表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テネブリスアニマ ~終焉の世界と精霊の魔城~  作者: 朝寝東風
第一章 テネブリスアニマ再誕
4/185

アサン

「「陛下!」」


 アサン、コレンティーナ、マカンデーヤ、ケーレスが仁に肉薄する。


「……」


 仁は目を開いたが、言葉を失った。


 仁は人間だ。


 少なくてもそう思っている。


 それが仁の世界でも凶悪とされるモンスター4体に囲まれたら固まるしかない。


 奇声を発してパニックにならなかっただけ運が良い。


『夢か? そうだトラックに轢かれたから見ている夢だ!』


 仁は必死にそう思いたかった。


 それにしてはコレンティーナが誇る二つのスイカの感触がリアル過ぎた。


『落ち着け。リアルにこんなモンスターが居るわけがない! どっきりか!?』


 仁は思考の狭間に落ちた。


 声をかけて欲しいアサン達。


 周りは不自然な沈黙に支配された。


「そうじゃ、きっと陛下は驚いておられるのだ!」


 亡八型マッドサイエンティストAIを持つケーレスが最初に言葉を発する。


 彼の言葉で微妙な雰囲気がそれで霧散した。


「そうか、それもそうだ」


 アサンが知ったかぶりを発揮する。


 それでもアサンには妙な説得力がある。


 全ての行動が芝居がかっているためだ。


「そうね、私と陛下二人っきりで親交を深めますわ」


「そんな事したら肝心の話をする前に日が暮れるだろうが!」


 コレンティーナのしっぽりやる発言をマカンデーヤが否定する。


「じょ、状況の説明を」


 仁はなんとかそれだけ捻り出せた。


 とにかく情報が足りない。


 すぐに取って食われる雰囲気では無い。


 約一命を除いて。


「なれば、皆を代表して私が説明しましょう」


 この手の事はAIが劇場型ラスボスのアサンが得意とする。


 大げさな身振り手振りを交えて何が起こったのか臨場感たっぷりに怪演した。


「全ては6時間前に始まったのだ!」


 パチパチパチ、とコレンティーナが拍手をする。


 実は四人の中で一番ノリが良いのがコレンティーナだ。


「我らは謎の発光現象と共にこの地に落ちて来た!」


 仁はなんとか頷く。


「この地には偉大なる陛下、我ら4人、そして変わり果てたテネブリスアニマのみ!」


 ケーレスがランクダウンした事を横から補足した。


 話を腰を折られて不機嫌になったのか、アサンがケーレスを睨む。


「偉大なる陛下が目覚めるまで我ら3人で調査にあたり、周りにはゴブリンしかいないのを確認した!」


「確認したのは俺様だ!」


 戦いの事になったので無双型ウォーモンガーAIのマカンデーヤがツッコミを入れる。


「そこっ! うるさいぞ」


 アサンの叱責が飛ぶが、どこ吹く風だ。


「さて、気を取り直して……」


 それでも続けようとしたアサンだが、解説すべき事が終わった事に気付く。


 マカンデーヤのツッコミはアサンのラストスパートをとん挫させる妙手だった。


「後は陛下が目覚めるのを待っていただけよ」


 一瞬の隙を付き、コレンティーナが締めた。


 要領が一番良いのもコレンティーナだ。


「そうか、ありがとう」


 仁は状況をある程度理解した。


 本心としては普通に説明して欲しかった。

 

 しかしアサン達の立ち振る舞いを見て、アイアン・サーガ・オンラインの真の仲間だと心で理解出来た。


 何も得る物が無かったとしても、それだけは収穫だった。


 仁はアサン達を見て一つ気がかりな事があった。


『賢過ぎないか?』


 アサン達はAIだ。


 仁の指示と乱数により決まった行動をする。


 これまでの行動は乱数による物には思えなかった。 


 まるで仁と同じ知能があるかのようだった。


「陛下、やはり我らのは知能の事が気になりますかな?」


 ケーレスが問う。


「そうだ」


「少なくてもアイアン・サーガ・オンライン時代の私達より遥かに強化されておりますのう」


「アイアン・サーガ・オンラインを知っているのか!?」


 仁に取っては知能アップ以上にケーレスがゲームを知っている事に驚いた。


 ゲームだと知っていれば、当然仁が人間だと知っているはず。


「勿論、と言いたいのじゃが、実際はこの世界に落ちた時に情報を増えたようじゃのう」


「知能のみならず知識の追加があったと?」


「そうじゃのう」


 ケーレスとの会話で仁は酷く驚いた。


『知識のインストールだと? 一体誰が? それに俺には何も無いぞ』


 今の仁では想像も付かない超常なる存在の介入を疑う他無かった。


「大丈夫ですわ。陛下が人間であり、なおかつ私達と違う次元の存在だったとしても、陛下は陛下です」


 コレンティーナが仁の手を握って言う。


「すまない」


「良いのです。陛下もこの地に来て混乱しておられるのは知っています」


「そ、そうだな」


「やはりここは私が夜のお世話を……」


「待ちやがれ、この駄淫婦が!」


 既成事実一直線のコレンティーナをマカンデーヤが止める。


 仁としては少し残念だった。


「陛下、今はこれからの行動を決めるのが先決です」


「そうだったな。まずは玉座に座らないと」


 仁はさっそく行動に移った。


 余裕がある内にやり終えないといけいない事が多い。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一日一回投票可能です
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