その12 ハニートラップ
先日、エスパー部隊を利用することで、Vはヤンデレスイッチの性能を知った。
ヤンデレスイッチは
赤色はどんな妄想ストーリでも一人を中心に絶対的に巻き込める。
紺が愛のアドバイス。
蛍光黄色が広範囲の人に無差別妄想巻き込みモード。
紫が気まぐれテラマアサのお勧め妄想モード。
灰色が気持ちの深いところに素直な妄想がくりひろげられるモード。
白がキャンセル
と、じつによく分からない性能の持ち主だった。
これでは性能が読めずに俺が困ったのも無理は無い。
ーーーー
おれは荒川武威だからVとあだ名がついた。
このあだ名は結構気に行っているのだが、最近はVが本名だと思われているらしい。
まあいいけど。
だが不細工なのでVというカッコいあだ名に負けている自分を自覚している。
そんな不細工な俺は今、妙に若くてセクシーな女性に絡まれている。
名前は分からないが、道で急に「飲みに行きましょう」と誘われて、今目の前でグデングデンに酔いつぶれている。
置いて行っちゃおうかな、でも放っておくのも悪いし困ったな。
するとその女性は色っぽい目でいってきた。
「シャワー浴びたいの。シャワーを浴びられる場所に行きましょう」
これはあれかな。つまりエロ展開に行ってもいいってことかな?
おれはこの女性に肩を貸して立たせると、一路ホテルに向かう。でへ。
2時間後
俺は3回アレして、いま裸でこの女性とベッドで横になっていた。
「そういえば名前聞いてなかったな。俺はみなからVと呼ばれている。」
「わたしはサリナだよ。Vさんすごく良かった。また呼び出しても良い?。」
「まじ?OKOK。携帯の赤外線通信送るよ。」
おれはサリナと連絡先の交換をすると、シャワーを浴びて帰路についた。
いやあ、なんか今日はラッキーな日だな。
ま、サリナはスパイか何かだろうけど、こういう攻撃はアリだな。
みんなこういう攻撃をしてくればいいのに。
家に帰ると房代は俺の分の夕飯をとっておいてくれた。
うひ、ちゃんと房代の夕飯も食べるよ。焼き鳥と美女を食べてきたけど、それはそれ、これはこれだ。
「房代の夕飯はおいしいね」
そう言いながら食事を済ますと、友美たちをお風呂にいれ、わりとすぐに寝てしまった。
―――
友美はVが眠ったのを確認すると、携帯電話を盗み出し履歴を調べる。
それを芽衣と房代と冬美が覗き込んでいた。
友美はアドレス帳をチェックして3人にみせる。
「みて、このサリナっていうのが増えてるよ。やっぱりVちゃまは浮気をしてきたんだよ。」
房代は困った顔で言う。
「ただ、エッチなお店で遊んできただけでは無いでしょうか?。」
「ちがうよ、焼き鳥の匂いとお酒の匂いがしたし、すこし香水のにおいもしたもん。Vちゃまがエッチなお店に行ったときは、石鹸のにおいはしても香水の匂いはしないもん。」
芽衣はメガネを直しながら、名探偵のような口調で言う。
「これは、事件の予感がしますね。」
友美はうなずく。
「絶対だよ、房代さんはVちゃまの発着履歴を毎週手に入れて。相手の女は見つけ出して殺してやる。」
房代は友美から携帯を取り上げた。
「駄目ですよ、それにお相手は莉奈さんかもしれませんし。」
「ちがうもん。莉奈さんと遊んできたときは、もっと莉奈さんの匂いがするからわかるもん。」
芽衣は少しかわいそうなものを見る顔になった。
「でもVっちはかわいそうだよね。こんなに筒抜けに調べられているとは思っていないだろうから。ほんとVっちは友美っちに油断しすぎだよね。」
冬美はうなずく。
「このあいだ、マーヤちゃんのおっぱいに乗せてもらって喜んでいたことも、友美にバレていないつもりだしな。Vさんは、友美の前では少し哀れだよ。」
友美は急に目を吊り上げる。
「でも見逃してあげてるんだから良いの。私が許せる範囲でフラフラするならいいけど、このサリナは何?私の知らない女と遊んでくるなんて許せないよ!。この女は殺すしかないよ。きっとVちゃまにたかる毒虫だよ。」
―――
次の日の夜
俺はまた別の女性とホテルでごろんとしていた。
この女性はナミエと名乗った。
いやあ、イケメンマスターは美味しい商売ですな。
こう、代わる代わる襲われては身が持たんよ。がはははは。
次の日の夜
なんかミーシャとかいうロシア系美人とホテルですよ。
なんかアレか?これがモテ期とかいうやつか。
みんな俺のイケメンスイッチ狙いか?
