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また明日、ここで  作者: 夏みかん
第2話
3/9

事実は奇なりー前編-

5年前のあの日、彼女と出会った。まだあどけない少女だった彼女は母親に手を引かれてやって来て、可愛らしくお辞儀をしてみせたものの、笑顔はなかった。まだ11歳の少女にとって、新しい父親と新しい兄を受け入れることが難しい、そう理解していたから遊馬にとってもそれは特に気にならなかった。父親が美智子と再婚し、家族になったあの日から今日まで妹となった明日海の自分への笑顔は一切見ていない。父親である颯馬には笑顔で接する明日海は、徹底的に遊馬を無視し、そして嫌悪しているようだった。会話もほとんどなく、接点もない、はずだった。そう、今、目の前ではにかんだ笑みを浮かべている明日海がアシュリーと知るまでは。信じられないといった顔をする遊馬から何かを察した太陽が2人の肩にポンと手を置いた。


「まぁ、言いたいことや聞きたいことは山ほどあろうけど、それは皆同じだ。そういうのは店に入ってから」


笑顔でそう言われて我に返った遊馬が、それでもまだぼーっとしていると千佳がそんな遊馬の腕を引っ張った。


「そうそう、行こう!」

「あ、ああ」


手を引かれて店に入る瞬間、冷たい目で千佳を見ている明日海が目に入った。いつもは自分に向けているその目を、何故、千佳に向けるのか。


「なかなかややこしい家庭事情みたいだね」

「悪いけどさ、むっちゃ面白そう!」


ため息をつくムジの言葉に嬉々としてそう返す樹理亜に別の意味でため息をつくしかない。そうして2人が中に入れば、そこはお洒落なカフェであり、人気がある店だということも頷けた。陽が入る大きな窓のせいか、かなり店内は明るい。6人掛けのテーブルに案内されたが、1人1人の間隔にかなり余裕がある状態になっていた。皆が席に着いた時に挨拶にやって来た店のオーナーは太陽の旧知の仲であり、彼がブレイズだとも知っている人物だった。


「森です、森正樹。ランキングは200位程度だし、ランダムログインだけど、よろしく」


そんな正樹に全員がよろしくと言い、各自が注文をしていく。太陽の横に遊馬が座り、その横に明日海が座っている。間隔があるのに何故か遊馬にピタリと寄り添う明日海に苦笑しているのは太陽の正面に座った千佳だ。その隣にムジが座り、一番端に樹理亜が座る配置となった。


「しかし、そのまんまのムジだけど、自宅から?」


千佳の言葉に頷き、平然としているムジが水を一口飲んだ。自作の衣装だがそのクオリティはかなりのようで、まさにムジがそこにいるといった感じだった。この格好で電車に乗って来たのかと思うと何とも言い難い感情がこみ上げてくる。全員がムジに注目する中、肩と肩が触れ合っていることが気になる遊馬がチラッと明日海を見やれば、明日海はじっと自分を見つめている。いつもにはない、にこやかで、それでいてどこか照れたような感じで。


「おう、きたきた」


各々がオーダーした飲み物が運ばれてくる。軽食もお任せでオーダーしているのでそのうち出てくるとのことで、まずは乾杯という運びになって全員が立ち上がった。


「ペッパーズのギルドマスター、ロストワンからご挨拶と乾杯の音頭を!」


太陽にそう言われて苦笑しつつ、相変わらず近い距離にいる明日海を気にしながらもアイスオーレの入ったコップを掲げた。


「こうしてリアルで会えたことが嬉しいし、これからもこうしてリアルでもバーチャルでも仲良くやっていきたいと思います。では、この縁に、かんぱーい!」

「かんぱーい!」


高らかにそう言い合ってグラスをぶつけ合う。我先にと明日海が遊馬のコップに自分のコップを当てるのを見つつ、樹理亜はこの兄妹がよからぬ関係に発展しそうな好奇心を止められないでいた。


「じゃぁ、自己紹介といこうか。まずはロストワンから、だな」

「うん。えー、ギルドマスターのロストワンこと、黒瀬遊馬です。17歳、高2。部活はしてません」

「部活がモンスター狩りでしょ?わかってるって」


千佳の合いの手にみんなが笑う。遊馬はそう言った千佳がザナドゥにしか見えない。現地世界でもEDENでも、千佳は千佳のようだ。


「ま、そういうこと。とにかくよろしく」

「よっ!さすが!じゃぁ次は俺だな。俺がブレイズこと、朝倉太陽だ。年は40、まぁ、いわゆるベンチャー企業を起ち上げた社長だったわけだが、今は会長職でのんびり悠々自適な生活してる」

「・・・・社長だか会長だか知らないけど、20万のアーマーをほいほい買える超金持ちかぁ」

「まぁな。あれは有意義な買い物だったと思ってるし、これからも同じ」


千佳のちゃちゃにも負けずにそう言い、ニヒルな笑みを浮かべる太陽。26歳の年の差とは思えない親しさはもう変えようがない状態だ。太陽にとっても千佳はザナドゥなのだから。


