MOMOTARO The Final.
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むかしむかしあるところに、少し変わったおにいさんとおにねえさんが山のふもとに住んでいました。2人はとても美形で、村の人たちからは仏さまやら、神さまやらと崇められていました。
おにいさんは、山へしばかりへ。おにねえさんは、川へ洗濯へ。
川で洗濯していたおにねえさんのもとに、どんぶらこどんぶらこと大きな大きな桃が流れてくるじゃありませんか。
驚いたおにねえさんは、桃を鷲掴みにし家へ持って帰ることにしました。
「おにさんや、おにさんや、大きな大きな桃が川から流れてきたんだよ。 人間ってこういうのも育ててるんだねえ」
「うわっ! 本当に大きいな! 人間って凄いなあ! 早速食べてみよう!」
おにいさんたちは、人間の凄さに驚いていました。こんな大きな桃を作れる人間はいったい何者なんだと。
「ちょっと待っておくれ、今手刀で切るからの」
おにねえさんが、腕を振りかざし桃を切ると、なんと中から小さい赤ん坊が出てきました。
「赤子だぞ! 桃から、赤子が産まれるのか!? 人間は!」
「そうなんじゃないのかね? それにしても、小さくて握り潰したら死んでしまいそうだ。 暖かいのう……。 私たちで育てるかの」
「えっ!? 育てるのか? 人間の赤子を、育てたことなんてないぞ」
おにねえさんは、初めて抱く人間の赤子に見惚れてしまいました。
すると、おにねえさんはこの子を育てると言い出しました。
おにいさんは、育てたことのない今にでも死んでしまいそうな赤子を見ながら、心配そうに言います。
「いや、育てよう。 この子を野放しに出来ない。 私たちはそういうのが嫌でここに来たんだからな」
おにいさんは、赤子を育てることに決めました。
赤子は、2人の下ですくすくと育ち名前は桃から産まれたから、桃太郎。と名付けれました。
「すっかり、大きくなったのう。 桃太郎も、前であんなに小さかったのに」
「あぁ、すっかり大きくなったもんじゃ。 人間とは成長が早いものだな」
桃太郎は、14歳になっていました。すっかり、背は伸びたくましい体に育ちました。
「……なあ、桃太郎に鬼退治を任せてみないか?」
「桃太郎にか? そんな危ないことさせられないわい」
おにいさんは、おにねえさんさに桃太郎に鬼退治に行かせようとしましたが拒否られてしまいしまた。
その話を聞いていた桃太郎が、2人の元に行きこう言いました。
「鬼退治ですか? みんなを困らせている鬼を退治に行けばいいんですか?」
桃太郎は、正義感が強く困っている人がいれば手を差し伸べるような子でした。そのため、2人の困った顔を見た桃太郎は放っておくことが出来ずに、つい首を突っ込んでしまいました。鬼を退治する、それがどういうことなのかを知らずに。
「……そうだ。 鬼は、暴虐の限りを尽くす、最低な奴らだ。 そんな奴らを野放しにしていたら、被害は拡大しみんなが困ってしまう。 だから、桃太郎に任せてみようかと」
「分かりました。 僕行きます。 困っている人を見捨てることはできません」
こうなってしまった、桃太郎を止める方法はありません。おにねえさんも、何も言わずに行くことを認めざるをえませんでした。
「なら、私たちの秘密を話しておこう。 私たちは、元鬼だ。 今は人間の姿をしているが、元々は鬼だ。 騙していてすまなかったね」
おにいさんと、おにねえさんの体は赤くなっていき角が生え、みんなから恐れられる鬼と変貌していきました。
しかし、桃太郎はそんな2人を見てもいつもの目をしていました。
