもう俺が決めていたんだぞ。なら、ここからどうにか挽回して同じ未来に至るしかないじゃないか。電波がたたないからってどうってことないだろ、代わりに俺が立ってやるよ。


「はぁぁぁーーー!!」


 俺は寝転がっていた状態から勢いよく立ち上がった。

 この間レイコンマ2秒。すさまじい速さで立ち上がった。これで、俺のスマホの電波も立つだろう。俺に影響されない事象なんてこの世に存在しないんだからな。ハハハハ!!


「なんでだぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!」


 スマホの電波は依然、たっていなかった。

 俺の完璧な起立は無駄だったのか? そんなはずはない。今の俺の起立で立たないものなんてこの世に存在するはずがないんだ。いや、存在していいはずがないんだよ。俺はこの森の守り神だぞ。少なくともこの森でだけは俺が好き勝手できるはずだ。なんで、電波ごときが神である俺に逆らってるんだよ。俺に逆らうってことは覚悟ができているんだろうな。


 ガシャン!!


 俺は持っていたスマホを地面に打ち付け破壊した。


「ふっ、これが俺に逆らったものの末路だ!!」


 10万はした俺のスマホは戦闘不能になった。


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