17話
どれくらいの時間が経ったんだろうか? もうはっきりと覚えていない。少なくとも数日、いや数十日は経っているかもしれないな。それほどまでに俺は今疲労している。
「なぁ、じじい。もうやめてにしとかないか? これ以上続けてもお互いが不幸になるだけだと思うのは俺だけか?」
「うむ、わしもちょうどおぬしと同じ考えに至ったところじゃ。これ以上、醜い争いをするのは流石にやめたほうがいいのでないかとな。もちろん、言葉に出したのはおぬしが先だったかもしれないが、わしのほうが早くその考えに至っておったということを忘れるでないぞ。いや、もうこういうのもやめにしようじゃないか。わしも正直疲れたわい。まさか、おぬしがここまで根性のあるやつだとは思っておらんかったわ」
「そっくりそのまま返してやるよ。じじいがここまで持つとは俺も思ってないかった。数時間で根をあげてそのまま異世界にいけるって思ってたよ。まさか、ここまで引っ張られることになるなんてな。俺のほうこそ衝撃だっての。一体、どれくらいの間しょうもない言い争いを繰り広げていたのか考えたくもない。二人ともあとに引けなくなっていたとはいえ、よくここまでやったもんだ。後々、この体験が俺の経験として生かされるんじゃないかって思ってるくらいだ。間違いなく、とんでもない忍耐力を手に入れたことだけは間違いない。ありがとう、じじい。俺がここまで成長できたのはじじいの存在があってこそだ。俺はまた一歩上のステージへと進化を遂げたようだな」
「お互い様じゃろう。わしも今回のことで精神的にまだまだ成長できるということを発見したんじゃ。おぬしの存在がなければ、わしの成長はここまでで終わっていたじゃろう。まだまだ殻を破れることに気が付かせてくれたのはおぬしなんじゃよ。もうここまで来たら、おぬしとわしは立派なライバルじゃな。これを終えるまでのわしが今の状況をみたら腰を抜かして驚くじゃろうな。まさか、人間をライバルと認めてたたえる何て想像もできないことじゃよ。実際、わしとて神としての自覚とプライドがあったんじゃがな。それもおぬしに粉々にされてしまったわい。今は、お互いの健闘をたたえようではないか」
「ははっ、じじいと俺がライバルか。またこの戦いの決着は俺が魔王討伐を成し遂げてここに戻ってきたときか。本当は今すぐにだって決着をつけてやりたいが……やっぱ今の無し。当分はいいや、こんなことを毎日のように続けてたらいくら何でも精神的に持たないわ。数年に一度くらいでも多いくらいだ。俺が魔王討伐から帰還するまでの間、じじいも成長しているだろうし、次にやる時が楽しみだな。俺も数段成長しているだろうからな。楽しみに待っててくれよ」
「それもこれもおぬしが魔王討伐を無事に成し遂げんと始まらんからな。決して負けるなどということはならんぞ。わしのライバルがわし以外に負けて死んでしまうなんて耐えられんからな。おぬしとこうしてまた相まみえることを楽しみにしておこう。それでは、長くなってしまったがおぬしの転生の儀式を始めるとしようじゃないか。もう準備は万全じゃろうか? 少し休憩していってもいいんじゃよ。わしとて相当疲れておるんじゃ、おぬしだって相当疲れておることじゃろう。その状態で異世界へ放り出すのも正直気が引けるというものじゃ。おぬしが望むのであれば、少し程度じゃったら異世界転生を先送りにして休憩することもできるぞい」
「いや、俺は行くよ。じいさんだって、既に異世界転生の予定を何日も先送りにしてんだろ。これ以上予定を狂わせるわけにはいかねぇよ。俺はじいさんと互角の勝負をした人間なんだぜ? 異世界のモンスター何て相手にもならないっての。この状態だろうが、もっと疲れていようがそれは変わらねぇ。俺は、じいさんとの勝負の日まで負けてやるつもりは一切ないんだ。もちろん、最後にはじじいにも勝ってやるつもりだけどな。じじいこそ、俺が戻ってくるまで誰にも負けるんじゃねぇぞ? 男の約束だ。俺は死んでも守るからな。言い出した俺が守れねぇようじゃ、男として生きていけねぇってもんだ。俺が異世界で一番強い男になって帰ってくるまで待っててくれよ」
「もちろんじゃ。わしだって、おぬしに勝つまでは誰にも負けるつもりはないわい。手初めに、神の中で一番になってやろうじゃないか。おぬしん相手として恥じない存在になっておくつもりじゃ。わしは神で一番になる。おぬしは異世界で一番に。それで再会といこうではないか。いつ以来じゃろうかの、これほどまでに気力で満ちておるのは。わしも若いころを思い出したようじゃ。おぬしのおかげでもうなくしておったと思っておったものを取り戻せたようじゃの」
「いいんだって。俺だって、この年ではたどり着けないような境地までたどり着いたんだ。それに比べれば、昔の気持ちを思い出した程度のことなんてどうってことないって。俺は、まだまだ強くなるからな。俺の成長期はまだ終わってねぇ。これからが、本番だってところを見せてきてやるよ。それじゃあ、始めてくれ。俺はいつでも準備万端だ。待ってろよ、魔王。俺が今からお前を倒しに行ってやる」
「それでは始めるぞい。ふんっ!!」




