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その8 Vの愛人軍団という幻影

おっしゃ。

思ったとおり、エスパー部隊は地味にしか使用できなかったな。


俺は、ベンチの裏に隠したレコーダーを回収した。

きっと連中は使い方を調べたはずだ。


これで突破口が見つかるはず。


レコーダーをポケットに仕舞うと友美が俺に駆け寄ってきた。

「Vちゃま、こんな地味な効果じゃエスパー部隊がかわいそうだよ。なんか考えてよ。」


なんかって・・・

俺は少し考えて。


「じゃあさ、みんなからお願いごとメモをあつめて、お前が適当に選んでかなえてやればいいじゃん。もっともスイッチなしで叶うものなら、スイッチなしでかなえてやればいいし。」


友美はうなずき、エスパー部隊に向き直る。

「じゃあみんな私に願いをかいてメモを渡して。どんな内容でも怒らないから遠慮なく書いてね。」


みんな、ポケットからさっとメモ帳を出すと、ささっと書いて友美にさしだした。


素早いな、おい。


―――


次の日、俺は柏と原宿に来ていた。

友美と同じくらいの身長しかない佐藤柏を連れて歩くのは犯罪の匂いがするが、柏が望んだんだからしょうがない。

うん、しょうがんない。


うしろから、蛇のような友美の視線を感じる。


あれで隠れているつもりなんだろうか。

身を隠しても、この殺気は素人の子供でも背筋が寒くなるぞ。


しかし、佐藤柏は気にしてい無いようだ。

さすが中国戦や学校一武道会を友美と過ごしただけはある。まったく気になっていないとは、可愛い体をしてしるのに心は豪傑だな。


原宿は、女の子しか居ないと思っていたけど、よくみるとカップル以外ににも親子連れとかもいるね。

柏はカップルとかには目もくれないけど、父親と来ている感じの子は目で追う。


エスパー部隊のリーダーなんてやっていても、まだまだ子供なんだな。

「柏、肩車してやろうか?」

「いいですよ、恥ずかしいですから。」


「なあ、ここで敬語とか使われると援助交際とか思われそうで怖いな。もっと家族っぽくしなよ。」

「え・・・・そうっすか。それじゃあ、お兄ちゃん。」


俺は思わず柏の手を掴んでブンブン振ってしまった。

柏、おまえは良い子だな。

もう俺は、お父さんとか呼ばれることは覚悟していたんだよ。


一通り服を選んでみて、初めて柏の趣味を知った。

いつもは、ぼてっとした安い服を着ているけど、選ばせて見たら、意外にロックかパンクっぽいものばかり選んだ。


俺にも数着選んでくれたけど、それも明らかに頭蓋骨とかモンスター系だったし。


こうやって一緒に歩いてみて気づいたよ。

エスパー部隊は、一糸乱れぬ連携を見せるけど、エスパー部隊はエスパー部隊という人格ではない。

33人の集合体だから一人ひとりよく見れば、きっともっと個性的なんだ。

エスパー部隊のことは可愛がっているつもりで居たけど、全然足りなかったな。


大通り近くまで来て、俺達はベンチに座ってクレープを食べることにした。


パクパククレープを食べる柏を見て、しばらく気づかなかったけどハット気づいて驚いた。

「あれ!柏って、一口ずつ味わって食べることも出来るの?。」


柏はもぐもぐクレープを食べながらうなずく。

「はい、基本は一気食いだけど、こうやって食べるのも練習したんです。逃亡していた頃は人と違うことをすると目立つから、一生懸命こうやって食べる訓練したんですよ。」


「それって柏以外に誰が出来るの?」

「う~ん、あとは私と一緒に逃げていた宮崎那卯と江戸川園子くらいであります。」


「そうなんだ・・・・もっとお前達の事はちゃんと見ないと駄目だな。全然理解していなかったよ。」


柏はもぐもぐ頬っぺたを膨らませながら、ニコリと微笑んだ。

ちっ、かわいいな。


こうやってみると、あんまり体も大きくないし、結構幼い顔をしている。

戦いと訓練の時しか見ていなかったから、こんな子供っぽい表情をすることすら知らなかった。


