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テネブリスアニマ ~終焉の世界と精霊の魔城~  作者: 朝寝東風
第一章 テネブリスアニマ再誕
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ダグの村 侵攻戦VII


「何が起こったのかのう?」


 ケーレスは一瞬唖然とした。


 ゴブリンスケルトンが20体は消し飛んだ。


「第3階級の魔法にあったかのう」


 あの青い光が第3階級の魔法だと瞬時に思い至る。


 そしてそれを操れる存在が敵として乱入した事も。


 ケーレスは作戦の継続を選択した。


 敵の正体に俄然興味が湧いた。


「そこの人、大丈夫!?」


 青い長髪の女性が闇から現れ、ロバートに近づいた。


 彼女の持つ剣は薄青く輝いていた。


 髪の色と同じビキニアーマーが嫌でも目に付く。


「あ、ああ、まだ生きている」


 致命傷のロバートがなんとか返す。


 一瞬「胸が小さいですね」と言おうとしたのを必死に我慢した。


 ロバートを責めるのは酷。


 一つの例外を除けば、演劇でしか使われない防具を纏っている女性が悪い。


「それは良かった。私は聖少女ルミナ、神の偉大なる導きにより、皆様を助けに来ました!」


「ほ、本当か!?」


「助かった!」


「おお、神よ」


 村人達が歓喜の声を上げる。


「か、感謝する」


 ロバートはぎこちなく返事をした。


 聖少女。


 神に聖別されし者。


 大陸の宗教を取りまとめる中央大神殿が認定した特殊存在。


 最低でも第3階級の魔法を使える人類の切り札。


 伝統的に痴女も着るのを躊躇うビキニアーマーを装備している。


 神殿曰く、ビキニアーマーは下賜された女神の下着。


 それが何らかの魔術的な防御を持つ装備なら仕方がない。


 実際は何の効果も無い。


 それに20歳を超えても少女を名乗るのはどうか。


 この余りにもアンバランスなルミナにロバートは正常な思考を放棄した。


「不浄なアンデッドども、光の神の力の前に消滅せよ!」


 ルミナはそのままゴブリンスケルトンに突撃していった。


 スライス達が命がけで戦ったスリーマンセルの敵を剣の一振りで倒す。


 3体を倒したと思ったら次の3体に斬りかかっていた。


 少なくてもその強さは本物だ。


「酷い怪我だな。このポーションを呑め」


 ルミナが暴れまわっている中で彼女の仲間と思しき者たちが来た。


 2メートル弱はあり、ハーフジャイアントかと誤解する様な体躯の大男がポーションを差し出した。


 ロバートでも一瞬で分かるほど質の良い使い込まれた重装備をしていた。


 材質はアダマンタイトにミスリルのルーンでコーティングを施した魔法重鎧。


 右肩に掛かっている3メーテル長の大戦斧はルミナの剣同様に青い光を放っていた。


 神の金属と言われるオリハルコン製だ。


 その精鍛な顔と合わせ、この40代の男がパーティーリーダーに見えた。


 リーダーはルミナなのだが、決定権の大部分はこの男が握っている。


「良いのか?」


 ロバートは躊躇した。


 知らない冒険者から物を貰うのはトラブルの元だ。


 命掛けの戦場で気にするような事ではない。


 しかしロバートはもう生き残れるだろうと確信めいたものを感じていた。


 だから平時と同じ対応をしてしまった。


「いいですぅ、いいですぅ。その代わり情報をお願いしますぅ」


 ネチッこい声色の女性が交換条件だと言う。


 それを聞いてロバートは逆に安心出来た。


 手渡されたポーションを飲みながら、この女性を見る。


 衣服は上流階級の婦人のもの。


 軽い化粧もそれに準じている。


 旅の伯爵婦人と言われたら信じてしまうだろう。


 ただ、動きが洗練され過ぎていた。


 ロバートが都市で抱いた安娼婦のそれに通じていた。


 それを思い出して、ロバートはこの女性の正体に気付いた。


 若い頃の悪所通いのおかげだ。


 交渉事を専門にする元高級娼婦。


 当たらずとも遠からず、とロバートは考えた。


 この一連の動きは全て計算されている。


 ロバートはゴブリンスケルトンと対峙した時以上の緊張感で話を続けた。


「ありがたく、と言いたいが両腕がな」


「では、私めが」


 そう言って女性がポーションの蓋を開け、ロバートの口に液体を流し込む。


「お、おらも怪我を……」


「座ってろ、馬鹿者! 儂が先だ」


 村人達は異様な色気を振りまくこの女性の虜だ。


 ロバートも致命傷の痛みが無ければ危なかった。


「サミュエル、守りは頼んだぜ」


「ガイツに神の加護があらんことを!」


 ガイツと呼ばれた斧の男が戦列に加わる。


 サミュエルと呼ばれた男がタワーシールドを構え、守りの体制を取る。


 ロバートは格上のお手並み拝見と洒落込んだ。


 そしてそれはケーレスとて同じ。


「ルミナ、邪魔だ」


 ガイツは大戦斧を一回転させて飛び上がった。


 そして遠心力を利用して大地を全力で殴った。


 ガラス化した地面にクレーターが出き、派遣が残ったゴブリンスケルトンに刺さる。


 数体のゴブリンスケルトンがなんとか耐えた。


 しかしアンデッドが体制を立て直せる前にルミナに斬り殺された。


 大陸最強の冒険者パーティーの一つ、青き閃光。


 彼らの乱入でダグの村侵攻戦はテネブリスアニマの敗北で終わった。

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