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また明日、ここで  作者: 夏みかん
第4話
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7vs7-後編-

絶望的で圧倒的な威力を持つスキルの保持時間は終了し、ボロノーグのステータスは全て元に戻った。スキルによって半分に減った体力の状態で削ぎ落されたそれは、元に戻っても残り3分の1程度の状態になっていた。アバロン側は残り時間24分で残るその体力を削ぎ落せば勝利となる。対するペッパーズは残り3分の2近くを残している状態であった。戦力差もある中でこれはもう致命的だ。今のペッパーズでは残り時間に全力を注いでギリギリ倒せる状態なのだから。そんな絶望的な状況の中にあっても全員が攻める姿勢を崩さない。そんなペッパーズの心境を考えてほくそ笑むのはアバロンのマスター、セルバンテスだ。このままいけばあと10分ほどで勝利となるだろう。自分は攻撃もそこそこに仲間に任せ、高みの見物といった感じでいるのだった。


「これは序章だよロストワン・・・お前から全てを奪う。このワールドでの地位と名誉も、現実での恋人も、なにもかもをだ」


ペッパーズを解散に追い込み、その絶望と私怨を持ってソロ対決に持ち込ませればいかにロストワンでも精神的弱さを露呈させることは目に見えているし、そうなれば十分に勝機はある。この戦いで仲間を失い、恋人を失う。その喪失感の中で恨みに燃えた乱れた心では満足に戦えないだろう。ロストワンの強さはその冷静さ、分析能力といった俯瞰的に物事を見極める能力だと理解しているセルバンテスにしてみれば、それを奪えば勝てると思っていた。ジゴマも攻撃をそこそこに勝利を確信していた。そんなジゴマがエリアの出入り口付近に顔を向けたのを見たセルバンテスもまたそっちを見れば、そこにいたのは息を切らせて立つミラージュの姿だった。妨害に来る暇があれば攻撃に加担すればいいのに、無駄なあがきをするものだと苦笑が漏れる。


「戻って戦った方がいいぞ・・・お前ごときの妨害で戦況がくつがるとは思えんよ」


そう言うセルバンテスに向かって歩み寄るミラージュに妨害の意思が感じられない。それを怪訝に思うセルバンテスとジゴマであったが、今はその動きを静観することにしていた。何をするにしても無駄だとばかりに。


「何の用だ?」


すぐ目の前までやってきた自分に対してそう言うセルバンテスの睨むような視線を受けても平然としているミラージュは小さな笑みを浮かべてさらにセルバンテスに近づいた。


「見せてくれるんじゃないの?あなたのカッコイイところを・・・・すぐるさん」


その言葉に明らかに動揺するセルバンテスを見やるジゴマには今の言葉は聞こえていない。しかしただならぬ空気を感じて近づこうとした矢先、ボロノーグが暴れ狂うように怒りだし、周囲への攻撃の手を強めていく。仕方なく対処するジゴマをよそに、離れた場所にいる2人はそのまま会話を続けていた。


「今のところ、いいところを見せてくれていたのはジゴマの方よ、がっかりさせないで」

「まさか・・・君が樹理亜さん?リライじゃ?」

「あぁ、リライはリアルで親友でね、それでつい話しちゃったのよ・・・でも安心して、ロストワンもリライも、私が樹理亜だとは知らないから」


平然と嘘を言い、ミラージュは妖艶に微笑んだ。まるで樹理亜とは別人だが、アバターとはそういうものだと理解している。そういう性格設定も出来るのがこのEDENの凄いところだ。現在のテクノロジーで果たしてそこまで出来るものなのか疑問が多いが、それがEDENだというのが普通の感覚になっていた。


「別にチームの足を引っ張ることはしない・・・私はペッパーズが好きだからね」

「じゃぁなんで・・・ロストワンの彼女だから、だからペッパーズに?」

「それは偶然、と言えば嘘になるわね。知ってて入った。彼のことをもっと知りたくて、正体を隠してね」

「・・・・なるほど」

「この勝負を受けた時点でこうなることはわかっていた。面白そうだから煽ったのよ」

「それで、俺にどうしろと?まさか負けてくれと?」


訝しむような視線を受けても平然としているミラージュは一旦戦闘をしているアバロンの面々を見やり、それからため息をついてセルバンテスに顔を戻す。そしてその愛らしい唇をそっと耳元に寄せた。いい香りがする、ような気がする。さすがに嗅覚が働くことはない。それに関しては現在開発中とのことで、10年経った今でも試行錯誤を重ねている、ということだった。性的な利用を制限する意味でも慎重になっていると言える。このEDENにおいてはそういう行為は一切禁じられているからだ。キスでさえ、した途端に強制ログアウトされて、以降のログインは制限されてしまう。