「そうですか。 でも、僕にとって2人は親であり人間です。 鬼であろうが、関係ありません」
桃太郎にそんな事は関係なかったのです。2人がどんな姿であろうと、気にしはなかったのです。桃太郎にとって、2人は親であり人間だから。
「……やっぱり、桃太郎は優しいね。 鬼を退治するには、結晶鬼といわれる石を斬らなければ、鬼は永遠に復活するよ。 斬れば、この世から鬼は全員消滅する。 分かったかい? 結晶鬼がある場所は、鬼ヶ島の最深部だよ」
「分かりました。 でも、そうしたら2人は?」
「死ぬよ。 結晶鬼は私たちの心臓ともいえるからね」
桃太郎が承けたお願いごとは、とてつもなく重たいもので14歳が背負うには、あまりにも酷なものでした。
桃太郎は葛藤します。みんなを助けるか、それとも2人を助けるか。
2人の方を見ると、とても優しい顔をしていました。桃太郎は決めます。鬼を退治しようと。親からの最期の願いを、叶えようと。
「……行きます。 見ていてください。 私が、鬼を退治する瞬間を」
「見てるとも。 行く途中お腹空くと行けないから、これを持っていきなさい。 きびだんごだよ」
桃太郎の大好物の、きびだんごをおにいさんが渡してくれます。
おにねえさんが、用意してくれた鎧を着て桃太郎は鬼退治へと向かいます。
「行ってらっしゃい。 気をつけるんだぞ」
「お腹空いたら、きびだんごを食べるんだよ。 行ってらっしゃい」
「2人とも、行ってきます」
かかとを返し、2人の方から視線を外した桃太郎の目には涙が溜まっていました。最期の2人には、笑ってる顔を見せたかったのです。
桃太郎は、道の途中で猿犬雉姫という女性に出逢います。
「私は力試しで鬼退治に行く予定だけど、あなたも鬼退治に?」
「はい、私の親からのお願いで」
猿犬雉姫も、鬼退治へ行く途中だったそうで、桃太郎に同行することになりました。仲間が1人増え、いざ鬼ヶ島へ。
鬼ヶ島は、ドクロのような形をしており大海が広がり、頭上には曇天が。
この大海を渡るには、小舟が必要です。しかし、2人はここまで歩きで来たため船なんて持っておりません。
困った2人は、海辺を歩いていると小舟があることに気付き、誰のかは分かりませんが借りることにしました。
鬼ヶ島へ行く途中、鬼たちは桃太郎たちの存在に気付き戦闘準備へと入ります。
鬼ヶ島へ着いた、桃太郎たちは鬼たちに嬉しくない歓迎をされます。
「いらっしゃい。 お馬鹿ふたりさん」
鬼は2人のことを煽りますが、そんなことを気にもとめません。
「いざ! 鬼退治!」
数十といる、鬼たちに果敢に飛び込み斬り倒していきますがおにいさんたちの言った通り、数分すると甦てきてしまいます。
しかし、数分の猶予があることに気付いた桃太郎は不死身の鬼軍団を斬り倒し、甦てきた鬼たちを猿犬に任せ、結晶鬼がある鬼ヶ島最深部へと急ぎます。
最深部へ着くと、禍々しいオーラを放つ赤紫の石が宙に浮いているではありませんか。
桃太郎は、結晶鬼の前に立ち刀を鞘から抜きますが、一瞬だけ躊躇ってしまいます。
2人と過ごした、楽しかった思い出たちが頭の中に溢れ返り、振りかざした刀を止めてしまいます。
でも、2人の願いを叶えるのならば心を鬼にし桃太郎は斬る決心を固めます。
「……2人が、ここの鬼の皆さんが仏さまの手の鳴る方へ行けますように。 鬼さんこちら手の鳴る方へ 」
桃太郎は、刀を振り下ろし結晶鬼を一刀両断します。斬られた結晶鬼は灰となり天高くへと昇っていきました。
鬼退治を終わらせた、2人は鬼たちが盗んだ金品と財宝を村へ持ち帰り2人は結婚して、末永く幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。
ではまた。