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テネブリスアニマ ~終焉の世界と精霊の魔城~  作者: 朝寝東風
第一章 テネブリスアニマ再誕
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倉庫

「倉庫を50ポイントで作る」


 ジンはそう言って玉座から必要な操作をする。


 ゴゴゴッと音がして、東側の壁に扉が出来た。


「中を見てきますね」


 コレンティーナがいの一番に倉庫に突撃した。


 仁は玉座から倉庫の目録を確認した。


『5000ディナール、5人分の食料30日分、5人分の基礎武具、フェニックスの卵殻か』


 ディナールはアイアン・サーガ・オンラインの世界が使っていた通貨だ。


「陛下、金貨がありますよ!」


 光り物が好きなコレンティーナが早速発見したみたいだ。


 コレンティーナが一人で騒いでいるのを他所に、他の者も倉庫に入るか、倉庫の前に進んだ。


「金貨と銀貨か。使い道があるのか不明だが、最悪溶かすか」


「金ならば相応の価値がありましょう」


 仁とアサンが仲間内で使う意味が無い通貨の事で頭を悩ませる。


「おう、食い物じゃねえか! ちょうど腹が減っていた所だぜ」


 マカンデーヤが燻製肉を丸かじりした。


「ちょっと! 最初は陛下でしょう!」


「毒味だ、毒味」


 仁を優先しろと突っ込むコレンティーナと早い者勝ちだと言い張るマカンデーヤ。


 マカンデーヤがここまで好き勝手にやれるのも食料の量が多すぎるから。


 食事が絶対に必要なのは仁とマカンデーヤ。


 マカンデーヤにおいては3人前は食う。


 コレンティーナも食べるが、趣向品の感覚が近い。


 アサンとケーレスに至っては食事を必要としない。


「陛下、リンゴはいかがですか?」


「ありがとう、アサン。……ちょっと酸っぱいが食えない事は無い」


 何処かでコレンティーナの歯ぎしりが聞こえた気がしたが、仁は気にしない事にした。


「武具はランク1相当のゴミですのう」


 ケーレスが残念そうに言う。


 とはいえ、詠唱を助けるスタッフをしっかり確保する辺り、抜け目がない。


 装備による底上げがケーレスの真骨頂なので、この中で一番武具に期待を寄せていた。


「まあだがこのこん棒は役に立ちそうだぜ!」


 マカンデーヤは考えないで振り回せる武器を好む。


 アサンは剣、コレンティーナは髪の毛に隠せるニードルを好む。


 ランクは低いが4人の種族が好む武具がちゃんと揃っていた。


「俺のはヒューマン用の初期セットか?」


 仁はボロいブロンズソードと腐りかけの革鎧を手に入れた。


 そっと倉庫の棚に戻した。


「大丈夫ですわ。私が陛下をお守りします!」


「ありがとうコレンティーナ。俺の強化は追々考えよう」


『レベルを上げるだけならパワーレベリングするか。俺の種族だとそれしか無いだろうし』


 アサン達は仁がヒューマンだと思っている。


 仁も自分がヒューマンだと思っていた。


 しかし玉座に座った際に確認したらヒューマンでは無かった。


『ブロークンとは聞いた事も無い種族だ。ポーンだから良かったが種族特性が厳しすぎる』


 仁の種族であるブロークン。


 直訳すると壊れ物。


 レベルアップ時にステータスが増加しない。


 新しいスキルを覚えない。


 スキルのレベルアップもしない。


 なお、仁のスキル数は0なので、スキルのレベルアップは気にしなくても良かった。


『テネブリスアニマの進化の間だけでランクアップ出来るのは救いだ』


 ランクアップしたところで強化されるとは思えない。


 今の状態でも十二分に強いアサン達とは違い、仁のランクアップは死活問題だ。


 仁はランクアップ時にブロークンから他の種族へスライドを検討していた。


「ほう、これから凄い力を感じますのう」


 ケーレスが最後に残ったフェニックスの卵殻を骨だけの指で突きながら言う。


 ランク10相当とあったので強力なアイテムなのは間違いない。


 仁がランクアップ時に使えばブロークンから他の種族になれる。


 どんな種族になれるかは分からなかったが、ブロークンよりは確実に強い。


「新しいポーンを作った際に使わせますか?」


 仁の状態を知らないアサンが問う。


 アサンからすれば出所が疑わしく効果が不明なアイテムを仁が使うのは以ての外だ。


「保留だ」


 仁はそう答えるしか無かった。


 急いで決める必要は無かった。


 それに仁のランクアップやレベル上げよりも優先すべき事が山積みだった。


「これからはそう悪い気を感じませんのう」


「ヴァンパイアとリッチに悪影響を与えないなら私達にとっては悪いものでは無いわ」


 ケーレスの分析は確かだ。


 本来不死系の対立軸に存在するフェニックスがアサン達に影響が無いのは訝しむ事態だ。


 発言をしたコレンティーナ本人はのほほんとして重大な指摘をした事に気付いていない。


『確かに妙だ。フェニックスが孵ったら聖属性が失われるのか……』


 その時、仁に電撃が走る!


『孵る? そんな馬鹿な!』


 仁はアイアン・サーガ・オンラインのアイテムを無課金・課金問わず把握している。


 特にレアアイテムならその効果までほぼ暗記している。


 フェニックスの卵殻と言うアイテムはゲームには無かった。


 一度死んでも、真の仲間達と最初からやり直せる。


 復活時にはフェニックスは存在しないし、卵殻を残す事は無い。


 残るのだったら攻略サイトにその事が載っている。


 復活からのカンストユニットの作り方が確立されているのに、このアイテムだけ無記載と言うことは無い。


『フェニックスの卵殻はこの世界特有の物だ』


 そう仁は確信した。


「ん? 卵殻があるならフェニックスは何処だ?」


 仁はふと疑問に思ったことを口に出した。


「焼き鳥なら西の方に飛んで行ったぜ」


 マカンデーヤの発言を聞いて仁はその場で凍り付いた。

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