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テネブリスアニマ ~終焉の世界と精霊の魔城~  作者: 朝寝東風
第一章 テネブリスアニマ再誕
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人の村


「おお陛下、貴方は一体何処まで……」


 ケーレスは仁の考えが当たった事で更に仁への信仰を強めた。


 ケーレスはテネブリスアニマから西に三日の距離に居た。


 ケーレスだから三日で済んだ。


 平均的なヒューマンなら10日は掛かった。


 ケーレスの周りには40体のゴブリンスケルトン。


 彼が隠れている茂みから少し行った所には木の柵があった。


 耳をすませばヒューマンの話し声が聞こえた。


 ヒューマンとは人を含む人間種だ。


 広義の意味ではエルフやドワーフすらヒューマンに分類される。


 この村は人の村だ。


 モンスターはランク1から一つずつランクを上げていく。


 ヒューマンはランク3からスタートして、次はランク5。


 モンスターはランク10まで上がる。


 ヒューマンはランク5で天井。


 ごく少数の例外ならランク7まで行ける。


 ヒューマンは人である事をやめればランク10まで行く。


 ヒューマンの種族特性として、ランクが低いゴブリンの様な雑魚には強い反面、レベル7以上のモンスターには弱い。


 強いモンスターには勝てない。


 アイアン・サーガ・オンラインではこれが理由でヒューマン勢力は他勢力に押されていた。


 それでもゲームの大陸には大規模な国家が複数あった。


 国家が大きくならないと強くなれない。


 国家が大きくなりすぎると強いモンスターの縄張りに入って消滅。


 こんなシーソーゲームを絶えず繰り返してきた。


 この村のヒューマンは大きくなる国の尖兵か、それとも大きくなり過ぎた国の火遊びか。


 ケーレスの幾分か美化された記憶でで仁の言葉を反芻していた。


「ケーレスよ、西にヒューマンが居るはずだ。調査して来い」


 仁の命令は空振りに終わる可能性があった。


 しかし仁は西にヒューマンが居ると強く予想していた。


 理由は簡単。


 フェニックスだ。


 フェニックスは秩序側のボスユニット。


 卵から孵ってすぐにモンスターに特攻はしない。


 可能なら安全な場所へ向かう。


 近辺の西が危険区域である可能性はあった。


 しかし、更に西に行けばヒューマンが居るはず。


 ゴブリンの集落の位置もその仮説を後押ししていた。


 テネブリスアニマの西に一つ。東に三つ。


 西の集落からは東の集落より知的生命体の製造物が多く回収出来た。


 もちろん、フェニックスが真っすぐ飛ばず、蛇行したり向きを変えていれば別。


 幸い、ケーレスが目で追った限り、真っすぐ飛んでいた。


「やはりヒューマンですのう」


 ケーレスは人を見える位置まで近づいた。


 仁は人との接触は禁止されていた。


 人は群れる生き物だ。


 ここで異常が発生したと他に報告が行くと面倒。


 存在すら知られていないのなら、より多くの敵を誘引する事は無い。


「弱いのう」


 ケーレスは仁がそんな事を考えているとは知らなかった。


 ヒューマンがただ弱すぎて情けを掛けているのだと思った。


 それにケーレスの目から見ても、成人男性の数が少なすぎた。


 数人殺すだけでこの村は持たない。


 アイアン・サーガ・オンラインでは早く攻略し過ぎると難易度が上昇した。


 ゴブリンを早く倒し過ぎるとランク3のオークが出てジリ貧になる。


 そしてジリ貧ながらオークに勝つとランク5のオーガで滅亡する。


 ヒューマンを選択した新人プレイヤーが良く陥る罠だ。


 対策は二つ。


 一つはゴブリン相手に農民ラッシュをして、農民のレベルを上げる。


 ジリ貧になるのは手数が足りないから。


 なら、最初から手数を増やしておけばオークの攻勢に耐えられる。


 ランク3ヒューマンとランク1ゴブリンならランク差でヒューマンが勝つ。

 

 内政ユニットを戦闘ユニットと使う是非はこの際は無視する。


 ゴブリンが無限湧きしないここでは出来ない。


 薄々分かっていたが、倒したゴブリンがリポップしない事で仁はショックを受けた。


 一つはイベントを開始させず真の仲間ラッシュで彼らのランクを上げる。


 ランク3のメイデン、ブレード、ブレインの補正があれば格上を食える。


 この3人が他が育つ前にゴブリンを駆逐し過ぎると上のゲームオーバーパターンにハマる。


 どっちの方法を取っても、中盤はオーガをチョークポイントに誘導してレベル上げをする。


 仁はイベントフラグをオンにしたく無かった。


 村人と接触が無ければフラグはオンにならない。


 ゲームではそうだったが、現実でどうなるかは仁にも分からなかった。


 飲み食いを必要とせず、息もしないケーレスはこの手の諜報に最適だった。


 配下のゴブリンスケルトンを見ても、ゴブリンがアンデッド化したと勝手に思うはず。


 ケーレスは村人に気付かれず、情報だけ持ち帰る少し困難な任務を開始した。

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