「私は中津川千佳、中2。まぁ生粋のオタクだよ。結果、学校じゃぼっちなんだけどね」

「今はぼっちじゃないよね?」

「おりょりょ、言うよね、ムジ!ま、そうだね、仲間がいるって最高!」


口調も何もかもがザナドゥなせいか、全員が和む。千佳は女子中学生らしからぬコミュニティ能力を持っているようだが、それなのに何故ぼっちなのかが疑問でしかない。きっとオタクという趣味だけで敬遠されてきたのだろう、そう思う。


「私はムジ。本名は木皿儀小枝子、高1。友達はここにいるメンバーだけ。それで十分」

「・・・なんか怖い・・・・でも、その心意気やよし!私は加賀見樹理亜、ミラージュ。よろしくね。大学2年の二十歳」

「え?大学生であのアーマー買えるって家が金持ち?」

「父が不動産経営なの。んで、一人娘の私にはあまーいわけ」


小悪魔的に微笑む樹理亜に太陽は苦笑するが、千佳は何かが違うと思った。要するに家が金持ちだからたくさんの小遣いを使いまくっているということか。羨ましいと思うものの、果たしてそれが幸せかどうかはわからない。


「ってことはデッカイ家に住んでる?」


ムジが興味を引かれた感じでそう問えば、樹理亜は大きく頷いた。得意げなその顔はまさにミラージュそのままだった。


「ムジとザナドゥとアシュリーは今度家に招待するわね。男子はダメ、父が激怒するから」

「あー、もう、なんかそんな感じだよね」


そう言う千佳が笑うせいか、ムジも小さく微笑んだ。そんなムジの視線が明日海に向けられる。明日海は遊馬の隣でくっつくようにしつつ、持っていたコップを置いて全員を見やるようにしてみせた。ムジの視線だけでなく、みんなの視線を感じたからだ。もっとも、そうされなくても次は自分の番だと理解できている。


「黒瀬明日海です。高1」

「私と同じ年だ」

「そうだね、ムジとは気が合うと思った。で、隣にいる遊馬がお兄ちゃんです。学校も同じ」


初めてお兄ちゃんと呼ばれた遊馬は複雑な心境ながら明日海を見やる。そんな明日海はどこか照れたような笑みを遊馬に返して見せた。家にいる時とは、いや、普段とはまるで別人だ。どうしたのか、そう思うしかない遊馬が困惑している様子はメンバーにも伝わっていた。この兄妹には何かある、そんな雰囲気が。


「義理の兄妹、だっけ?」

「ええ、父と彼女の母親が再婚したんです、5年前に」


戸惑いをそのままに遊馬が説明した。そう、それ以来、明日海がこんな感じになるのは初めてで戸惑いしかない。みんなの前ではこういう仲の良い兄妹を演出したいのか、それとも他に何か意図でもあるのか。遊馬はそんな目で明日海を見るが、明日海は微かな笑みを浮かべたまま顔を赤くして少し俯いた。一見すれば恋する乙女のようだが、それはないと断言できる。いや、本当に断言できるのだろうか。ぐるぐると疑念が渦巻く中、明日海はみんなを見て微笑んだ。


「バーチャル世界で出来た友人とこうして現実でも仲良く出来るって、なんか不思議ですけど、よろしくお願いしまーす」

「固い敬語はいらないよ。ここはリアルとはいえギルドと同じなんだからさ」


太陽の気さくな物言いに全員が笑顔になった。そう、これはギルドの集まりなのだ。アバターか本体かの違いはあれど仲間であることに変わりはない。


「よし!食べよう!お腹ぺっこぺこ!」


軽食も運ばれてきたタイミングで千佳がそう言い、こうして和気あいあいとしたオフ会が本格的にスタートするのだった。



遊馬は何度となく明日海を見やった。千佳やムジと話すその自然な感じは紛れもなくアシュリーであり、普段の明日海ではない。だからこうなのだと思うことにした遊馬は今日は明日海をアシュリーだと思って接した。明日海もアシュリーそのままに遊馬と会話を弾ませる。


「でもさぁ、意外だったなぁ・・・・・あのチャンピオン、無敵のソロハンターがギルド結成だもんな」


千佳がそう言う。どうやら元々こういう口調なようで、だからこそザナドゥだと認識出来ていた。中学2年生の女子とは思えない社交性を発揮している。特に太陽との絡みはEDENの中そのものだ。