「さっき言った通りよ・・・・カッコイイところ、見せてって言ってるの。活躍して欲しいのよ・・・後々のことを考えても、ね」


その言葉の意味を理解するのに数秒を要したが、セルバンテスの顔に不敵な笑みが浮かんだ。


「今のままじゃ、ジゴマのおかげで勝てたってなるわよ?あなたのギルドなのに、ね」

「そうだな、そうだ・・・・俺がセルバンテスだ・・・見てな!」

「がんばってよね、他の誰よりも」


その言葉を受けて、雄たけびをあげながらボロノーグに向かって勢いよく走るセルバンテスを見ながら侮蔑の表情を浮かべたミラージュはひらひらと片手を振ると自陣に戻るべく駆けだした。


「ばぁーか」


そうつぶやきを残して。



苦戦を強いられているのは分かっている。それでもリライとロストワンの本気はすさまじく、ボロノーグの体力は目に見えて減っている状態だ。相手ギルドのボロノーグの残り体力はこちらからは不明だが、ジゴマのスキル発動は確認済みのため差があるのは理解している。だからこその猛攻だ。勝てる見込みがあるならば絶望はしない、それがペッパーズなのだから。


「あと半分!」


普段はわからない自陣モンスターの体力がこの7vs7に限定してゲージとなって分かるようになっている。いわば特殊仕様となっていた。だからこそやる気も出るし、反対に削がれもする。離脱していたミラージュも戻り、7人での総攻撃となった。


「で、どうだった?」

「空回りはしてくれそうな感じだけど・・・・このままじゃ時間の問題かもね」


珍しく後方支援に徹するミラージュの言葉を聞いて渋い顔をするムジの横でアシュリーは苦い顔をしてみせた。残り時間は17分、普通にしていれば残り時間が3分になったぐらいで倒せそうな感じだ。だがその前に決着はつくだろう。これは早さを競うもの、つまり、どちらかのギルドがボロノーグを倒した時点で終了となるのだから。勝ち目はない、その焦燥感を抑え込むのがやっとの状態だった。無我夢中で攻撃するムジにも焦りがありありだ。おそらく近くで攻撃している4人も同じ気持ちだろう。だからといって攻撃の手は一切休めていないが。


「やるだけのことをするまで!」


ミラージュの言葉に奮起したのか、ムジが珍しく雄たけびを上げる。


「私にもスキルがあれば・・・・あとレベル18で200だったのに・・・」


ここ最近はソロで頑張っていたムジのレベルは282となっていた。なんとか今日までにスキルを取得したいと考えての行動だったが、間に合わなかった。それでもその頑張りはメンバーに届いている。この勝負を受けるようなことを言った自分へのけじめとしての行動だったが、これでは意味がない。


「・・・・スキル、か」


呟くアシュリーが攻撃しながらも自分のスキルについて考える。そして頭部に攻撃を集中しているロストワンを見やった。ギルドが解散になればEDENでこうして一緒にいられる時間は少なくなるだろう。それでも他のメンバーに比べれば家でも学校でも一緒にいられる。それでも自分にとって兄との繋がりは何であれ常に保っていたい。


「僕、ちょっと行ってくる!」


そう言い、アシュリーがエリアの出入り口に向かって走った。おそらくもうそんなに時間的猶予はないはずだ。アシュリーの名を叫ぶムジとミラージュの声を聞いたロストワンがそっちを見れば、エリアから姿を消すアシュリーの姿が見えた。


「あいつ、一体・・・」

「絶望して逃げるタイプじゃないよね?」


近くいたザナドゥの言葉に返事をしなかったロストワンだが、それは誰よりも理解している。何か策でもあるのかと思うが、今はそれを考えている暇はなかった。ただひたすらに攻撃するのみだ。


「あの子・・・・」


リライもアシュリーの行動を理解出来ないが、今となっては好きにさせるしかない。兄と一緒にいるためには手段を選ばない恐ろしい思考をしているアシュリーのことだ、やけくそになっているとも思えなかった。自分の知る明日海は狡猾で策士で、そして最強のブラコンなのだから。


「信じるよ、あんたを」


そう言い、咬みつきにきたボロノーグのその咢をかわしたリライの黄金の槍の先がボロノーグの片目を貫いた。これはかなりのダメージとなったが、逆に怒りモードに突入してしまい、より暴れ狂うようになった。だがこれは体力を失いつつある証拠でもある。だから全員がダメージに気を付けつつも攻撃を続けるのだった。



