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その4 防御不能攻撃

夜、その日は二人を寝かしつけたあと、房代と莉奈と夏子と俺でお茶を飲んでいた。


莉奈は俺を見つめて言った。

「意外ね、わたしはてっきりヤンデレスイッチを取り上げるのかと思ったわ。」


だが俺は肩をすくめる。

「今日のあの二人を見たろ、人っていうのは追い詰めると知恵を絞って戦ってくる。あの二人にとってヤンデレスイッチは自分の欲望を満たす魔法の道具だから、絶対に手放さなさないさ。だからコッチが奪おうとしたら、何をしてくるか分からない。だったら渡しておいて使用の制限を与えておいたほうが、まだ安全だと判断したんだ。」


夏子は緑茶に砂糖を入れながら言う。

「でもあの二人は貪欲ですよね。スイッチなんてなくったって一番欲しい愛は独占状態なのに。Vさんが居なかったこの2ヶ月が、よほどこたえたんですかねえ。」


房代は俺を見つめながら微笑んだ。

「でも気持ちはわかりますよ。私でさえ今はVさんからあまり離れたくないですし。明日もお夕飯の後にみんなでお風呂に入りましょう。お背中流しますよ。」


俺はぎょっとした。

「え、そういう方向に話が行くの?無理はしなくて良いんだよ。」

「ふふう、もう一緒に入ったんですから恥ずかしいことは無いじゃないですか。しかもVさんの元気なアレも沢山見ましたし。すべてがいまさらですよ。それとも私達とお風呂に入るのは・・・Vさんは絶対にいやですか?」

「え・・・嫌って言うか、俺はむしろ良いっていうか。」


そこで莉奈に股間をつかまれた。

「武威さん、明日のお風呂を想像して、もうココがメタモルフォーゼしてるじゃない。なんだったら今夜はうちにきて合体変形とかもする?。」


夏子がニコニコお茶を突き出していった。

「じゃあ私はゲッター3で!」

「仲間に入る気かよ!」


まあ、こういうくだらない会話も、久しぶりで楽しいけどな。


―――


次の日。

やっぱり昨日のメンバーでお風呂に入っているわけですよ。

俺はみんなに聞きたいね、なぜ今日も集まっているのかと。


さっき、夕食の後に廊下で後ろから友美の声がした。


「スイッチ押すね」


おれが振りかえった時は、もうスイッチを押していてニッコリされてしまった。


おいおい、反論の暇はなしかよ。かわいいなチクショウ。


しかし友美は決めたルールのギリギリのラインを攻めてきやがるな。

さすが手段を選ばない恐ろしい奴だ。


でもこれは良い傾向だ。

つまり友美は、昨日きめた3っつのルールを理解していて、一応守ろうとはしているってことだ。


それに知らないうちにスイッチを使われないことで、徐々にあのスイッチの能力のようなものも把握できるはずだ。

能力が把握できれば、追々対抗手段も見える。



そして今に至る。



そんで俺は何故か友美の髪を洗っているんだけど、芽衣が横で早くトリートメントを使いたいらしくて、手に持って待っている。


「芽衣、昨日覚えたから早く使いたいのか?。」

「そうだよ、使い方はこの説明書きに書いてあったんだよね。あとでVっちにもトリートメントしてあげるよ。」

「おれはいらないけど・・・・まあ好きにしなさいな。」


友美の頭をお湯で流すと、友美係りを芽衣と交代した。


すると房代が手招きしている。

ああ、背中流すって言ってたもんな。


俺が座ると房代は背中を流し始めてくれた。

「今日も友美様はスイッチを使ったんでしょうか?。」

「ああ、イキナリ声をかけて振り向いた瞬間にスイッチされたよ。狡猾だよな。」


「スイッチなんて使わなくても、今夜はお風呂くらいみんなで入ることになっていたんですから、ある意味で被害はゼロではないですか?。」

「ああ、そういう考えもあるか。」


「私思うんですよ、友美様がスイッチを使わなくて済むようにVさんが可愛がっていれば、Vさんが望むように進むんではないでしょうか。」

「そうだね、そうかもね、そうだ、房さんの背中も流すよ、房さんは人に背中流してもらうなんてしてもらっていないだろ。何かやって欲しいことあったら言ってな。」


すると房代は俺の背中をお湯で流すと、隣の風呂椅子にすわる。

「じゃあ背中以外にも頭を洗ってもらいたいです。いつも他人の頭を洗っているんで、自分も洗ってもらいなあって思っていたんですよ。」

「はは、お安い御用さ。」


背中を流していると、房代が静かに言う。

「子供の頃、よくお父様の背中を流したんですよ。私が背中を流すと、お父様は頭を洗うのを嫌がる私を無理やり椅子に座らせて頭を洗ってくれたんです。今思うと楽しかった・・・・。」


「じゃあ、今は俺がお父さんだな」

「ふふ、ちがいますよ、私の中ではお兄様なのですから。」

「そうだったね、よしじゃあ次は頭を洗うよ。」


房代の頭を洗いながら思った。

もしかしたら、今のは「父や兄のようって言ってるんだから、これ以上踏み込んだエロいことするなよ」という防衛線だったんだろうか。


でも心配ご無用。俺は男女関係にはチキンだから、全然大丈夫だから。

房代の髪を流した。

リンスをしようと周りを見る。


そしたら横に気配を感じたから見てみると・・・・

トリートメントを持った芽衣が居た。


「あああ・・・・トリートメント係りやる?」

「うん、もうトリートメントのプロだから任せて!」

おれは房代係りを芽衣と交代した。


湯船にでもつかるかな。

すると夏子が俺に背中を向けてクイクイ手招きする。

「おやじ、こっちの背中も頼むぜ。」


イラ!

