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ショートショート9月〜4回目

ホラーナイト

作者: たかさば

 とあるテーマパークで、ハロウィンのイベントとしてホラーナイトが開催されることになった。

 仮装OK、ダンスあり、日が沈んでから夜9時までのお楽しみ企画である。


 大人も子供も、男性も女性も、みんなが楽しめるお祭り騒ぎ。いつも以上に入場者が集まり、賑やかに盛り上がっている。


「みてみて、あの子カワイイ!」

「キャー!怖すぎる!」

「写真良いですか?!」

「すごいの来たー!」


 テーマパークが用意したゾンビ、ハロウィンメイクのキャラクターが人気なのはもちろん、仮装して参加している一般客もかなりレベルが高い。


 プロもシロウトも、スタッフもお客さんも…フルパワーでイベントを楽しんでいる。


 おばけ、ミイラ、ゾンビ、宇宙人、ヒーロー、ヴァンパイヤ、狼男、魔法使い、着ぐるみ、お姫様、執事、スーツに着物にマントにドレス…。

 オレンジ色に紫、キラキラ輝くラメ、電飾、蛍光色にパステルカラー、眩しい輝きにやさしい灯り…。

 濁った色、鮮やかな色、パワフルな色、透明感のある色…。


 見ず知らずのもの達が、時にすれ違い、時に向き合い、時に並んで、時に立ち止まり、時に混じり合い…共有する、今という瞬間。


 沸き立ち、集結し、はしゃいだ感情が弾けている。


 なんというパワフル!

 なんというエネルギッシュ!

 なんというパリピ!

 なんというファンタジー!

 なんというフレンドリー!


 ……この、生命力に満ち溢れた空間を…皆が楽しんでいるというのに。


 時折見かける、どんよりとした……疲労感。

 会場の端でくすぶる、重たい……オーラ。


 どうしてこんなにも、空気が読めないのか。

 どうしてこんなにも、場違いな事に気が付かないのか。


 みんなが笑っているのに、仏頂面で。

 みんなが笑っているのに、イライラして。

 みんなが笑っているのに、イビキをかいて。


 なんという恐ろしい……。


 恨みをつのらせていた魂ですら、あんなに弾けているのに。

 憎しみから生まれた化け物ですら、こんなに踊り散らかしているのに。

 悲しみに押しつぶされた幽霊ですら、あんなに歌っているのに。

 策略で凝り固まった宇宙人ですら、こんなにわれを失って盛り上がっているのに。


 ……とんだ興ざめだ。

 楽しめないなら、来なきゃ良いのに。


 あんな顔で同行しても、悪印象しか生まれないのでは?

 こんな態度で参加しても、嫌われるだけなのでは?


 こういうとこだよ、こじらせ傾向の強い魂ってのはホントタチが悪い……。


 つまらない部分に囚われていたら、あっという間に楽しい時間が終わってしまう…よし、スルーだ、スルー!


「ん゛ま゛ぁ~!」

「フヒヒヒヒヒヒ!」

「血ぃスゥたろか♡」

「うらめしやー」

「ギャアアアアアア!」


 みんな、心の底からはしゃいでいる。


「がぶー!」

「ギャ~!食われた!」

「やだー!」

「アハハ!写真とっちゃお!」


 ちょっとくらい本気で噛んでも…バレないハズ。


 小腹が空いたと思っていたんだ。

 ちょうど良かったよ……。


 明日も明後日も、思いっきり楽しむ事を誓った僕は。


 不味そうなつまらない命に背を向けて……、パワフルな渦の中に、紛れ込んだのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「で?あんた誰?」 [気になる点] その日、本当に紛れ込んでそうですね〜笑
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