残り体力もあとわずかというところまで順調に来ていたが、それを削ぐペースが落ちていた。ジゴマはため息をつき、一旦攻撃を中断する。ミラージュとの邂逅以降、セルバンテスがやたらと張り切って仲間の攻撃を邪魔するような形で前に前に出るせいで効率が落ちている。見せ場を作ろうとチームワークを乱しているのだ。それは見ているギャラリーからも不評のようで、何を言ったかまではわからないものの、ミラージュの策士ぶりが強調された状態となっていた。暴走する自分に気付かず、ギャラリーのブーイングも届かないセルバンテスがボロノーグに吹き飛ばされつつも果敢に攻撃する中、それにさえ酔いしれている自分がいる。やれやれとため息をつきつつも勝利まであと少しと迫ったことでほくそ笑むジゴマはこれで総合ランキング3位が目の前にぶら下がったことを頭に描いた。元々名声を手に入れるためにハンターワールドに来たわけではない。ただ純粋に臨場感ある迫力のハンターバトルを体験するためだ。だがレベル300になってこのスキルを得てからその考えが変わった。これさえあれば上位などすぐに到達できると考え、実際にそうなっている。ならば欲が出るのも当然で、今ではランキング1位となって有名になりたい、金持ちになりたいという気持ちしかなかった。この7vs7でペッパーズ、しかも2位のリライの加勢もあってのペッパーズを倒せばさらに有名になるし、セルバンテスがロストワンとソロ対決に勝とうが負けようが自分がセルバンテスに勝てばいいだけのこと。当然勝てるとも思っている。


「ん?」


あとはロストワンとリライをどう失脚させるかを考えていた矢先、エリアに飛び込んできたアシュリーを見やったジゴマは今のこの状況でここに来た意味を測りかねていた。あがくならここでの妨害など意味はないはずだ。だからこそ不気味だが、警戒するほどでもない。ボロノーグの体力はもう消える寸前で、それこそあと2分程度で決着がつくだろう。そのアシュリーは瀕死の状態になっているボロノーグを見つつ、どうせならダメ元でやっておきたいことがあったためにここに来たのだと及び腰になりつつある自分を奮い立たせた。


「やってやる!多分出来るはず!この7vs7なら、きっと!」


声に出して自分を奮起させ、そして大きく深呼吸をしてからキッと前を睨んだ。そこにいるのはセルバンテスとギルモアだ。果敢に攻めるギルモアの邪魔をしているようにしか見えず、ただ闇雲に攻撃するセルバンテスに仲間も動揺している姿がどこか滑稽だ。そんなギルモアに対して左手を向ける。その仕草を見たジゴマの胸に嫌な予感が走った。


「スティール、ギルモア!」


叫びと同時にギルモアの身体が一瞬銀色の光に包まれ、その光が矢となってアシュリーの左手に吸い込まれるようになると、そのままアシュリーの左手は銀色の光をまとっていた。ますます湧き上がる嫌な予感にジゴマがアシュリーに向かって駆けた。ボロノーグは瀕死とはいえ、念には念をだ。


「スティール、セルバンテス!」


セルバンテスに向けた右手に向かって今度は金色の光が矢となって飛び、そのまま金色の光が右手に宿る。そのまま、アシュリーは両手を重ねて握るようにしてみせた。


「ユナイト!」


金と銀の光が混ざり合い、青白いぼんやりとした光に変化した。その不気味さにジゴマの嫌な予感は最大になっていた。何をする気はわからないが阻止する必要がある、それだけが頭の中にあった。


「させるか!」


腰の剣を抜いてアシュリーを吹き飛ばし、アシュリーは地面を転がったものの、勿論ダメージも何もない。舌打ちをするジゴマがアシュリーを抑え込もうと迫る。だがその前にアシュリーは弓を引くような手の動きを見せ、そこに青白い光の矢を出現させた。地面に転がったまま、狙いを定める。そう、目標はボロノーグだ。


「何をする気だぁぁ!」


叫ぶジゴマが妨害しようと手を伸ばすのと引き絞った手から光の矢が放たれるのは同時だった。一か八かのその一撃を追う視線はアシュリーとジゴマだ。その光の矢はセルバンテスの横をすり抜け、ボロノーグの巨体に当たってはじけて消えた。てっきり矢が刺さるのか、または何か起こるのかと思っていたジゴマだったが、結局ボロノーグに変化はない。それどころか立ち上がって大きく首を天に向けて咆哮しているほどだ。


「ん?」


変化がない、わけではない。いや、明らかに変化している。傷ついて血を流していた巨体にはその痕すらなく、ボロボロになっていた翼も綺麗に元通りになっているではないか。力強く地面を踏みしめるその足も、勢いよく地面を叩くその尾もまた傷がない状態になっていた。


「なんだ!」


近くにいたアバロンのメンバーを強力なブレスで焼き払い、大ダメージを与える。戦闘不能になりかけたメンバーがあわてて回復を試みる中、セルバンテスが余裕の表情でメンバーを見やった。


