表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編集 冬花火

透明な私

作者: 春風 月葉

 民家の屋根の裏で、ひっそりと後にくる死を待つ。

 私は氷柱。

 動くことも許されず、その身は涙となって溶け落ち、私という存在は削られていく。

 あぁ、また一滴、命の雫が地に消えた。

 そんな私が悲しくて、涙を流して泣くけれど、泣くほど命は燃えていき、最後の時は近づいて、わかっているのにその涙は流れることをやめてはくれない。

 そんな私は憧れた。

 一面を埋める濁りのない白に、ただ憧れた。

 ふわりふわりと地に降りる様は、まるで天使のようだったし、日の光を受けて光る様は、宝石のようだった。

 あぁ、私もあんな風に生まれることができたなら、どんなに幸せだろうか…。

 そんなことを思いながら、私は私の最後の一滴を地に零した。


 時は流れ、私は巡る。


 ふわりふわりと私は地に落ちていた。

 私は雪。

 ふわりふわりと地に落ちて、同じ白に潰されて、光の下には戻れない。

 あぁ、視界が埋まっていく。

 私が他の雪に埋まりきる直前、遠くの民家で光る何かを見つけた。

 透き通った円錐の身体の中に一面の白い世界を閉じ込めて、ポタリポタリと何かに涙を流す美しい氷の造形。

 あぁ、私もあんな風に生まれることができたなら、どんなに幸せだろうか…。

 そんなことを思いながら、私はむせ返るような白の中に消えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