男を送り込むと叩き潰されるから女性を送り込むか。
正解だよき君達、俺の股間も上機嫌だよ。
がははは。
次の日の夜
マリコと名乗る・・・・
次の日
アツコと名乗る・・・・
次の日
シャーリーと名乗る・・・
数日後
毎日かよ!
毎日違う女が襲ってくるんだけど、これってどういう事?
なんで同じ女性が二度襲ってこないの?。
こいうのって、同じ女性が数回襲ってきて気を許させないといけないんじゃないの?
なんで毎回違う女性なの?
俺は何度来たってウェルカムなのに。
まあ、こう連日違う女性とパコパコするのも楽しいけど、相手の意図が見えないと不安になるな。
俺は今夜相手をしたアニスという黒人女性に、そっとついて行く事にした。
そしておれは、数分の尾行で衝撃なシーンを見る。
アニスの足の下に急に黒い穴が開き、落ちていってしまったのだ。
あれは・・・・ヘルスイッチ!
俺はすぐに周りを見渡し、ヘルスイッチの隠れていそうなところを探した。
ちらりと、セーラームーンみたいな格好をした男が100メートルほど先の建物から見えた。
俺は急いでその建物で入り口に向かう。
何故善三が?
おれは、その建物出入り口が見える場所で、闇に共鳴して身を隠す。
すると、そこでさらに驚いた。
建物から出てきた善三と一緒にいたのが友美だったからだ。
俺はだいたい理解した。
なぜ同じ女性が二回俺の前に現れなかったか。
地獄に落とされていたからだ。
しかしヘルスイッチは審判のスイッチ。
どういう条件であの女性達を地獄に落としたのだろうか?。
俺は耳を空気に共鳴させて、遠く離れた善三と友美の会話に耳を澄ます。
善三は気弱そうに話し始める。
「友美ちゃん、これは本当に世界平和の役に立っているのでありますか?。」
「あたりまえでしょ、イケメンスイッチを狙う悪の組織だったら地獄に落とすって条件でスイッチを使ったら地獄に落ちたんですよ。世界平和の役にたっているに決まってるじゃないですか。あいつらの手にイケメンスイッチが渡ったら、中国みたいな殺戮がまたおきるんですよ。」
「そ、そうか・・・そうでありますよね。」
「そうです。だからVちゃまに近づく女は、みんな地獄に落とすんです。」
友美、いつのまに善三をたぶらかしたんだ。
いや、こうやって不細工な馬鹿をたぶらかす為に友美は整った顔立ちに作られたんだから、これが友美の本来の姿なのか・・・。
善三が友美に背を向けて、ヘルスイッチを仕舞おうとした。
その瞬間、友美は如意棒を取り出し、大きな斧の形に変形させる。
おれはまさかと思いながら見ていたら・・・
目を見開き、またあの怖い顔になると、友美は善三の頭に斧を振り下ろした。
おいおい待て待て!
おれは、急いで突風を打ち込み友美の斧を弾き飛ばす。
「きゃあ!。」
斧を風にあおられて、友美は体制を崩した。
その声に反応して善三が振り返ると、友美は素早く斧を小さい棒にもどし隠す。
「友美ちゃん、大丈夫でありますか。いまの突風はすごかったでありますな。」
手を差し伸べる善三。しかし友美はその手を無視して自力で立ちあがると、周りをキョロキョロしはじめた。
本能的に、誰かに邪魔されたと気づいたのか。
「大丈夫です。次も私が呼んだらすぐ来るんですよ。」
そう言うと、友美は善三に挨拶もせずに走り出した。
なんで走って帰るんだ?