「俺がリセットしてやる」


高らかにそう言い放ち、右手を瀕死のメンバーたちに向けた。だが何も起こらない。どんなにスキルの発動を促そうとも無駄に終わった。


「どういうことだ?」


スキルは発動させていないため、まだ使用可能ははずだ。うろたえるセルバンテスに尾の一撃を喰らわせたボロノーグが巨大な翼をはためかせて空中に浮きあがった。


「え?」


地面を転がりダメージを受けたセルバンテスが見たもの、それは体力ゲージが完全に回復したボロノーグがその巨大な足で踏みつけに来る光景だった。あわてて逃げるがダメージのせいか動きが鈍い。それでも何とか逃げたセルバンテスは逃げ惑うメンバーを見つつも混乱する頭を整理出来ないでいた。



ギャラリーたちも困惑の表情を浮かべ、何が起きたのかを理解できずにいた。画面の端にいたアシュリーの動きに注目していた者は少ない。だが、その者たちは皆、アシュリーから放たれる青白い光を見ていた。それはボロノーグの強靭な鱗に弾かれて不発に終わったはず。なのにその直後、ボロノーグのダメージは完全回復してしまったのだ。プレイヤーの傷を回復させることは出来てもモンスターの体力を回復させることなど不可能なはずだ。だからこそ画面に表示されたその現象を説明出来る者はいなかった。それが出来たのはアシュリーの傍にいたジゴマだけだ。わなわなと震えるジゴマは表情のない仮面の下で怒りに燃える顔となっていた。


「スティール・・・・貴様は任意の者からスキルを奪い、それを融合させて・・・・」

「スティール&ユナイト、それが僕のスキルさ。まさかこんなに上手くいくとは思わなかったけどね・・・・でも一か八かだった・・・この7vs7は相手ギルドの妨害が可能な特殊な設定になっている。だったら、それはモンスターにも有効なのかもってね」


ニヤリと笑うアシュリーに怒りを露わにしたジゴマがその身体を蹴りつける。だが痛みを感じないためにただ転がっただけだ。だからアシュリーは微笑んだ。こんなに上手くいくとは思ってもいなかったからだ。元々は仲間を救うために使うはずだったこのスキルを相手のモンスターに使うことになったのだから。それもこれも完全に体力回復やステータス異常などをリセット出来るセルバンテスのスキルと、あらゆる効果を倍に出来るギルモアのスキルを融合する事で確実にボロノーグの体力をリセット出来ると考えての行動だった。敵を妨害出来るこの戦いならばもしかしてと思っての行動がいい方向に働いた結果だ。


「さぁ、残り時間で倒せるかな?」


そう言って笑みを濃くしたアシュリーを睨むジゴマだが、アシュリーにしてみれば怒りのオーラは感じるものの無表情でしかないその仮面は怖くなかった。ゆっくりと立ち上がったアシュリーは暴れ狂うボロノーグに苦戦するアバロンの面々を見つつジゴマへと顔を向けた。


「ロストワンには心強い味方がいる。でも、セルバンテスには、アバロンにはそれがないんだ。愛がないんだよ、強い強い愛が」

「愛だと?」

「そう、一途な愛がね」


そう言い、走り去るアシュリーを追うことをせずにボロノーグを見やるジゴマは敗北を悟り、その場でギュッと強く拳を握りしめる。


「アシュリー・・・・!」


怒りの声でそう呟き、ジゴマは暴れまくるボロノーグを見つめることしかできないのだった。



敵の勝利を告げる時間になっているはずだが、未だに勝敗は決していない。それを気にしつつも猛攻を続けるロストワンたちペッパーズの面々は弱点である頭部をボロボロにされたボロノーグを追い詰めつつあった。あと少しでボロノーグを倒せるとことまで来ているが、残り時間は7分だ。そうしているとアシュリーが戻ってくる。無事に戻ったことにホッとするロストワンには気づかず、ムジとミラージュがいる岩陰に向かったアシュリーは武器を調整しつつにこやかな笑みを2人に浮かべて見せた。


「向こうはもう終わり!ボロノーグの体力は全快したから、今から全部やり直しだからさ」

「え?それってどういうこと?」


矢を装填したアシュリーが岩陰から巨大な翼を狙って撃ち、ムとミラージュはそれぞれ喉元を狙って矢を放った。そうしながらもアシュリーの言葉に疑問を投げる余裕がある。


「僕のスキルが役に立ったってことさ!全てのステータスをリセットするセルバンテスのスキルと効果を倍にするギルモアのスキルを盗んで融合させて、それをボロノーグに放ったら効いちゃったんだよ」

「そんなこと、出来たの?」

「だって、普通さ、モンスターを回復させようなんて思わないでしょ?それに効果があるとも思えない。でも今回は特別じゃない?妨害の一環として、まぁ、一か八かだったけど、効果あった」


満面の笑みを浮かべつつ攻撃を続けるアシュリーの説明に鳥肌を立てつつ、今回ばかりは前に出ないと決めているミラージュが攻撃を頭部に変更した。


「とんでもない効果だね」


無表情なムジだが、その声色は上ずっている。表情に出ないだけで興奮しているようだ。


「でもギリギリだったんだよ、向こうのボロノーグ、瀕死だったからさ・・・思いついて実行する前に倒されなくて良かったよ、ホント・・・セルバンテスが暴走してくれたおかげ」