こんな娘に、これからも戦いの命令を出さないといけないかもしれないと思うと心が痛む。

でも、友美のためにこの娘にも手伝ってもらわないといけない。

罪悪感は感じているんだよ、一応は。


俺は俺達の前を通り過ぎる人たちを眺めた。

そして感慨深く柏を見た。

まさか17才のJKと原宿デートする日が来るとはな。


柏がクレープを全部食べたので、いつものクセで自分のクレープを差し出した。友美はかならず俺の食い物も狙ってくるから。

柏は驚いた顔をしたが、すぐにニッコリして受け取ると、俺の腕を抱いて言った。

「ありがとう、お兄ちゃん。」


ズキューン

やっべえ・・・

この新しいシュチュエーションは超ヤバイよ。


お兄ちゃんて言葉が、これほど破壊力があるとは思わなかったね。

兄ちゃん、兄さん、お兄様は呼ばれていたけど、意外にもお兄ちゃんとは全然呼ばれていなかったかもしれない。


俺の腕を抱いてほっぺを膨らませながら、もぐもぐクレープを食べる柏・・・かわいいな、おいおい可愛いよ。

ヤバイぜこんちくしょう。


ピキーーーン


そんなことを思っていたら、背中に冷たいレーザーのようなものを感じた。

ゾゾゾー


殺気?

いや、大事な事を忘れていた。友美さんが後ろからつけていたんだった。


すると、柏はクレープを食べ終わり語りだした。

「私達は、堕胎された胎児から作られた改造人間なんです。それが昔は凄く恨めしかった。研究所が私達を兵器として改造したんですもの。

でも今は本当なら死んでいた私達が生きて学校まで行けていて、こうやってお洋服を選んだり美味しいものを食べたりできて、とっても幸せだなって思うんです。

だからお兄ちゃんと出会ってからは国持兵団研究所を恨んでいません。

生きて幸せを感じることが出来たんですから。生きていて良かったって思います。全部お兄ちゃんが私達を拾ってくれたおかげです。

だから私達はみんなお兄ちゃんに恩返しがしたいんです。」


俺はそっと柏の頭を撫でた。

「気にするなよ、たまたまさ。それに俺も助けられたから恩返しは不要だ。むしろ俺がお前達にもっと恩返しをしなくちゃな。」


柏はさらに甘えるように頭をすり寄せる。

「そんなこと無いです。本当に感謝しています。でも私達にはこの力とこの体しか恩返しするものがありません。ですから・・・」


そこで背中に衝撃が走る。

「はい時間切れ!約束の5時間きっかりです。」

目を凄い吊り上げた友美が俺の背中にへばりついていた。


友美・・・・本当はあと20分あるよね。

質の悪いキャバクラの時短かよ。


柏は立ち上がると友美に一礼した。

「ありがとうございました。このような出すぎたお願いを聞いていただき、不肖佐藤柏は感激しております。」


友美はさっきまでの恐ろしい表情から一転して、ニコニコしながら言った。

「なにいってるの。柏はVちゃまの愛人軍団の一人なんだから当然だよ。」


え?

なんだそりゃ!

俺は驚いたのなんの。なんだ今の発言!。


「友美、おまえ勝手に他人を愛人認定しちゃだめだろ!。」


柏が友美に駆け寄って腕を抱く。

「友美様、それは秘密の連合だって言ったじゃないですか。」

「・・・・マジなのか?。」


柏は恥ずかしそうに言った。

「だって、私達はこの力と体しか恩が返し出来るものが無いですから・・・Vさんがエッチなお店に行く必要が無いように、みんなで協力しなくちゃねっていう事になっているんです。」


俺は頭をかきながら聞いた。

「それっていつから?。」

「中国で北京に移動中の時間が長かったので、そういう話ばっかりしていました。」


そうだ、こいつらはしっかりしているようで中高生なんだ。

みんなで集まって時間が出来れば、そういう話で盛り上がるわな。


いつかこいつらも、広い世界を知って大人になっていけば「どうしてVみたいな不細工が好きだったんだろう。ぷぷぷ。」とか言い出すんだろうけど。


今は間違って手を出さないように気をつけよ。

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