なんで夏子の背中まで流さなきゃいけないんだつうの。


俺がイラついていると、莉奈がそっと俺にタワシを渡す。

俺と莉奈は目が会うと黙ってうなずく。


俺は、石鹸もつけずにタワシで夏子の背中を擦った。

「いやあ、ちょうどいいよオヤジ。やっぱり背中は人に流してもらうに限るねえ。」


平然とする夏子。

夏子、正気か?

皮膚が厚いのかな。


ちっ、つまらないな。

飽きたよ、夏子の背中擦りは飽きた。

「じゃあ後は一人でやりなよ。」


そういうと、俺はタワシを夏子に渡して湯船に向かう。

夏子は不満そうにこっちを見た。


だいたい、なんでウチの風呂に夏子がいるんだっていうの。

夏子の裸なんか、俺の中では全然サービスショットになってないんだよ。

夏子は不満そうに俺の後ろをついてきて言う。

「Vさん、不公平だぞ。友美ちゃんを洗って友美ちゃんの皮脂がついたタオルで、私も洗ってくださいよ。」


だが無視する!

うっさい、腐りメガネ。

この友美ストーカーめ、友美への情熱がキモいんだよ。

お前なんか、玄太君あたりに萌えられてろ。


夏子を無視して俺は湯船につかる。


しかしあれだな。

なんか、はやくもこの光景になれている自分を感じて驚いたよ。

人間って順応力がすごいな。


隣に友美が来る。

「Vちゃま、今日は股間はメタモルフォーゼしないの?。」

思わず前を隠していない自分に気がついた。

「と、友美君。み、見ないでくれたまえ。」


前を隠すと、友美はヤンデレスイッチを出した。

「スイッチ使いまーす。」


ヤバ・・・

思ったけど遅かった。


カチン


すると冬美が膝の上に座ってきた。

子供がお父さんのお膝の上に座るような気持ちなのかもしれないが、お風呂ではやめてほしい・・・。


冬美はぱたぱたと楽しそうに言う。

「ねえVさん、明日も一緒にお風呂に入ろうよ。」

「そ・・・そうだな。」

そういうと、冬美は伸びをしてから。体を拭いてもらいに房代のほうに歩いていった。


あ・・・今おいてかないで。


しかしまあ、スイッチの力で襲われたのじゃあしょうがないよな。

友美は俺の股間を見て言った。

「随分簡単にメタモルフォーゼするんですね。」


今日は一生懸命、股間にパワーが行かないように雑念でごまかしていたのに、ココに来てメタモルフォーゼ(変形)かよ。

まいったね。


なんかイロイロ諦めた。

そう思いながら湯船の中でアグラをかく。

そこにさっきの冬美みたいに友美が座ってきた。


俺はそっと友美を後ろから抱きしめる。

本当は「今はやめて!」と弾き飛ばそうかとも思ったけど、友美が今ヤンデレスイッチを持っていることを考えたら、これが正解だと思った。


すると友美は嬉しそうに言う。

「あは、もしもVちゃまが拒絶したら、もう一回ヤンデレスイッチを使おうと思ったけど、ギューしてくれたから遣わないで済んだよ。」


やっぱりな。


しかし俺は友美を抱きしめながら人のきっかけの唐突さのようなものを考えていた。


チャンスやきっかけは、唐突に訪れて、いきなり大きな破壊を人間関係に与える。

友美の裸を見ることすらまだまだ先だと思ってたのに、いまはお風呂で抱きしめてさえ居る。


俺と友美の人間関係は、本当はこんなことをするくらいまでは近づいていたのに、俺が勝手に壁を作ってたというのか。

ああ、俺が今まで作ってきていた自分の壁は、無駄だったてことなんだな。


まあ、冬美や房代に対して、ココまで壁を壊しても本当は良かったっていうのは意外だけど。

ま、あの二人にとって俺はお父さんやお兄ちゃんだから、こんなものなのかな。


そしてこれからも友美が望めば、もう俺の倫理や理屈は意味をなくして、こうやって軽々壁を突破されるのだろうか。


だが怒れない。こうやって友美に壁を破られることを、内心望んでいる自分居たのだろうから。


俺にとっては、友美は絶対逆らえないココロの弱点だ。

この娘が襲い掛かってくると、俺はなすすべが無い。

愛すべき天敵と呼べる気がした。

お読みくださりありがとうございます。

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