12話
「横暴すぎる!! こんなことが許されていいんか? 俺は断固として抗議するぞ!!」
「もういいから、わしの話を聞いてくれないかのぉ。これでは、いつまでたっても話が進まんではないか」
「知ったことかよ。俺の意思は止まらねぇ。誰も俺を止められねぇんだよ!! このまま俺のターンだ!!」
なんで俺はこんなじいさんの言いなりになっていたんだろうか? この爺さんが神だって? そんなこと俺には関係ねぇよ。この爺さんがかみだろうと、神じゃなかろうと俺には一切関係ない。どうせ、俺は異世界とやらに転生させられるんだ。この爺さんともここで会うのが最後、つまり何をしようと後腐れなく分かれることができるってわけだ。言いたい放題いう勇気はねぇが、それこそ結構な暴言を吐くくらいは許されてしかるべきだ。なんてたって俺はこの爺さんのせいでこんなところに連れてこられてるんだからな。本当は今頃、森から脱出して自宅の部屋で優雅に過ごしていたはずの俺の人生を、こともあろうか死んでしまったなどとほざいて俺のことを貶めようとしてるんだからな。俺よりもこの爺さんの方が数倍悪い。凶悪だ。
「これ以上わしになんの文句があるというんじゃよ。おぬしのことは十分に考えてやっておるじゃないか。おぬしは本当じゃったらそのまま死後の世界へ連れていかれているんじゃぞ。それをわしが気を使ってこうして生き返らせてやろうと言っておるのじゃ。感謝しかないじゃろうが」
「俺を生き返らせてくれるのか? それはだって異世界に転生させてくれるって話じゃないか。だったら、生き返ったとは言わないだろ。俺は別人として第二の人生を歩んでいくことになるだけだろ。適当なこと言うなよ」
「一から百まで説明せんとわからんのかのぉ。おぬしを異世界に転生させるということはじゃな。つまり、おぬしをそのまま異世界に送り込むということじゃ。おぬしはおぬしのまま異世界でのセカンドライフを送ることができるんじゃよ。これのどこに不満があるというんじゃ」
「まだだ。俺はまだそんな都合のいい話を信じてないぞ。だって考えてもみろよ、そんなことをしたところでじいさんになんのメリットがあるって言うんだ? どうだ? 答えられないだろう? わかってるんだよ、どうせ俺は都合よく利用されてるだけだってことくらいな」
「ある意味では間違ってはおらんが、決しておぬしばかりに不利な内容ではないぞ。おぬしには異世界に言って魔王を討伐して欲しいんじゃよ。それこそがわしがおぬしを異世界へ転生させる唯一の条件じゃ。これさえ達成すれば、残りの人生をどう生きようがわしが干渉するつもりもない。おぬしの好きなように生きるとよい」
俺が魔王討伐だって? なんだ、その燃えてくる展開は。俺は異世界で魔王と戦わないといけないのか? どんどんやる気が湧いてきた。こんなことだったらごねたりせずにすぐに異世界へ転生してもらうべきだったな。この考えている一分一秒がもったいない。これ以上無駄に時間を使う必要もないだろう。俺はじいさんの美味い話に乗せられて異世界に行こうじゃないか。魔王討伐に行ってきてやるよ。俺の力で魔王だろうが、大魔王だろうがけちょんけちょんにしてやるよ。あわよくば俺の子分にして俺が異世界の魔王を名乗るって言うのも楽しそうだな。
「わかった、俺がその世界とやらに言って魔王を倒してくればいいんだな。でも、待てよ。俺に人並外れた力が備わっているとはいえ、そんな魔王なんて大層なものに勝てるようなレベルではないと思うんだが……そこは大丈夫なのか? 意気揚々と魔王に挑んで返り討ちにされて、第二の人生のまくを閉じることになるなんて笑えない展開はいらないんだぞ」
「そこは安心するがよい。おぬしには今自分自身で言ったように人並外れた力が備わっておるんじゃ。現在の世界ではなんの役にも立たなかった力がその異世界ではとてつもなく強力な者になるんじゃよ。おかげでおぬしは魔王にも対抗できる人類となるというわけじゃな。おぬしのようなものを探し出すのにわしがどれだけ苦労したことか。わしの期待を裏切るんじゃないぞ」
「そう言うことかよ。でも、俺は今までも最高だったけどな。じいさんの目は節穴か。まぁいいだろう。俺が異世界に言って魔王を討伐してくればいいんだな? その力で俺は成し遂げてやるよ。うひゃぁぁーー!! 楽しみだぜ」
「あまりはしゃぐんじゃない。おぬしのそのみっともない姿を見るたびにわしはなんでこんなやつを選んでしまったんじゃと自己嫌悪に陥ってしまうんじゃからな。おぬしは神に選ばれた人間なんじゃそれ相応の振舞いをしてくれ。わしの品位まで下がってしまうじゃろうが」
「それこそ、俺の知ったことかよ。俺は自分の好きなように生きさせてもらうからな。どうせ、俺のことを始末したら魔王討伐が叶わなくなっちまうんだろう? なら、俺も爺さんに対してでかい態度を取ろうが別に問題ないよな?」
「この恩知らずが。忘れておるかもしれんがわしは神じゃぞ。おぬしの変わりなんぞすぐに見つけ出すことができる。精々、わしの機嫌を損ねないようにするんじゃな。とはいっても、もうかなり手遅れのところまで来つつあるぞ。おぬしは異世界に転生したくないようじゃの。おぬしではなくてはならない理由はわしにはないからの。おぬしがそこまで嫌がるんじゃったらわしは止めはせんぞ」
「すいません。ごめんなさい。申し訳ございませんでした。この通りです。どうか、今回ばかりはご容赦願えませんでしょうか?」
謝るに限るぜ。