「俺も驚いたぜ。まさかって思って咄嗟に申請しちまったわ」


太陽が笑いながらそう言い、千佳はその言葉に頷いている。


「確かにね・・・」


ムジはそうとだけ言うとクリームソースのパスタを口に運んだ。そんな面々を見ていた樹理亜はアップルティーを飲んでから全員を見渡すようにしてみせた。


「でも、なんでまたギルドを?」


そう問いかける樹理亜の言葉に頭を掻く遊馬は、そう言えば経緯を話してなかったなと思う。元々経緯など話しても仕方がないと思っていたが、こういう場だ、それもいいと思う。だからまずレモンスカッシュを一口飲んでからその理由を口にした。


「きっかけをくれたのはリライだったんだよ」



クエストの受付場に設けられた巨大なモニターはその世界観を損ねていると思う。中世なのかそれとも異世界なのか、とにかく科学的な要素がほとんど皆無なこの世界にそれはマッチしていない。古風な城や草原、塔など、剣と魔法の世界観に似つかわしくないそのモニターはそれでも多くの人々が見入る情報の塊になっていた。個人の総合ランキング上位者やギルドの総合ランキング上位が表示されては消えていく。現在展開されているクエストなども代わるがわる表示され、だからこそ皆がそれに注目するのだった。


「おう、今日もクエスト探しか?」


モニターを見つめていた背後からそう声を掛けられたロストワンが振り返る。横に並んだのは総合ランキング不動の2位、リライだ。見るからにイケメンの姿をした彼はラフな格好を好んでいる。勿論、クエストとなれな状況に応じたレアな武具を身に着けるのだが。


「もうしたいと思うクエストもないし、どうしようかなって」

「どうしようって、どういう意味だい?」

「グランドフェルムも倒しちゃったしね、もうこのワールドにいる意味もないかなってこと」

「まさか、引退?」

「そうなるね」


そのまさかの言葉にリライは驚き、それから何かを考えるように腕組みをしてみせた。確かにソロでは攻略不可能と言われたあのラスボス、グランドフェルムを1人で倒したのだ。アップデートしてさらなる強力モンスターが出ない限り、ロストワンとしては目標を失うことになる。だからといってリライに彼を止める権利はない。むしろロストワンが引退すれば、リライが自動的にランキング1位となるこれはチャンスなのだ。しかしリライはそれを望まない。元々ランキングに興味がないのはロストワンと同じだ。ただ1人で強敵を打ち破りたい、または時々仲間と一緒に強敵にチャレンジしたい、ハンターワールドを満喫したい、ただそれだけの話。


「なにも引退までしなくても」


引退とは完全にデータを消去することだ。そもそも休止するなどして対応すればいいし、引退までする必要があるのだろうか。別のワールドでもログイン名もアバターもそのままに移動出来るのだから、何もEDENから出て行く必要もないだろう。そういう疑問も頭に浮かぶが、戻って来る可能性がないから引退なのだ。


「だったら、もうさ、ギルド作れば?」

「作ってどうするのさ・・・俺がいるから最上位モンスターを狩りまくってレベルアップやランキングアップを図りたい、って輩しか来ないよ。利用されるのは嫌なんだ。各個人が個性をもって団結して倒すならいいよ、でも、頼って来る、利用されるってのは違う」

「だからさ、先着5名の申請を承認すればいい」

「誰だろうが、ってこと?」

「そう。初心者だろうがなんだろうが」

「・・・・どうだかな」

「面倒なら1カ月程度で解散、引退すればいい」

「うーん」


悩むロストワンを見ながらもこの提案に乗って来るような気がするリライは黙って答えを待った。その腕は認めているし、リライにとってもロストワンは目標であり壁なのだ。彼がいなくなればそれこそ自分も引退を考えるかもしれない。もっとも、グランドフェルムを倒す、それを成しえた後だが。


「やってみっかな」


長い沈黙の後でそう言ったロストワンの顔は晴れているように見える。だからリライもほほ笑んだ。


「ああ、試しに、いいじゃないか?」

「ちょっと面白そうだし」

「ああ」


そう言って笑い合う2人は共に戦ったクエストはそう多くないものの、親友のようであった。



ギルド創設の秘話を話す遊馬に、太陽は腕組みをして考え込むような仕草を取った。彼自身も何度かリライを含めた数人でクエストをこなした経験がある。そのことからしても自分のランキングなどに興味はなく、ただ未知のモンスターを討伐したいということ、そして人との関わりを深く持たないまでも繋がりは求めたいというような印象を持っていた。きっとロストワンの引退宣言に際して思うところがあっての提案だったのだろう。


「でも、あの言いっぷりからして入って来るもんだと思ってたんだけどね、リライは」


少し考えるようにしてから遊馬がそう言う。確かにあの時のリライにはそういう気配はあった。


「思った以上にすぐに決まっちゃったとか?」

「私が最後だったけどさ、あれって開設情報展開からせいぜい5分程度しか経ってなかったよ?ギルドマスターがロストワンだったから、マジか?って思ったもんで、結構悩んだし」

