表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ゆで卵にはなりたくねぇだろ(義理の姉弟。ほのぼの)

作者: 飛鳥井作太


 薬臭く、白い空間。──病院。

 ぼんやりと点滴に繋がれながら、相変わらずこの空気は好きじゃないと思う。

 それなのに入院とは、ツイて無さ過ぎる。

「熱中症は、脳みそがゆで卵になることだって知ってたか?」

 私を見下ろしながら、義理の弟くんが言った。

「いやあ、それは一番酷い状態でしょう?」

「馬鹿か、一番酷くてそれってことは、その前だってたいがいやばいってことだろ」

 エアコンが、壊れた。

 扇風機もあるし、窓を開けて、保冷材巻いてたらどうにかなんだろ、と思っていたが、甘かった。

 〆切をきちんと守り、さて、掃除でもするかなと思ったのが間違いだったのかも知れない。

 あ、これはヤバい? と思ったときには遅かった。

 頭は痛いし、身体の節々も痛む。何と、腹も痛くなって下してしまったから、なお性質が悪い。

身体が熱い、と思っていたら、しばらくしてびっくりするほどの寒気を感じた。

「ははは、まあね。歯の根が噛み合わないなんて経験、生まれて初めてだよ。感動だなぁ」

「馬鹿なのか」

 そんな風に床に転がっていた私を見付けたのは、LINEを交換した義弟だった。

 思えば、この子は床に転がる私ばかり見ているのではないか。ウケる。

「母さんたちには言ってないだろうね?」

 はあ、と彼がため息を吐いた。

「今のところは」

「重畳、重畳」

 今、母さんは義父さんと旅行中だ。

 楽しみに水を差しては悪い。

「ちょうじょう、ちょうじょう。じゃ、ねぇんだよ。アンタ、わかってんのか」

 弟くんが、怖い顔で私をのぞき込む。

「俺が見付けなかったら、死んでたかも知れねぇんだぞ」

「……ハハッ、不甲斐ない」

 それは、まったくそう。

 流石にこれは死ぬかと思ったのもまた事実だから。

「申し訳なかったね。せっかくの休日を」

「そんなことはどうでもいい」

 チッと舌を打って、彼はそばの丸椅子に腰かけた。

「アンタ、自分の命が大事じゃないのか」

「んー……作品を生み出すためには要るなとは思うけど」

 だから、頭がゆで卵は困ってしまうのだけど。

「でも、作品を生み出すのが一番かな」

「……はあ」

 弟くんは、もう何も言わなかった。

「とりあえず、エアコンはとっとと直せよな」

「あー……電話かけるの面倒くさいなぁ……」

「チッ」

 俺がかける、と言って、彼はスマホを取り出した。

「悪いねぇ」

「……本当に悪いと思ってんのか、アンタは」

 ネットで検索をしていた彼が、電話をするらしく席を立った。

「……悪いねえ」

 その後ろ姿を眺めながら、私はもう一度謝罪した。


 END.



※本当に熱中症はやばいので、早めの対処をお願いします。半分ほど実体験です。

※本当に熱中症はやばいので、早めの対処をお願いします。半分ほど実体験です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