「やっぱ暴走してた?」


嬉しそうにそう返すミラージュにアシュリーも笑みが濃くなる。そのためにロストワンを巻き込んで芝居までさせてパーティに参加したのだから。いいカッコをしたくて暴走した挙句に相手にスキルを奪われて使われる隙を与えたのだから馬鹿丸出しだ。


「だから全力であいつを倒せばいい」

「りょ~ぅかい!」

「うん」


ボロノーグの傍で近接戦闘をしている4人にそれを伝える必要などない。終わってからゆっくりと話せばいいのだから。そして7人による総攻撃が続いて2分後、ついにボロノーグはその甲高い咆哮とともに地面に倒れこんで動かなくなった。同時にフィールド上空にペッパーズの勝利を報じる文字が浮かんだのだった。



歓声と悲鳴が渦巻く中、怒声も交じってギャラリーたちは騒然となって騒いでいた。まさかの展開に湧くエントリーの片隅でホッとした表情を浮かべたマッキーはモニターに映し出されている勝利ギルドの名に感動していた。あの土壇場でのアシュリーの一撃がこの結果を招いたのだ。間違いなく彼がMVPであろう。いや、もう1人、そのMVPを演出したといっても過言ではないセルバンテスもまたそれに近い存在だ。彼の独りよがりな暴走がなければアシュリーのスキルは発動せず、その前に勝負は決していたからだ。


「戦略と運と・・・・いや、全てが味方した結果だったね、おめでとう」


一時期は夢中でソロプレイをしていたマッキーにとってギルドは足かせだと思っていた。そんな自分が一緒にプレイをしたい、出来ればギルドに入って楽しみたいと思っている。きっとこの対決に感動した者は多かったはずだ。それに、ロストワンとリライがいても勝つ見込みがなかった中で、それでもあがいて勝利を掴んだのだ、この勝利はハンターワールドの歴史に刻まれるものになったと確信できる。今回はリライの参戦で自分の出番がなかったが、それはこれからになる。祝勝会の準備を進める、それがマッキーに残された大きな役目になった。



クエストから戻った6人を多くのギャラリーが囲む。もみくちゃにされたせいかどうかはわからないが、そこにリライの姿はなかった。ロストワンはすぐに消えたリライに今度きちんとお礼を言おうと決め、事情を知っているアシュリーにしれみればあわてて現実世界に戻ったのだと理解していた。何せ部活の顧問が生徒を無視してEDENに来ているなど大問題なのだから。無事だといいと思いつつも今は勝利の余韻に浸っていたい。そんな6人に向かって人だかりを押し退けてやって来たのはセルバンテスとジゴマだった。その怒りに満ちた表情に押されてか、周囲が静かになって人の壁が出来上がった。


「運がよかったな、ロストワン。これはまぐれの勝利だ」

「でもまぁ、勝ちは勝ちだ、俺たちのな」


その言葉にセルバンテスのこめかみに複数の青筋が浮かんだ。こんなものまで再現できるのかと感心するザナドゥの横に立つアシュリーに向かって来たのはジゴマだった。無表情で簡素な仮面の下は怒りと屈辱の表情をしているものの、誰にもそれは伝わらない。アシュリーは目の前に立つジゴマを平然と見つつ腕組みをしてみせた。


「お前のスキルに負けた・・・・敗因はそれだけだった」

「そうだね」

「こんな敗北は認めたくないが、それでも負けは負けだ、認めるしかない」

「ジゴマ!」


思わぬ言葉に声を荒げたのはセルバンテスだ。そんなセルバンテスへと顔を向けたジゴマは仮面の下の口元に誰にも見えない嫌な笑みを浮かべて見せた。


「負けだろ?実際に負けた・・・たった1つのスキルにな。だがそれもまた勝負だ、もうどうでもいい、終わったことだしなぁ」

「悔しくないのか?」

「悔しいさ、それに、俺が上にのし上がる機会も遠のいた。だが、3位は近いと確信したよ」

「あぁ?」


ここで睨み合うセルバンテスとジゴマを見つつ、ブレイズは横に立つミラージュを見ずに声をかけた。


「いいのか?あいつに本心を明かさなくて」

「明かさない・・・・その方が面白いしね」

「性悪女だなぁ」


苦笑するブレイズに笑みを返すが視線は合わさない。そんなミラージュに向かってにこやかな笑みを浮かべたセルバンテスが近づいて来た。どうやらジゴマとは早々に決別したようで、そのジゴマの姿はもうない。ロストワンはミラージュの動向に注目し、アシュリーはムジと並んでその様子を見つめていた。ザナドゥはあまりその辺は理解していないのでただ眺めているだけだ。


