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テネブリスアニマ ~終焉の世界と精霊の魔城~  作者: 朝寝東風
第二章 フェリヌーン陥落
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激突イスフェリアVI

「エクセキューショナー・モード」


 大天使の体が所々青い色に発行し出す。彼から感じられる強さが数倍に跳ね上がった。今度はマカンデーヤが冷や汗を流す。


『馬鹿が! いつもこうなる前に倒しているだろう!』


 仁はこの状態の事を知っていた。アイアン・サーガ・オンラインの拠点ボスは第2形態を持っている。大幅なステータスアップに状態異常耐性、更には特殊攻撃。この第2形態を如何に発動させないかが勝利の鍵。


 ただ命を削って発動するので、対策が無いわけでは無い。上策が時間切れを待つ。この第2形態にはタイマーがあり、タイマーが0になる前に敵を倒さないと命が尽きる。中策が撤退。少し時間をおけば状態が解除される。それを見計らって再度攻めれば良い。下策が何も考えず戦闘を続行する事。


「やっと殴り概のある敵だ!」


 マカンデーヤは下策を選んだ。否、マカンデーヤには策など無い。眼前の敵が死ぬまで殴る事しか考えていない。それすらも本能で勝手に動いていると言った体たらくだ。


 マカンデーヤのパンチがクリーンヒットする。大天使は微動だにしない。お返しとばかりに大天使のパンチがマカンデーヤを軽々と吹き飛ばす。


 実力差は顕著。しかしそれでこそマカンデーヤは燃える。


「参る!」


 大天使が攻める。今回は高速戦闘では無く、正面からの殴り合いだ。大天使には余裕が無かった。フェイント一つ二つかませる時間すら惜しかった。そして何より、大天使はマカンデーヤが正面から殴り返すと分かっていた。それなら殴り勝てる。


「ウォォォ!」


「ハァァァ!」


 マカンデーヤと大天使がノーガードで殴る、蹴る、頭突く。マカンデーヤは攻撃されるたびに後退りも、すぐに前進するため両者は同じ場所で戦っている様に見える。


『削り切れるか?』


 仁はマカンデーヤのステータスを横目で見ながら黙っていた。2重回復のおかげでマカンデーヤのダメージは思ったより酷くは無い。それでも確実に体力は減っている。テネブリスアニマの自軍回復スキルが無ければ、マカンデーヤは既に死んでいた。


 仁は大天使のステータスを見ることは出来ない。しかし発光が陰ってきた様に見える。マカンデーヤと殴り合って無傷で済む事はありえない。それにエクセキューショナー・モードでは自動回復がオフになる。途中でモードを解除すれば、自動回復が発動してマカンデーヤが蓄積したダメージが回復される。仁は途中解除が出来るのか分からなかった。少なくてもゲーム中では一度も遭遇しなかった。


「どうした息切れか?」


 マカンデーヤが挑発する。


「良かろう、我が最強の一撃を受けてみよ」


 大天使が少し距離を開ける。マカンデーヤは咄嗟に追撃出来ない。仁はテラスの手すりを血がにじみ出るほど握った。第2形態が敗北前にする最強攻撃。通称、最後っ屁。今のマカンデーヤがこれを喰らって生き残れるか。


「神々よ、貴方様方の下に帰る事をお許しください」


 大天使は残った全ての力を出し切った。その光り輝く体は直視出来ないほどだった。それでも仁はマカンデーヤが笑っているのが見えた。マカンデーヤは真っ向からこの技を受ける気だ。


「こいつは凄え! そしてそれに勝つ俺様は更に凄え!」


 マカンデーヤが吠える。


 そして大天使が必殺の一撃を放つ。


 光が全てを覆う。


『どうなっている!?』


 そして爆発。


 その衝撃で仁はテラスから城内部に吹き飛ばされた。


 最後には静寂。


「痛てて。人の城でなんて事をするんだ」


 愚痴りながら仁がテラスに戻った。


「これは酷い・・・・・・」


 仁は言葉を失った。中庭に巨大なクレーターが空いていた。庭師を雇っていなくて良かった、と言うのが最初の感想だった。


 マカンデーヤは壁に埋もれていた。衝撃でゴブリンどもも気絶していた。大天使は既に無かった。力の全てを使い果たす天に帰ったのだろう。


「くくくっ、まだ終わってねえ!」


 マカンデーヤが元気に壁を吹き飛ばしながら起き上がる。


「マカンデーヤ、大天使は既に自滅した」


「おいおい、まさか勝ち逃げか?」


「おまえの勝ちだ」


「どうだか」


 マカンデーヤは鼻を鳴らして言う。明らかに不満を隠す気が無い。彼としてはあの攻撃を生き残って一発かましたかった。しかし予想以上のダメージで一瞬気を失った。その隙に大天使は消滅した。


 こうしてテネブリスアニマの危機は去った。大天使が魔城に大ダメージを与え、仁は修復に多くの魔石を必要とした。そして大天使がドロップした貴重な大天使の魔石と大天使の羽が更なる波乱を呼び寄せる雰囲気を出していた。

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