「そうね。まさかあのチャンピオンが、って思って、偽物かとか思ったし」

「偽物は違うんじゃない?」

「んー、ってかさ、ロストワンって3人いるでしょ?」

「英語のLOSTONE、あとひらがなだっけ?」

「そうそう、だからさ」

「でもそうだな・・・・確かアシュリーが2秒か3秒ぐらいで申請来て、その承認ボタン押した直後にムジからだったなぁ・・・」

「2、3秒?いくらなんでも早すぎない?」


驚く樹理亜の反応は全員が同じで、明日海に注目が集まる。そんな視線は計算の内なのか、明日海はにっこりと微笑んだ。


「なんかそんな気がしたんだよね。あー、なんか起こる予感がするって。入るギルドも探してたし」

「いやいや、それ、怖いって」


平然とする明日海に対してそう言う千佳に、ムジと樹理亜も頷いた。もしかして兄のストーカーか何かと思ってしまう。だが普段の明日海を知っている遊馬にすればそれはあり得ないとも思うものの、今ここにいる明日海はその普段と真逆なため、その可能性もあるという小さな恐怖が芽生えていた。にこやかな笑顔を浮かべている明日海はこれまでとは別人だ。


「こいつ、このメンバーにはこのキャラでいくつもりなのか?」


心でそうつぶやくものの、この変化に戸惑いしか感じないのだった。



「しかしお嬢様だとは思ってたけど、まさか加賀見不動産開発のご令嬢だったとはね」

「あなたこそ、あの超メジャーSNSのE-SPECを起ち上げた人だったなんて」


お金持ち2人がお互いの素性に驚きつつも別次元の話で盛り上がる中、千佳と明日海の学生あるあるトークを聞いていたムジがジュースを飲んでくつろいでいる遊馬に視線を投げた。想像していた人は違ったが、ロストワンはそのまま遊馬であるという認識を持っていた。そう、彼はそのままだ。自分とは違う、そういった意味でのそのまま。


「そういえばさ、ムジはずっとその格好なの?」

「私は私だもの。EDENでも、リアルでも」

「学校は?」

「そっちは木皿儀小枝子。今ここはペッパーズのギルドだから、だから私はムジなの」

「・・・・色々複雑なんだねぇ」


千佳のしみじみとした言葉に苦笑する明日海。だがムジは平然とオレンジジュースを飲んでいた。これでもう開始1時間で飲み物は8杯目だ。


「でも、これこそがムジって感じだよな」


遊馬がにこやかにそう言うと、ムジは少々頬を赤らめた。これは区別だ。本当の自分と虚構の自分、それを分けないとこんな世の中では生きていけない、だからこその区別。EDENの自分、そこで出会った人との交流であればムジでいなくてはならないのだろう。


「これこそが私って?」

「俺の知ってるムジは木皿儀さんじゃないってことさ。あくまでムジだもの。アシュリーにしてもミラージュにしても、ザナドゥにしてもさ、ブレイズ含めてやっぱりそれは同じなんだ。本名を、この世界での姿を知ってもそれは変わらない。違うのは見た目だけで全部一緒だからさ」


そう、あの明日海ですらアシュリーなのだから。千佳にしてもアバターでは性別が逆転していても変化はないのだから。


「私には色がない、個性がないってずっと言われてきた。親にも、兄にも、学校でも」

「だから無地なの?」

「そう、色もない、何もない。でも、あそこでは違った・・・EDENでは、ペッパーズでは私はムジという色を持てた。だから、感謝してるし、これが本当の私」


複雑な事情を察するものの、それを問うことは出来ない。それでもかすかに微笑むムジを見れば、本当の彼女がいられる場所がここなのだと分かる。色がないという色、それでもそれが個性となっている。


「でも実際、ムジが加入してくれてよかったって思ってるよ、俺は」

「え?」


遊馬の言葉に戸惑うしかない。こんなことを言われたのは生まれて初めてのことだ。親ですら自分を複雑な子と認識し、何の期待もしていないのだから。


「だって、要点を言えばそれだけでしっかりと動いてくれる。アシュリーもそれに従い、2人で協力しあってくれているから効果的な攻撃になってる」

「それはあるよね・・・じゃないと私もブレイズも何度死んだかわかんない。近接戦闘武器だけだとキツイ相手でも助かってる」

「そりゃそうだな・・・何せ、前に出たがる役に立たない射撃支援者がいるんだし」

「なに?私が悪いわけ?」


太陽の横やりっぽい意見に睨みつける樹理亜。これもいつもの光景だ。そこからいつもの、本当にEDENの中でのやり取りが始まった。太陽と千佳が樹理亜に文句を言い、明日海がそれをなだめる。ムジは静観を決め込み、遊馬は苦笑を浮かべている。ここは現実世界だが、姿は違っても中身は同じ、それを証明している。


