第一話 勘当
ぼちぼち書いていきます。
1739年10月14日この日、スペインへの宣戦布告により、イギリスは長い十八世紀の幕が開けた。
そして、同時にパクス・ウォルポリアーナと呼ばれるイギリス首相ロバート・ウォルポールにってもたらされた18年にも及ぶ平和な時代は終焉を迎える事となる。
その数年後の1743年、オーストリア継承戦争でプロイセン王国が頭角を表そうとしている頃、イギリスのとある田舎町に一人の平成を生きた日本人の魂を宿した男の子が生まれた。
その名もジョン・ハワード。
後の英国史いや、世界史に名を残す人物だ。
1754年3月12日 月曜日 イギリス バーミンガム
「ジョン!今日という今日は許さんぞ!」
顔を真っ赤にしながら司祭服を着た父上が怒っていた。
「父上、そんなに顔を赤くされて…熱でもあるのですか?」
「っお前という奴は!主日の聖餐式を抜け出し、隠れてミルクとパンとチーズ、そしてベーコンを食べておったな!」
「それの何が問題なのですか?」
「何度も教えているだろう。聖餐式でパンと葡萄酒をいただく理由を。」
父上は呆れたという表情をしながら言った。
まあ、それは仕方のない事だろう。何せ、父上は俺に聖餐式の意味を何度も何度も教えているのだから。
しかし、聖餐式で食べるパンは穴が沢山空いていて美味しくないし、その他のおかずも出てこないしで、平成の世を生きた俺には苦痛なのだ。
そんな事を考えていると、父上が神妙な顔つきで話し始めた。
「聖餐式を行う、ひいてはパンと葡萄酒をいただく理由をもう一度、教える。これが最後と思い、心して聞きなさい。…私達、いえ全ての人間は生きている間に主に背を向け、主の御心から離れ、自分勝手に生きてしまいます。そうすると、我々と主の間には深い深い溝が出来てしまうのです。そして、そのまま生涯を終えてしまうと我々は地獄へと堕ち、永遠に苦しむでしょう。
では、我々は主に背いた罪を償うにはどうすれば良いのか。償うには、我々は犯した罪の対価を支払わなければならないのです。しかし、そんな我等を主は見離さなかった。主は一人の子を送って下さいました。我等の犯した罪の対価を払うために。その子は、馬小屋で聖母マリアから生まれ、我々の罪の対価を払う為に、我等が受けるべき審判を受け、十字架にかけられ死んだのです。
しかし、彼は復活したのです。罪と死に勝利して。ですから、我々はイエス・キリストという主の愛を信じるなら我々の罪は主に赦され、主と和解することが出来るのです。
そして、我々の罪を代わりに償って下さったイエス様を忘れず感謝し、今も何処かで生きておられるイエス様が我等を救ってくださる事を覚えておく為に、いつかイエス様によって打ち立てられる神の国で、神の家族と見做された(洗礼を受けた)者達で催される大宴会まで、我々は聖餐式でイエス様の血を表す葡萄酒とイエス様のお身体を表すパンを食べなければならないのです。」
「ですが父上、とある神もキリストも信じぬ強盗は死ぬ直前にキリストを信じた事で罪を赦されたそうでは御座いませんか。ならば、私も死ぬ直前にキリストを信じる事で罪を赦されようと思います。」
俺がそう言うと、父上は少しの怒気を孕ませながら口にした。
「ジョン、最後にイエス様を信じれば良いという訳ではないんだ。常日頃からイエス様を信じ、感謝するからこそ意味があるのだ。」
「ですが、結果は変わらず天国へと行けるのでしょう?ならば、やはり私は死ぬ直前に信じる事にします。」
そう言うと父上は深い溜息を吐いた。
そして、険しい表情で俺に告げた。
「ジョン、お前は勘当だ。…司祭として息子を導けなかったことは一生涯の恥だ。」
「そうですか。分かりました。私も今日から教義を守らなく良いのでせいせいします。では、さようなら。」
俺はそう言うと、南の方向へと駆けていった。
1754年3月12日 月曜日 イギリス
家を勘当され早2時間。勢いで家から飛び出して行ってしまったがどうしたものか…。
取り敢えず明日の飯の為に、手に職をつけにゃならんが、バーミンガムみたいな、ど田舎ではまず仕事はない。
まあ、ひとまずロンドンに向かえば何か仕事にありつけるだろう。
しかし、平成の日本の記憶は一切役に立たないな。第一にイギリスの歴史や風土、地理がさっぱり分からん。お陰で教会の図書室でしっかり勉強する羽目になった。普通転生したら、知識チートで無双!というのがセオリーなんだが…。
まあ、俺が大学生の時に日本史専攻だったというのもあるがね。
とはいえ、折角の第二の人生だ。
歴史好きとしては何か歴史に名を残したい。となると、現実的なのは実業家となり、莫大な財を成す事か…。とは言え、事業を起こすにも先立つ物がいる。はあ、結局何をするにも金か…。
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