15話
「それは言っちゃダメだろ。俺だって悪口なんて一回も言ってねぇんだぞ。じいさんだけ立場を利用してきたねぇっての」
「わしにはおぬしにはない年の功があるからの。そういうものはすべて利用していくのが賢い生き方じゃよ。おぬしにはまだちっとばかし足りておらんようじゃの。まあ、おぬしにはどれだけ歳を重ねても対して立場も利用できるものも生まれないじゃろうがの。そうじゃ、あまりにもおぬし?あかわいそうじゃからわしが、おぬしに肩書を授けようか。おぬしにピッタリなものを用意してやるからの。安心するんじゃ」
どこをどう考えたらこのじじいの言うことを安心して聞いてられるんだよ。どう考えてもろくでもねぇ肩書をよこすだけだ。それなら、むしろないほうがすっきりしてていいだろ。こんなの自分から願い下げだ。じじいから貰ったもんなんて何一つ使いたくないし、俺の役に立つことなんてありえねぇ。
まぁ、万が一にもこのくそじじいが使える肩書をよこす可能性が残されているからな。一応、念のため、そう念のために聞いておくだけの話だ。俺は心優しい男だからな。俺以外だったらもうとっくの昔にキレ散らかして暴れているだろう。じじいも俺という最強の存在を選んできながら文句があるようなことを言っていたし、まったく見る目がないってことは証明されてるんだよな。まったく使えないじじいだ。
「おぬしにはわしの子分の肩書を授けよう。神であるわしのしもべ、もうこの時点で相当な効力があるはずじゃ。無論、わしに逆らうことは許さんぞ。おぬしはわしよりも明確に下の立場じゃからな。もし逆らうようなことがあればその時はおぬしの存在を消滅させてやるからの」
「誰がその肩書をありがとうございますって受け取るって言うんだよ。じいさんの子分? しもべ? どっちにしてもじいさんの言いなりじゃねぇか。そんな都合よく俺のことを動かせるはずないだろ。俺は、異世界を救う存在なんだぞ。魔王だって討伐しちまう程の存在なんだ。それをじいさんの子分なんてしょうもない立場で終わらせようってのがもうおかしいだろ。むしろ俺がじいさんを従えてやるよ。神を従えし者として異世界に転生していくってのはどうだ? 異世界の人達からしたらこれ以上ないわかりやすい肩書なんじゃねぇか? もちろん、じいさんは俺の言うことを聞いてもらうぞ。それが、上下関係ってもんだしな」
「何をたわけたことを言っておるのじゃ。おぬしが上だということ自体ありえんだろう。わしは神じゃぞ? 百歩譲って、わしが下に着くことがあったとしても確実におぬしでは力不足じゃ。まったくもって力が足りておらん。わしは自分よりも何百倍も弱い奴に従うことなんぞできんわ。せめて、わしよりも強くないと話にならんの。まぁ、おぬしにとっては無理難題かもしれんから、諦めてわしの子分として異世界でオラついておればいいじゃ。虎の威を借りる狐とはまさにこのことじゃの。想像するだけで滑稽で笑いが出るわい。おぬしはどうやら、笑いのセンスがあるようじゃぞ。そこだけは誇っていい。神であるわしが保証してやろう。さぁ、存分に誇るのじゃ」
「うるせぇよ。自分で想像して自分で勝手に笑ってんじゃねぇ。俺だってそんな間抜けな真似できるかっての。俺には俺の美学ってもんがあるんだよ。誰かの下につくって言うのは俺の美学に反するんだ。俺だって、自分よりも弱いやつに従うつもりなんてねぇよ。せめて、俺よりも強い奴だったらそりゃ美学を曲げてでも下につくしかないのかもしれないが、じいさんにはそんな魅力は感じないし、力も感じないな。俺を従えるのには役不足だ。もっと、上位の神を用意してしてきてくれよ。こんなじいさんじゃ話にならねぇっての」
「わしを侮辱するか? いいじゃろう。その喧嘩わしが買ってやろうじゃないか。まずは、おぬしに力の差を見せつけてから始めるとしようかの。おぬしがどれだけ、自分の力とわしの力を見余っているかわかることじゃろうな。おぬしは、自分の力と一線を画す強さを持っておるわしの力を認識できんだけじゃ。格が違いすぎるとこういうことが起きてしまうんじゃ。じゃから、一概におぬしだけが悪いとは言い難いの。おぬしでもわかるようなレベルまでわしが力を落とすことができておればこんな無様な勘違いは生まれなかったんじゃ。そこはわしの力不足じゃ。おぬしの力が弱すぎてそこまで落とすことが叶わんかったわい。おぬしが悪いんじゃないぞ。わしが雑魚のおぬしに合わせることができんかったんじゃ。わしがそれさえできておれば、おぬしももっと誠実な態度が取れたかもしれんのにの。すまんのぉ」
「ちげぇから、それはただのじいさんの勘違いだからな。俺の力を正しく把握できていないじいさんこそ俺とレベルが違いすぎるんじゃないのか? どう考えても俺のほうが強いってのにその調子に乗り方はあんまりじゃないか。それくらいのことは理解して喋ってくれよ。それといい加減を俺を異世界へ転生させてくれ」