「入ってよかったって、本当に思うよ」


ムジの呟くようなその言葉を逃さなかった遊馬が笑顔を返す。だからムジも小さく微笑み返すのだった。



3時間に及ぶオフ会もそろそろお開きという運びになった。この後、千佳と樹理亜、ムジはカラオケに行くらしい。太陽は用事があるからと帰ることにし、3人の視線が遊馬と明日海に注がれる。


「俺は、今日は帰るよ。次は一緒する」

「じゃぁ、私も帰る。でも、いつでも連絡ちょうだい、予定合わせるから」

「そうね、じゃぁ、次は女子会、かな」


樹理亜の言葉に明日海は頷き、いつにするかを話し合う。そんな女性陣を見つつ、太陽が遊馬の横に立った。


「成功だな、オフ会」

「うん。やってよかった」

「月一ぐらいで、来れる奴だけ来れるようにしようと思ってる」

「そうしたい」

「まぁ、店なんかは任しとけ!」

「そこは年長者だし、頼りにしてます」


そう言い、遊馬が差し出した右手をがっちりと掴む太陽が握手を交わす。女性陣はハイタッチをしていた。リアルでの連絡先を交換したメンバーがそれぞれ別れる中、遊馬は明日海を見やった。明日海はそんな遊馬に微笑みかけると行こうと促した。解散してもそのままのキャラで行くのかと困惑は続くものの、そこは何も言わずに駅へと向かう、はずだった。


「お兄ちゃん」


不意にそう呼ばれた遊馬が慣れない言葉に反応して明日海を見やった。明日海は少し思いつめた顔をしつつ、それでもしっかりと遊馬を見つめていた。


「今日、色々思うところがあったと思う。だからさ、ちょっと、話、しない?」


緊張が伝わるその言葉に頷く遊馬だったが、どこで話そうかと悩む。お腹もいっぱいだし、飲み物もイヤというほど飲んだ後だ。かといって話をしたいという気持ちが加速しているので、どこでもいいかと考えた時だった。


「え、と、あそこでいい?」


そうして指をさしたのはカラオケ店だ。ムジたちが向かった方向とは逆のため、かち合うことはないだろう。だから遊馬は頷き、2人はそこに向かった。とりあえず1時間で部屋に入り、飲み物をオーダーする。他の部屋から流れている重低音が伝わる中、並んで座った兄妹の間に少々重い空気が漂っている。気まずいと思う中、遊馬がテーブルの上のコップに手を伸ばしかけた時だった。


「本当はね、ずっと、今日みたいな関係でいたかったんだ」


ぽつりとそう言う明日海の言葉に手を戻した遊馬が明日海を見れば、戸惑いと決意、そして羞恥が読み取れる表情をしていた。こんな明日海も初めてなだけに、遊馬の驚きと戸惑いは計り知れない。


「出会ったときから、ずっと、好意を持ってた。でも、自分でもどうしていいかわかんなくて、戸惑って、気づいたら、ああなってた」


思わぬ告白に目が点になる。要するに好意を上手に表現出来ずにずっとこじらせた結果だというのか。ますます困惑する遊馬を見つめる明日海がその視線を逸らせた。事の始まりはあの日、初めて出会った日。母親が交際していることは知っていたし、再婚の気配があることも理解していた。それはそれでいいと思う。自分を犠牲にして大切に育ててくれた母親の再婚は嬉しい。だからそう告げられた時には素直に喜んだし、大賛成した。その時に相手の人には息子がいることも聞かされたし、年も1つ上だと知った。元々お兄ちゃんが欲しかった明日海にとっては願ったり叶ったりだ。ただ義理の兄になるだけに、その人柄や性格は気になっていた。変な人ならどうしようとも思ったほどに。けれど、そんな懸念は顔合わせの席で吹き飛んだ。ボサボサの髪形だった遊馬は平凡なようで、だが明日海はその真の魅力に気付いていた。ちゃんとすればかなりのイケメンだし、何より優しくて気さくだったからだ。その瞬間から好意を持った、いや、恋をしたのかもしれない。その席ではろくに話すことも出来ずに緊張しっぱなしで表情も硬かった。だから遊馬はいい関係を築くのに時間がかかるかもと思ったし、ほどよい距離感を保つ必要があると感じたほどだ。一緒に暮らし始めても変化はなく、明日海は遊馬を無視するようになっていた。話しかけても返事もろくになく、どちらかというと嫌悪感を持たれている、そう感じてしまったほどに。遊馬にしても家族なのだからこのままではいけないと色々と努力はしたが、結局のところ徒労に終わった。半年ほどで心は折れて今に至っている。明日海が自分を嫌い、その存在自体をないようにしたいのならそれでいいと思ったからだ。だからこそ明日海の告白は衝撃的だったし、動揺し、狼狽してしまっている。


