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テネブリスアニマ ~終焉の世界と精霊の魔城~  作者: 朝寝東風
第一章 テネブリスアニマ再誕
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白亜の幻III

 仁とアサンは倉庫に入り、追加された武器と防具の出来を調べた。


「ランク3程度はあるか?」


「武器に関してはランク3が少量で、残りはランク2です。」


 幻影の宝珠はランク4。


 普通のショートソード2本と普通のロングスピア1本がランク3。


 様々な種類の武器50数本がランク2。


 錆びた短剣1本がランク1。


『この錆びた短剣って俺の装備だよな?』


 仁は一つだけ場違いな装備を見て考えた。


「どう配分する?」


「剣は陛下と私。槍は予備としましょう」


「マカンデーヤとケーレスは良いのか?」


「必要なら自己申告するでしょう」


「なるほど」


 アサンが武器の仕分けをする。


 ケーレスが欲しがりそうなのはランク2の杖くらい。


 マカンデーヤなら武器には目をくれず、ワイン樽を飲み干す。


「となると次は防具か」


「こちらは特に目立った物はありません」


 アサンが良さそうなのを手に取るが、幻影の宝珠に匹敵する物は無かった。


『ゲームよりしょっぱい。それともテネブリスアニマはあくまで攻撃重視だからか?』


 テネブリスアニマの本質は蛮族経済。


 潔いまでに武力一辺倒。


 だから守るという行為を軽視している。


 それが防具の選定に現れたのかもしれない。


『俺がチンギス・ハンを参考に作った国だからな』


 遊牧騎兵を誇ったモンゴル帝国。


 その軍事ドクトリンをアンデッドで再現したのがテネブリスアニマ。


 騎兵のトップスピードには劣るが24時間走り続けられるアンデッドは意外と速攻戦に適している。


 初戦さえ勝てば、敵が再編成する前に敵国深くに進軍出来る。


 そしてアイアン・サーガ・オンラインではそれで世界を統一した。


 なお、強いボス級の個体にはアサンとマカンデーヤをぶつけて潰した。


 ゲームで上手く行った戦法だ。


 この世界でも上手く行くはず。


『兵站の心配をしなくて良いのは強みだ。他の国々はどうだろう?』


 人間の兵站事情は未だ不明だ。


 ケーレスの予想では一度に6千人が限界。


 旧ティファーニア農業国の想定国力から割り出した信用出来る数値だ。


 しかし、日を追うごとに大陸の国家事情が複雑なのが判明してきている。


 蒸気溢れる幻想中世の適正兵力を馬鹿正直に信じても良いのか仁は分からなかった。


「ランク3の鎧が2つとローブが2つ。他はランク2です」


 調べ終わったアサンが報告する。


「鎧はアサンとマカンデーヤか?」


「片方は陛下が装備すべきです」


「俺か?」


「装備があれば、初撃で死ぬ可能性が減ります」


「なるほど」


 仁は納得した。


 アサンが恐れていたのはラッキーショット。


 アサンは仁を絶対に守ると固く誓っている。


 それでも運悪く流れ矢が当たる可能性はある。


 それが最初のゲームプレイの死因故に、仁も一撃死の危険性は身を持って理解していた。


「他に何か確認しますか?」


「いや、これ以上時間を費やすより次の部屋を購入した方が良い」


「分かりました」


 二人で倉庫を出ようとした。


「陛下、只今戻りましたわ!」


 その時、コレンティーナが外から帰って来た。


 コレンティーナはアサンが滞在している間はレベル上げに勤しんでいた。


 近くのゴブリンは全滅している。


 しかし野良ゴブリンと野良ウルフは少数だが居る。


 非効率的だが狩り続ければいずれレベル10にはなる。


 コレンティーナは少し遠出したかった。


 しかし仁とアサンの次の一手を聞かされていない。


 そんな中で数日留守にするのはコレンティーナの主義に反した。


 狩りから帰って来たコレンティーナが見たのは、山積みの新しい洋服。


『やばい!』


 仁が思うも、基礎ステータス差は月とスッポン。


 仁が「や」と考えた時にコレンティーナは全てを把握していた。


 把握したのは服だけで、幻影の宝珠は眼中にすら無かった。


 普通は幻影の宝珠を優先して服は後回しだ。


 しかし、コレンティーナは違った。


「陛下、御着替えの時間ですわ!」


「俺はこのボロで……」


「駄目です!」


 有無を言わさぬ風に断言するコレンティーナ。


 と同時にチラッとアサンを睨む。


「陛下の身なりは大事です」


 コレンティーナに気圧され、アサンも同意した。


 巻き込まれたく無いオーラが全開だった。


「分かったのなら、殿方は退出よ!」


「分かった」


「俺も……」


「陛下は陛下です!」


 コレンティーナの謎理論に振り回される仁。


 アサンはこれ幸いと脱兎の如く玉座の間に帰った。


『この裏切者!』


 仁の心の叫びは誰にも聞こえなかった。


「さて、まずはこれにしようかしら?」


 コレンティーナが服に情熱を掛けるのにはわけがある。


 転移時には下着同然の格好。


 倉庫1の防具で多少はマシになったが、衣服は下着だけ。


 ダグの村の戦利品は質が低すぎて雑巾程度にしか使えなかった。


 それが今回は違う。


 倉庫2で待望の絹が手に入った。


 着飾らずにはいられない。


 しかし、陛下より豪華なのは遠慮したい。


 なら、陛下がより豪華なら問題は無い。


 完璧な理論だ。


「お手柔らかに頼む」


 被害を最小限に抑えたい仁。


「さあ、どうしましょうかしら?」


 お構い無しのコレンティーナ。


 そして仁は夜まで着せ替え人形に徹するしか無かった。

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