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その1 ヤンデレ天使はVの天敵

~~~~~~

荒川武威は、みなから敬意をこめてロンリーV(孤独な勝利者)と呼ばれている。

人類最強であった祖父を倒し、イケメンマスターとして世界の中央に影響を与えるほどの権力も間接的に持っている。


そのことに本人も含め、周りの者はあまり気づいていないが、Vは今間違いなく、世界で一番の力を持った人物となった。

その気になれば、どんな我侭だって言えるところに居る。


しかし、世界の摂理は不思議なもので、すべての生物には「天敵」と呼べる存在が現れる。

「天敵」とは、捕食される側にとっては一方的に捕食してくる、絶対的な敵である。

対等ではない、絶対的に勝てない敵・・・それが「天敵」である。


人類最大の力を持つVには、もはや天敵などありえないとすら思えた。

しかし、Vの天敵は最も身近なところに現れた。

ヤンデレスイッチという、Vが最も防衛できないスイッチとともに。


そして、その日もまたヤンデレスイッチは使われた。


カチリ


静かな部屋の中でスイッチの音がしたとき、Vの恐怖は始まる。

~~~~~~



俺はV。結構不細工な男だ。

時々コブラに似ているって言われるけど、それは褒めすぎだな。


コブラは俺の2倍男前だ。


この間は、ワンピースのウソップよりは男前だって言われた。

だがそれも間違い、第二シーズンのウソップには勝てる気がしない。


この間なんかキン肉マンを引き合いに出されたが、それなんか大間違い過ぎる。

キン肉マンはマスクの下はイケメンで、俺なんか足元にも及ばないのだよ。


そんな俺が今見ている光景は、とてもじゃないがありえない光景だ。


夏子が一生懸命、友美をつかって芽衣にトリートメントの使い方を教えているし、その横では一生懸命に房代が冬美の頭を洗っている。


みんな裸で。


まあ、お風呂だから当たり前だけど。

隣で湯船に入っている莉奈にいたっては、完全にリラックスモードで足を伸ばして体伸ばしているし。


確かに、うちのお風呂は銭湯並みにでかいさ。

まあ、皆で風呂に入るのも楽しいかもしれない。


しかし問題はそこじゃない。


莉奈は俺の横に動いてくると、俺の肩に肘を乗せてきた。

「どうしたのよ武威さん、今日は随分静かじゃないの?。」


俺は莉奈を見た。

少しは隠して欲しいんだよね、下半身の一部がメタモルフォーゼして動けないっていうの。

でも、一人だけ取り乱してもかっこ悪いから俺は諦めてため息一つ。


「はあ・・・・なあ莉奈、お前はおかしいとは思わないの?みんなおかしいよね。友美、芽衣、冬美、夏子、莉奈、そして房代!なぜ俺も一緒に風呂に入っていることに疑問を持たないんだ。?。」


莉奈はクスリと笑った。

「きっとみんな武威さんが離れすぎていて、おかしくなっちゃったのよ。リバウンドってやつね。武威さんが2ヶ月も離れるから、みんな距離感がわからなくなっちゃったんじゃないの?私は元々武威さんとはこういう距離感だから違和感は感じないけど。」

「まあ・・・莉奈はそうだけど・・・。房さんまでもっていうのは変じゃないかな?っていうか一緒に入る流れが記憶にないんだけど。」


「・・・・そうね。私と武威さんの二人ではいるなら分かるけど、なんでみんなで入ったんだっけ?。アレ、私も思い出せないわ。」

「なあ、まさかと思うけどさ、こうは考えられないか。まさかと思うけどコレがヤンデレスッチの力だとか。」


「ヤンデレスイッチの力は武威さんに三流萌えアニメみたいなハプニングを作るってこと?。」


「ああ、昨夜も友美はヤンデレスイッチを使ったらしんだが、俺は友美を抱きしめて半泣きしちゃったんだよ。今思うと俺らしくないっていうかさ。もしかするとヤンデレスイッチの力は批判力や理性を崩壊させたり、ドラマティックなハプニングを作り出すスイッチなんじゃないかって気がしてきたよ。」

「なるほどね・・・調べてみないといけないわね。」


カポン


そこに、友美と芽衣が湯船に飛び込んできた。

飛び込んでくるなり、友美は俺の腕を抱く。

友美さん、心の準備が出来ていないから抱きつかないで・・・・


「友美、お前ヤンデレスイッチ使ったよな。」

友美は、一瞬驚いた顔をした後、テヘっと笑った。

可愛いいなちくしょう。


「さすがVちゃまだね。テラマアサちゃんは絶対気づけないっていっていたのに、もう見破るなんて。」

「ああ、昨日神社でお前を抱きしめた自分の心理状況に納得がいっていなかったからな、警戒はしていたんだよ。」


そこで全員が湯船に入って来た。

うん、すごいハーレムだね。


そこで夏子はハアハアしながら友美の背中に抱きつく。

「可愛いぞ、友美ちゃん、可愛いぞ。」


なんとなく夏子を引き剥がしてみた。

「おい夏子、いま大事な話中なんだ後にしてくれ。」


みると夏子は鼻血を出している。

俺は、夏子の顔にお湯をかけた。

「夏子、鼻血が出てるぞ、もうあがったらどうだ?。」


すると夏子は仁王立ちになってケラケラ笑い出した。

「なにを言っているんですか、今日はVさんだって鼻血仲間じゃやないですか!。」


え、まじ?

俺はそっと自分の鼻の下を撫でてみる。

確かに指に血がついた。


・・・・しまった、湯船で長居しすぎた。

絶対、友美や房さんが裸だから鼻血が出たんではない。


しょうがないから立ち上がろうとしたけど、思わず頭がチカチカする感触がしてよろめいてしまった。

ほら、裸に興奮したんじゃなくてのぼせただけだ。


そこからは情けなかった。

みんなに肩車してもらったり、水をかけてもらったり、体拭いてもらったりして風呂から出た。


その間、俺は一生懸命「普通股間が変形するのは当然で、俺はアレではないていうか、コレはアレで・・・」と意味不明な言い訳を続けて、気持ちも疲れた。

まさか友美や房代にパンツをはかせてもらう日が来るとは思わなかった。

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