「本当はね、ずっとこのままじゃいけないって、何とかしなきゃって思ってた。でもやっぱり本人を前にするとダメで、他の女の子と仲良くしてるのを見たら余計にイライラするし」

「それって嫉妬?」

「うん。私が素直になればいいだけなのに、なれないから余計にイライラして、焦れば焦るほどどうにもならなくなっちゃって、自分の感情をコントロール出来ないから、ああするしかなかった。抑えて抑えて、その結果が無視」


もう言葉も出ない。完全に嫌われているものだと思っていたら、これはこじらせたツンデレだったとは。深いため息をついた遊馬はずり落ちるようにして座るしかなかった。


「つまり、今回のオフ会でそれを打破しようって?」


その言葉には困った感じを出す。本当は打破するつもりだった。けれど、その方針は遊馬やペッパーズの面々を前にした時に急展開してしまったのだ。そう、この行動はもう明日海の本心が前に出た結果でしかない。歪んだ愛情がゆっくりと形状を正常に戻す中、変な方向に歪んでいった結果だ。


「もうなんか考えと行動が一致しなくなって・・・みんなリアルでは初対面なんだし、だったらもう本当になりたかった私になっちゃえって、そう思って・・・」


怖いぐらいに変だった明日海のあれはてっきりアシュリーとしての明日海が変に交じり合ったせいかと思っていたが、願望の結果だったとは思いもしなかった。もう思考もマヒした遊馬がジュースを飲んで冷静になろうと努めるが、明日海は熱い視線を遊馬に向けている。それは妹のそれではなく、恋をしている乙女のそれだ。


「で、お前はどうしたいわけ?」

「どうって・・・・お兄ちゃんと結婚したい」

「あのなぁ・・・・」


がっくりとうなだれる遊馬に対し、明日海の目は真剣そのものだった。明日海はずっと遊馬に兄ではない感情を抱いていたかもしれないが、それが裏返って嫌っている態度を見せていたために遊馬にしてみれば精神的にイってる人間にしか思えない。怖い、それが本心だ。


「そうじゃなくってさ、これからだよ。今日からもう、今の明日海でいくの?」

「それは何か無理だよ・・・恥ずかしい」

「いやいやいやいやいや・・・そういう問題?」

「だぁって・・・もう、どうしようもないし、どうしよ?ま、とりあえずギルドメンバーの前では素直な私。もちろん、アシュリーの時はアシュリーだけど、リアルでのアシュリーの時は本当の私で」

「ややこしいわ!」


突っ込むことしか出来ない遊馬だが、かといって急に変貌してお兄ちゃん好き好きな妹になられても変に勘繰られるだけだ。それこそ義理の兄妹だけにヤバイ関係だと思われてしまうだろう。それは避けたいと思うし、かといってどうしていいか分からない。


「んー、と、徐々に変わっていくから、当面はツンデレな私でいく。普段、家でも今までの私。でもさ、その、お兄ちゃんの部屋とかには行くね?EDENの話とかしたいから」

「まぁいいけどさ、変な気を起こすなよ?」

「変な気って?エロいこと?」


わざとボカしたにも関わらずはっきりそう言った明日海に頷いて返すものの、こればっかりは自分が気を付けるしかない。かといってかなりの美少女である明日海はスタイルもいいし、出るとこはしっかりと出ているだけにはっきり言って何もしない自信はなかった。恋という感情は薄い自分を理解しているが、それとこれは別なようだ。ちゃんとした年頃の男であるという認識はある。ただ、好きになるという感情が薄いだけ。最低だと自分でも分かっている。


「まぁ、じゃ、今まで通りだけど、少しだけ仲良くするってことで、少しずつ進展させていくってことで、兄と妹として」

「うん!」


兄妹であることを強調した遊馬の言葉だったが、それに対してとびきりの笑顔を見せた明日海が遊馬の方に体を向けて両腕を開いてみせた。何を意味するのか何と無しに分かるものの、ここはあえて聞いてみる。


「なに、それ?」

「ハグ!」

「なんで?」

「したいから」


照れたような表情をしつつもその目は真剣そのものだ。ため息しか出ない遊馬はもうどうとでもなれとばかりに明日海を正面から抱きしめた。いい香りが鼻をくすぐり、その柔らかい感触が心地いい。だが理性はしっかりと働いている遊馬は名残惜しそうに中々離れない明日海から逃れるようにして離れるのだった。



明日海の本心を知れたのはいいが、見かけ上でも以前のような関係でいられるかが不安だった。明日海は密室で遊馬と一緒にいられることがご機嫌のようだが、遊馬としては頭がパンクしそうだった。明日海の本当の気持ちを知った上での悩みだが、しかしふとあることが気になった。