「あなたとはまたゆっくりとお話したい」

「ええ、リアルで、ならね」

「では、また」

「そうね」


作った笑顔とは思えないその顔を見て女は怖いと思うブレイズと、それを額面通りに真に受けて満足そうなセルバンテスの何と対照的なことか。軽い挨拶だと思ったザナドゥとは違い、その意味ありげなやりとりに興味を惹かれつつもこのまま大好きな兄が嘘の恋人を演じ続けることになるのではないかと不安になるアシュリーはその辺りをミラージュに問いただそうと考えるのだった。



劇的な勝利の翌日、6人はまたマッキーこと森の店に集まって簡単な祝勝会を開いていた。役には立てなかったと大盤振る舞いをしてくれる森に全員が感謝し、昨日の7vs7について盛り上がる。


「いやぁ、しかし見事だったね、アシュリーのあのスキルの使い方」

「でしょう?自分でももうヤになっちゃうくらいのお見事さ」

「でも7vs7だからこそ、だよね」

「普段されたんじゃたまったもんじゃないけど、まぁ、しないだろうし、できないだろうし」


太陽の賞賛を受けて調子に乗る明日海に対し、どこか厳しい目を向ける小枝子と千佳の言葉がツボにはまる樹理亜。そんな面々を見つつ勝てて本当に良かったと思う遊馬はやはりこギルドを気に入っていると心から思うのだった。


「結局さ、あれからリライとは?」


遊馬は現実世界に戻ってからもそれを気にかけて明日海にコンタクトを取るように要請していたが、今現在でも応答はないようだった。本当は無事に合宿所に戻り、事なきを得たという返事はもらっているが、それを明かすわけにはいかない。リライの正体は秘密なのだから。


「繋がんない」


そうとだけ答えた明日海は今度きちんとお礼はしておこうと考えている。そうして祝勝会は盛り上がり、話はアバロンの事についてに移行していた。ギルドの存亡を賭けた戦いに敗れたアバロンは当然解散になるはずだが、どうもセルバンテスにその意思はないようで批判を浴びている。ハンターワールドの掲示板だけでなく、EDEN内の各ワールド及び共通の掲示板、果てはインターネットに乱立するEDEN以外の様々な掲示板においてもそれが話題になっている中、セルバンテス自身が解散の意思はないと告げて炎上していた。


「まぁ、でも解散するでしょうね」


優雅にアイスレモンティーを口に運びつつそう言う樹理亜を不思議そうに見るのは千佳と小枝子だ。明日海はまだ樹理亜を警戒している。そんな女性たちの反応を見つつ黙ったままの太陽に対し、遊馬が樹理亜の言葉に疑問を投げた。


「しないんじゃない?ああまではっきり言いきったわけだし」

「絶賛炎上中だもんね・・・あいつ意地になって解散しないと思う」


遊馬の言葉に同意したのは千佳。そんな2人を見つつストローから口を離した樹理亜は小さく微笑むとそっとコップを置いた。さすがお嬢様というべき優雅な手つきで。それも気に入らない明日海だが、こういう女性らしさは自分にも必要だと感じていることは確かだ。遊馬とのことだけあるだけに今は気にいらないだけで、明日海自身は樹理亜という人間を好いていた。さっさと嘘の恋人関係を解消してセルバンテスに真実を明かして欲しいだけだ。


「逆よ・・・あいつは承認欲求の塊、自己顕示欲の権化、そんなヤツはあの煽りを受けてきっと暴走して、最後にはじゃぁ解散してやるよ!ってなるのがオチね」

「・・・・ありそう」

「かも」


筋の通った説明に明日海も千佳も納得するし、その光景が目に浮かぶ。だからこそ彼らは7vs7に敗れたのだから。


「これからもリアルでもおちょくって破滅させてやろうって思ってる」

「おいおい・・・」


本当にやりかねないその言葉に太陽が言葉を失くす。そんな樹理亜にずいっと迫った明日海を見て騒ぎなるかと懸念する遊馬の動きを制したのはその太陽だ。さすがに大人の男だけあってこういう時の洞察力と冷静さはさすがと言えよう。いや、楽しんでいる方が大きいのかもしれないが。


