わるいこと
ぬいぐるみが、どうやって作られるのか、知っていますか?
一つ一つ、丁寧に縫われて、できあがるのです。
そうでないものもあります。
超テキトー! いいかげんに縫って完成! というのではありません。
ぬいぐるみたちが幸せに暮らす、ぬいぐるみの国へ行って、そこで「人間の国へ行きませんか?」と誘います。そうすると、人間の国へ行きたいぬいぐるみが現れます。
「僕、行ってみたいです」
「私も、行きたいな」
そんなぬいぐるみたちが人間の国へ来ます。そして、みんなのおうちで一緒に生活するのです。
ここで大事なのは、ぬいぐるみたちが自分で考え、自分の意志で人間の国へやって来ることです。無理やり連れて来られるのではありません。嫌がっているぬいぐるみを連れて来るのは、拉致や誘拐という犯罪で、とても悪いことなのです。
そんな悪いことを企む悪漢がいました。ぬいぐるみを刃物でおどして、人間の国へ連れて来ようと考えたのです。かわいいぬいぐるみなら、高く売れると計算したのでした。
ぬいぐるみの国へやって来た悪漢は、物陰に隠れ、あたりの様子をうかがいます。
「さあ、準備はできたぞ。早くぬいぐるみが通りかからないかなあ」
やがてクマとイヌとネコとウサギとキリンのぬいぐるみが通りかかりました。
「数が多いけど、まあいいか」
悪漢は物陰から姿を現します。お腹を手でおさえ苦しそうな顔をしながら、道に迷ったふりをして、ぬいぐるみたちに話しかけました。
「お腹が痛くてトイレに行きたいのだけれど、場所がわからないんだ。みんな、案内してくれないか」
お腹が痛いというのは嘘です。そう言って、ぬいぐるみたちを人目につかない物陰に連れて行き、そこで刃物を出して、おどすつもりなのです。
ぬいぐるみたちは、だまされませんでした。
「そう言って、ぬいぐるみを誘拐しようとする悪い人間がいると聞いています。お腹が痛いのなら、ここで用を足してください」
悪漢は困りました。
「いや、ここでトイレをするのは、ちょっと恥ずかしいな」
ぬいぐるみたちは口々に言います。
「気にしないでください」
「どんどんやって!」
「漏らしてもいいですよ」
「恥ずかしがらずに、じゃんじゃん出してね」
「みんなで手伝ってあげますよ」
そう言うが早いか、ぬいぐるみたちは悪漢の服を脱がし始めました。隠していた刃物が落ちます。それを見て、ぬいぐるみたちは叫びました。
「こいつ、刃物を持っているぞ!」
ぬいぐるみたちは持っていた防犯ブザーを鳴らしました。ものすごい音です。それを聞きつけ、ぬいぐるみのおまわりさんがやって来ました。丸裸の悪漢は、刃物を持った変質者として現行犯逮捕され牢獄へ入れられました。良い子になるまで、牢屋から出られません。
このお話を読んでいる、悪漢や誘拐犯それから変質者のみんな!
悪いことをすると、一生刑務所から出られないかもしれないから、絶対にやっちゃだめだよ。