「しかしよく俺がロストワンだってわかったな?ってか、最初から知ってた?」


浮かんだ疑問は2つなので、まずは1つ目をぶつけてみる。自分がロストワンだと知っている現実世界での人間は昨日まででただ1人のはずだ。なのに明日海は自分がロストワンだと分かっていた感じだったからだ。今日、店の前で会った際の明日海は睨みつけるようにしていたがそこに驚きはなく、逆に遊馬は腰をぬかしそうなほど驚いたものだ。


「え、と、あのね、随分前にさ、お兄ちゃんの部屋のドアが少し開いてて、気になって少しのぞいたら、誰かと電話してた・・・その時に、分かったの」


思い当たることがあるだけに納得できる回答だが、自分はいつもいつもきっちりとドアは閉めているはずだ。そこがどうにも引っ掛かったものの、そういう時もあったのだろうと納得した。実際に当麻と電話をすることは多い。そういう会話もするだけに、明日海の言葉は信じられるという回答に至った。ならば次の質問に移るしかない。こちらの回答によっては今の関係は余計にこじれる可能性がある。


「そうか・・・・じゃぁ、なんでギルド開設した直後に入会申請出来たんだ?」


仲間を集ったわずか2秒後に来た申請が怖い。何かが起こる予感がしたという言葉はどうにも信用できないし、到底納得できるものではない。申請を受けた際にはこういうこともあるだろうと苦笑したものだったが、その人物が明日海というのが怖さを思い出させた。まるで申請する瞬間が分かっていたとしか思えないタイミングだったからだ。同じ家に住んでいるのだから機会を伺うことは可能かもしれない。だが部屋は別々だし、そもそもログインしている状態ならば肉体的に声を発することもない。ならば、何故分かったのか。


「あれは本当に偶然。私、お兄ちゃんがロストワンだって知ってたから、結構チェックしてたんだよね。そういうことないかなって」

「開始2秒で申請が偶然ってか?」

「神様はいるって思ったもん。結ばれなさいって言ってるって!」


満面の笑みでそう言う明日海に対してはもう何も言うことはなかった。どこか釈然としないまでもそれを信じるしかない。しかしどっと疲れが襲ってくる。ただでさえ仲間と現実世界で会うことの緊張もあった上でのこの明日海の真相だ。怒涛の1日に疲れ果てたこともあって他にも聞きたいことがあったが、それももうどうでもよくなった遊馬は残り時間が20分であることを確認しながら飲み物を飲んで乾いた喉を潤した。そんな遊馬を見つつ明日海もジュースを飲む。


「びっくり、だよね?」


恐る恐るそう言う明日海に対して力強く頷く。びっくりなどという言葉では言い表せない驚きだった。衝撃的と言っていいだろう。


「驚きしかないよ」

「だよね」

「でも、ま、すっきりもしたかな」

「ん?」

「このままずっと嫌われたままで一緒にいるってのはどうなんだって思ってたから」

「あー、うん」


遊馬の本音に明日海は小さく微笑んだ。遊馬が悩んでいたことも知っている。だからこそ素直な気持ちを打ちあけたかったのも事実だ。それをする勇気を失ったが、機会をくれたEDENには感謝しかない。ギルド結成を持ち掛けたリライには感謝してもしきれないほどに。


「でも、これだけははっきりさせとくね?私は私、アシュリーはアシュリー。別人だから」

「そこは区別してるってことか?」

「うん。だって、そういう気持ちでいるから」

「わかった」


遊馬の言葉に頷く明日海は照れたような笑みを浮かべる。客観的に見ても美少女だと思う妹の姿に苦笑するしかない遊馬は少しずつ変化していくだろう明日海の姿が楽しみでもあり、怖くもあるのだった。



「千佳ってさ、学校、ちゃんと行ってる?」


全員がひとしきり歌い倒した今、トークに華を咲かせていた。ムジはまだ歌う気でおり、端末で流行りのアニメソングを検索していた。樹理亜は長い足を組んでアルコールの入ったコップを持っていた。スタイルもいいだけに様になっている。


「まぁ、行ってる」

「ちゃんとは行ってない言い方ね」

「だって、学校行っても友達いないしさ」

「ボッチ?」


何故かそこに反応したムジが画面に表示されたタイトルを見つつ、マイク越しにそう問いかけた。


「そっ。私の学校って、金持ち住宅街から結構通って来てるんだよね。だからなんか、考えが合わないってか、ヤなんだよ」

「で、EDENに?」

「まぁね。オタク趣味丸出しにしたら学校に居場所がなくなった私にはピッタリの場所だし」

「オタク趣味?」


歌い始めていたムジがそれを中断した。マイク越しのエコー込みだからか、2人ともムジに注目した。


「私も同じ。友達なんかいない、いらない。ペッパーズの仲間だけでいい」

「そうなんだ?だからEDENでもここでもその格好でムジなんだ?」


マイクを置いたムジの言葉にそう返す千佳は同じ空気感を得たようだった。過程は違えど、学校で浮いているのは同じなようだ。だから気が合うのかもしれないと思うムジと千佳が小さく微笑む。色々あるんだなと思う樹理亜はそれ以上何も言わなかった。個人には個人の事情があるのだから。そう、自分も同じだ。お嬢様だから、そんな目で見られることは嫌ではないが、そういう自分を嫌っている者も多い。金持ちの家に生まれただけの女、そういう目で見られることも多いのだ。