そう思っておれは気づいた。
友美は俺よりも先に帰りつく気なのか。聡い事だ。
俺は寂しそうに歩き出す善三の前に姿を現す。
善三は驚いて身構えた。
「善三が友美に何をさせられているか俺は知っているよ。そこで聞きたんだが、どうしてそんな手伝いをするようになったか教えてくれないか?。」
善三は急いでヘルスイッチを出そうとしたが、俺は風の共鳴力を使い、一瞬でスイッチを奪う。
「まあ慌てるな、スイッチを使ったら話せないだろう」
「こらイケメンマスター、スイッチを返せ。」
「返すさ。ホントのことを教えてくれたらな。別に真実を知りたいだけで、友美やあんた責めるつもりは無い。真実を知れば友美にいらない気を使わせなくて済むかも知れないだろ。だから真実を教えてくれ。それによっては俺も作戦を変えないといけないからな。」
そう言って、ヘルスイッチを善三に投げた。
あっさりスイッチを返されて善三は意外そうな顔をしたが、スイッチを仕舞いながら話し出してくれた。
「そうだな。私は調べまわって友美ちゃんをさがしたんだ。アレだけ可愛いからすぐ見つけられたのであります。そして友美ちゃんの後をつけて後ろから危険が無いか見守っていたのです。そしたら・・・」
「見守っていたら?。」
「友美ちゃんは、ほかの数人の女の子と隠れてこのあたりに待ち伏せみたいに身を隠したんであります。そして・・・・しばらくしたら、白人の女の子に斧で襲い掛かって頭を叩き割って殺してしまったんであります。」
俺は慌てた。
「え、白人?何人風だった。」
「あとで名前を見たらミーシャというロシア人風の名前の入った携帯をもっていたであります。」
「まじか・・・」
「驚いた私はすぐに駆け寄って改心を求めました。そしたらこの女性はイケメンマスターを狙う悪の女だから、殺すのはしょうがないと教えてくれたのであります。」
友美さん・・・・そんな事をしていたのか。
「で、どうなったんだ?。」
「他の女の子と一緒にその死体を近くの廃工場に持っていたんです。そしたらそこにはすでに別の女性の死体が二つ転がっていたのです。友美ちゃんがマジックで書いたのか、『サリナ』と『ナミエ』と顔に書いてあったのが印象的な恐ろしい光景でありました。」
「うそ・・・あいつ、見事に最初のスパイから殺していたのか・・・。」
「それを私が咎めたら、『だったらそのスイッチで調べれば良い、イケメンスイッチを狙う悪の毒女なら地獄に落ちるようにスイッチをつかえば良い。それなら間違いないだろう』と言ったのです。たしかにそれなら間違いが無いと思い、協力することにしたのであります。」
「なるほど・・・」
「その廃工場に、つぎはマリコという女性を拉致してくると、私に審判のスイッチを使わせました。そうしたら確かに地獄への穴が開いたのです。その瞬簡に一緒に居た女の子たちは、落ちるマリコの穴に、すばやく三つの死体を放り込んでしまったんです。それ以来、友美ちゃんに呼ばれると急いで駆けつけて審判をしていたのであります。」
俺は、うっすら忘れかけていた友美の本性のようなものを思い出した。
初めて会ったときも、まるで何の躊躇もなく人の頭を石でつぶして殺したっけ(殺しきれてなかったけど)。
あの性質は、まだ残っていたんだ。
だから、本能的に敵と判断した女スパイたちを次々に殺したのか?。
まあイケメンスイッチを守る為に殺したなら、まだ救いはある。
だが、もしもただの嫉妬で殺していたとしたら?
その可能性を考えたら俺は、なんとも言えない恐ろしさで身震いをした。
そして今日は、友美はいちいち善三を呼ぶのが面倒になって、死体を残さないですむヘルスイッチを奪うために善三を殺そうとしたのか。
冷酷にして残虐だな。
うっかり忘れていたけど、あいつは未来では自分の欲望のために100億人以上殺した女だ。その未来がなくなったとはいえ、あいつの本性は変わらないか。
おっさんやビッチを殺す程度、屁とも思っていないのは当然だな。
俺はうなずき善三に忠告をすることにした。
「善三、おそらく次に友美に会ったら秘密を守る為に殺される。もう友美に近づくな。お前のためだ。」
「何を言うんだイケメンマスター。さては友美ちゃんが私と密会することに嫉妬したな。私をココで殺すのか?男の嫉妬は醜いぞ!」
「いや、お前のためだ。このままじゃ醜く歪んだ妖怪みたいな顔になった友美に殺されるのはお前だぞ。」
「うるさい、バーカバーカ、死ね!。」
善三は素早くスイッチを入れる。
そして俺は、また地獄に落とされた。
僕にもハニートラップ募集中