「お兄ちゃんとの恋人関係はどうすんの?」

「解消でいいんじゃないかな?別れたんだけど、っていろいろ攻め方も変えられるし、一層馬鹿に出来そうだし、面白そうだし、マスター、いいよね?」

「まぁ、いいけど、社長にも上手く言ってくれるなら」

「大丈夫だと思うよ、そこは・・・・逆に喜んじゃうと思うし」


あっけらかんとそう言う樹理亜に不安しかない遊馬に対し、超ご機嫌になった明日海は追加でアップルパイを注文する。


「アシュリーってさロストワンが本気で好きなの?」


そっとそう耳打ちする小枝子に対して頷く明日海はアップルジュースを飲み干してから小枝子の耳元に口を寄せた。


「前にも言ったでしょ?本気なの、お兄ちゃんに。私は何があっても、どんな手を使ってでもお兄ちゃんと結婚する」

「ロストワンがあなたを好きじゃなくても?他の誰かを好きでも?」

「奪うだけ」

「・・・・・・すごいね」

「ムジがお兄ちゃんを好きでも構わないし付き合ってもいい。でも、そうはさせないようにするだけだよ。相手が誰であっても、ね。私のものにするだけ」


そんな怖い内緒話をしている2人を見つつ、視線を樹理亜と会話する太陽に向ける千佳。そんな千佳を見やった遊馬が席を移動してその隣に座った。


「こないだの話、ここでするけど、いい?」

「お?乗り気?」

「今回のバトルで改めて思ったんだよ、俺はこのギルドが好きだって」

「さっすが!じゃぁ私からするね」


嬉々としてそう言い、おもむろに立ち上がった千佳が全員の注目を集める。さすがに千佳には無警戒だった明日海も隣に座ってにこやかにしている遊馬に対しての視線がきつくなっていた。


「あのさ、もうすぐ夏休みでしょ?合宿しない?」


その提案に明日海は諸手を挙げて賛成と叫び、樹理亜と太陽が顔を見合わせる。合宿といっても何をするのか分からないからだ。だから小枝子は少々戸惑った表情を浮かべつつにこやかにしている遊馬を見つめていた。自分も遊馬を好きだという感覚に気付きつつある。だが、他人との接触を避けてきた小枝子にしてみれば、恋という感覚が今一つよくわからないのもまた事実であった。


「やりたーい!」


叫ぶ明日海に対し、小枝子もそっと手を挙げた。


「私も、いいかなって思う」

「でしょでしょ?やっぱそうなると海っしょ?」

「川とかでもいいなぁ、あとやっぱBBQゥ!」

「それはもう当たり前」


盛り上がる明日海と千佳の言葉に苦笑し、それから太陽が2人を制するような手の動きを見せて落ち着かせた。


「海ならうちの会社の所有する施設がある。けど・・・場所がちょっとなぁ、関西だしなぁ」

「それなら私の家の別荘にする?プライベートビーチもあるし、そう遠くもない。車で2時間程度」


平然と別荘という言葉を使う樹理亜に全員が注目する。不動産開発会社のご令嬢なのだ、そういうのもあって当然だと思うものの、庶民との違いに愕然となる千佳。


「いいの?」

「いいよ」


誰にも確認せずにそう言いきった樹理亜に対し、明日海と千佳は手を取り合って大喜びをする。そんな2人から遊馬に視線を移した小枝子は嬉しそうにしている彼を見て少々胸が高鳴るのを感じていた。これが恋なのかはわからない。でも、確かめたい。明日海は好きになってもいいと言っていた。なら、好きになるぐらいなら問題ないと思う。


「じゃぁ、日程をどうするか、だね」


太陽が取り纏めをし、日程と役割、予算などを検討に入り、祝勝会は大いに盛り上がっていくのだった



無事に合宿を終えてホッとする来美は怒涛の日程を終えた充実感とペッパーズの存続が決まったことの安堵感からか、家に帰るとすぐに眠ってしまった。おかげで十分な睡眠を取ることは出来たが、さすがに疲れは取れずにログインをする気になれなかった。あの7vs7はほとんど負け状態だった中、アシュリーの奇跡的な機転がなければ敗北していたのは間違いない。役には立てなかったという思いが強くなる中、自分もまたああいうギルドを結成したいという欲求も大きくなっていた。大学時代、ろくに勉強せずにハンターワールドに入り浸った生活をしていたせいで総合ランキング2位にまで成り上がり、喜びも束の間、単位と就職活動に難儀しつつもこうして教員になれた経緯がある。だからこそ今はハンターワールドでは細々と楽しんでいる状態にあった。それでもランキング2位を維持できているのはたまのログインながらレアモンスターばかりを倒している結果だ。そういうモンスターを狩ることしか張り合いが無くなっている現状を嘆いていることもその心境に大きな影響を与えていた。そう、かつてのロストワンのように。


「どうせなら、素人ばかりを集めて成り上りたいなぁ」


素人同然のメンバーが多いペッパーズはその団結力でアバロンに勝利した。それはとても羨ましいことだ。出来るなら自分もそんなことをしてみたいと思う。


「そういえば・・・・」


そこでふと思い出す。とある生徒3人からちょっと変わった相談を受けたことを。彼女たちならば、そう思う来美は週明け早々にもコンタクトを取ろうと思い、夏休みに向けて山積みの仕事の合間を縫って色々とやってみようと考えるのだった。