「でも、アシュリーがロストワンの妹、それも義理の妹ってのが一番びっくりだったなぁ」


千佳の言葉に思わず頷いたのはムジだった。樹理亜は組んだ膝の上に肘をつき、その手に顎を乗せる。そしてそのまま鼻でため息をついた。


「アシュリー、多分、マスターを好きっぽいね」


唐突にそう言った樹理亜の言葉に千佳が驚いた顔を見せ、ムジは眉間に皺を寄せた。義理の兄妹なのだ、恋愛感情を持っても不思議ではない、問題もない。だが、遊馬はアシュリーが明日海だと知らなかったし、何か複雑な事情があることもわかった。樹理亜はもう理解している。明日海はきっと、今日は普段とは違う顔を見せていたのだと。だからこその遊馬のあの反応だったのだ。


「今日、色々あって、ますます楽しめそう」

「それは同意」

「だね」


千佳とムジも同じ意見を述べ、笑みを浮かべた。


「恋の嵐の予感もするわぁ」


嬉しそうにしながら両頬を両手で包むようにする樹理亜の方を見やった千佳は苦笑を濃くし、ムジは無表情ながら何かを考え込むようにしてみせるのだった。



カラオケ店を出て最寄りの駅に着くまでの明日海は饒舌だった。だが、電車に乗ればそれはピタリと止む。彼女が言うには誰に会うかわからないからだそうだ。それを言うなら駅までの道のりも同じだと思う遊馬だったが、そこは何も言わなかった。明日海はただじっと吊革につかまって前を見ている。ただの1度も遊馬を見ないその徹底ぶりが逆に可笑しくて、笑いをこらえるのに苦労したほどだ。この5年の明日海はずっと芝居をしていた、そう考えると面白い。いや、感心してしまう。よく5年もずっと続けられたものだと。逆に言えば、その意思の強さが怖い。なんとかしたいという思いがどうにもならず、それを維持し続けたというその姿勢が怖いのだ。だからこそ、それが裏返った時の明日海が想像できない。親の目がない場所ではどんな行動に出るかも分からないために警戒する必要があった。だいたい、女性に対する興味が薄い遊馬にとって、恋とはよくわからないものだ。その原因が昔のトラウマにあることも理解できているとはいえ、それをどうにかしようという気にもならなかった。明日海が自分と結婚したいと言った時も意味が分からないと思っただけのこと。


「前途多難すぎだろ」


横目で明日海を見つつ心の中でそう呟くしかない。そうこうしていると自宅の最寄り駅に到着し、2人は少しの距離を置いて歩き出す。いつものように変わらず、そう思っていた遊馬の予想を軽々と踏み越えてくるのが今の明日海だ。先を歩いていた明日海はペースダウンし、遊馬の横に並んで歩いたため、電車でのあの行動と矛盾すると思う遊馬は戸惑うしかない。


「いいのか?誰かに見られたら・・・」

「大丈夫、会話してなきゃ」


お互いに前を向いたまま、視線も交わさず早口で、しかも小声で言い合う。示し合わせたようなこの会話もまた変化だ。ほんの少しの間を開けて並ぶ2人は前に広がる自分たちの影を見やる。微妙なその距離感が今の2人を表しているようだ。遊馬はもう何も考えないようにした。考えても無駄だし、明日海の行動は読めないのだから。だが必要最低限の距離感を近づける行為はこれからも続くのだと思う。徐々に、そう思う。現に明日海は黙ったままで、決して視線も合わせない。表情もなく、今までの明日海そのままだ。家が見えると明日海は歩く速度を増して数歩だけ遊馬の前に出た。さすがにこれは変えないかと思う遊馬はいつも通り先に玄関を開ける明日海を見つつそこは安心しきっていた。


「ただいまぁ」


普段通りの明日海がそう言えば、リビングから美智子が顔をのぞかせる。続いて入ってきた遊馬を見て何かを感じたのか、美智子は靴を脱ぐ明日海を見つめた。


「あら、2人一緒?もしかして、内緒の秘密デートしてた?」

「ち、ちち、違うし!で、で、デートとか・・・・・・ねぇ?」


激しく動揺しつつまんざらでもない表情をした明日海が振り返る先にいる遊馬は照れた顔をする明日海と驚きからニヤニヤに表情を変化させた美智子を見て深く深く鼻でため息をついた。


「あー、これ、ダメなやつだ」


心で重くそう呟いた遊馬はこの瞬間から前途多難な毎日を想像して胃が痛くなるのを感じるのだった。

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