1人でログインをしたジゴマだったが、張り合いのないバトルにうんざりしつつエントランス近くの茶店を訪れていた。7vs7で彼の評価は落ちることはなく、逆に人間性を含めて評価を落としまくっているセルバンテスとは対照的な状態になっていた。


「アシュリー・・・・あのスキルはなんなんだ」


他人のスキルを奪い、融合させて放つあのスキルがああいう特性を持っていたとは驚きだ。普段ではそう役立ちそうにないそのスキルがあの場では奇跡を起こしたのだ。その場にいるだけで注目を集めるジゴマはその視線を嫌ってログアウトした。現実世界に戻って端末を外すと狭いアパートの一室という現実にうんざりしつつ、窓にかけられたカーテンを開いた。


「あのスキル、利用価値はある・・・・俺がもっとのし上がるには、あいつが必要だ」


長い前髪をかき上げるのは額に傷のある青年だ。年は22、3といったところか。切れ長の目がぎらつくその青年はあまり清潔とはいえない台所に向かうとほとんど空の冷蔵庫から麦茶を取り出して煽るように飲み干す。その姿はまるで野獣のようだ。


「さて」


そういうと簡素な机と椅子しかない部屋に戻ると無造作にパソコンを起ち上げた。EDENと接続し、そして管理者IDを使って全部で17層あるEDENのサーバーの4層までのアクセス権を行使した。自分に与えられたのは4層にあるシステム管理だ。17層全ての管理と閲覧が出来る人間はこの地球上に10人しかいないが、低層の6層目までは2千人がアクセスできるようになっている。ジゴマはその2千人の1人である。その役目は主に不要になったログインコードの整理だ。


「アシュリー・・・・」


ログインIDを管理している6層にアクセスしたのはこれが4度目だ。こういう履歴は残るが、気にしない。4層にある離脱したログインコードのバックアップ整理が仕事だが、権限を使用すれば特定のID、つまりはステータスやログイン時間などを確認出来る。もっとも、彼は閲覧しか出来ず、バックアップ時の補助的作業としての権限でしかない。アシュリーがどこの誰かまではわからない、アクセスしている場所も特定は出来ない。つまりは彼の権限ではアシュリーが何者かまでは把握出来ない状態にあった。あくまでアシュリーという存在のステータスなどを確認出来るだけだ。だがそれで十分だ。ある程度分かればいい。


「主に夕方・・・・・日本時間での平日と休日のログイン時間からして日本人で、しかも学生っぽいな」


そうつぶやいてほくそ笑むジゴマは他の項目に目を通す。初ログイン時期、ギルド入会時期、そして最近の動向。ギルド以外ではリライとよくつるんでいることも分かった。


「リライ、か」


その存在も気になるジゴマはリライについては調査済みだ。もちろんロストワンも、セルバンテスについても。自分が成り上るために必要な情報だったからだ。


「さて、どうする」


アシュリーとリライのステータスを覗き見つつ考え込むジゴマの目つきがさらに鋭くなる。どうすればアシュリーを自分の方へ引っ張れるかを、ロストワンと引き剥がせるかを考えるのだった。



合宿の日取りも決まり、両親の許可も得た明日海は新しい水着を買おうと小枝子と千佳、樹理亜を誘った。全員からOKをもらって、来週末には出かける約束も取り付けてある。来美には改めてお礼を言いつつ合宿参加を促すが、当然ながら断られていた。教師という立場を明かすわけにもいかず、かといって夏休みは教師にとっては忙しい。何より、自分のギルド結成の件もあるのだから。とにかく4人で買い物に行くことになった明日海は元気いっぱいであり、もう家の中では遊馬への過剰なスキンシップを隠すことをしなかった。両親はその変貌に驚きつつも喜び、このまま付き合って結婚となってもいいとも考えている節がある。だからこそ、それに感づいている遊馬はなるべく明日海との接触を避けていた。そんな遊馬のスマホに小枝子からメッセージが届いたのは彼女たちが水着を買いに行く前日であった。


『合宿までに一度2人で会えませんか、リアルで』


その文面に目を点にする遊馬。あの小枝子がこんなことを言うとは思ってもいなかったからだ。明日海を警戒すればどうにかなるかと思う遊馬はOKと返事をし、それからベッドに寝転がった。出かけるタイミングさえどうにかすれば明日海の尾行は阻止できると思う。


「でもあのカッコウで来られたら・・・誰かがSNSにアップしそうだ」


7vs7でペッパーズの知名度は上がり、そのメンバーの知名度もまたうなぎ上りだ。そんな中でムジの格好をした小枝子が現れたら目立って仕方がない。その時はその時だと思う遊馬は小枝子がムジであることにこだわっていることを理解出来ていた。


「まぁ、何かの相談かな」


深く考えない遊馬らしい思考だったが、これが合宿に嵐を呼ぶことになろうとはこの時、思いもよらないのだった。

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