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選手を探せ!

 特撮ヒーローものっぽい話です。

 鬱要素、人死に要素はほぼないです。

 近未来の話で、ちょっとだけ進んだ空想科学は出てきます。

 主人公は某キャラクターに似ていますが、いずれ理由は説明します。

 名称は法則があります、たぶんすぐわかります。

 奇跡、魔法、超能力、等の現実から大きく逸脱したような物は出てきません。

 数名の学生達が見守る中で、椅子に座り白衣を着た男がもったいぶった調子で人差し指を高く掲げると勢いよくエンターキーを押した。

 勢いよく画面が流れて行くのを皆固唾を呑んで見守る中、画面に『Complete』の文字が浮かぶ、一同から歓声が沸き上がる中、エンターキーを押した白衣の男は高らかに笑い声をあげる、


「ふふふ、ははは、うわーはっはっは、やはりこの天才の手にかかればこのようなプログラム訳もなく完成できるのだ!」


 周りはいつもの事なので、だれも突っ込みを入れないが、期日までに完成したことが嬉しいのは皆同じ気持ちだったので、便乗するかのように喜んでいた。

 しかしその歓声や笑いも、一人の心無い一言で沈黙してしまった。


「着る人は決まったの?」


 皆言葉を発する事なく沈黙している、先ほどまでバカ騒ぎしていた白衣の男も誰とも目を合わさぬようにしていた。


「コミュ障だからな・・・」


 誰かの言った一言に、敏感に反応する、


「ちが~う!誰も私のこの崇高かつ高貴な頭脳についてこれないのだ!」

 

 ポーズまでつけ派手に話す彼は今年もう21になろうとしていた、微妙に中2レベルで中身の成長が止まってしまっているのではなかろうか?そんな事を思わせる男であった。


「誰か心当たりはいないのか?プロレスラーの兄がいるとか、柔道とかレスリングの金メダリストの親戚がいるとか!」


 皆が、そんな都合よくいるわけねぇじゃんと口々に言う中で一人が、ボソッと呟くように言った、


「あ、そういえば妹の同級生が合気道全国大会で優勝したって言ってた気がした」


「それだ!名は?」


 白衣の男の気迫に押されるように、口ごもりながら答える、


「え~と、たしか・・・ウエスギマコトって名前だったと思った」


 名前を聞き出すと、すぐPCに向かい名前の検索を開始する、


「ウエスギはいいとしてマコトはどんな漢字だ?」


 非常に困ったような顔をしながら知らないと答える、妹との会話で出てきた名前なのだからどのような漢字で書くのかなど分るはずもなかった。

 「まったく、つかえぬ奴だ」等と悪態をつきながらPCに向かい検索を続ける、『ウエスギマコト 合気道 優勝』のキーワードで検索を開始すると大量にヒットした。


「合気道王子、ファンクラブ、絶対王者、ふむ、写真も出ているが、イメージ戦略的にも申し分ないな、柿崎!貴様をスカウト部長に任命する!首に縄着けてでも引っ張ってこい!所長命令である!」


 皆は彼の言動に半分以上諦め気味ながら、スカウトして欲しいという思いもあったので、災難ではあるが柿崎にはがんばってもらいたい、そう思っていた。

 しかし一人はふと思い出していた、『あれ?柿崎の妹って女子高じゃなかったっけ?』と。


 携帯電話を取り出し、妹に連絡を取っていた柿崎は「そこをなんとか」「大学見学だと思って」「中二病患者の相手だと思って」「かわいそうな人だから」など後半微妙に聞き捨てならない会話をしながら電話を切ると、


「今からでよければ来れるって、ただスイーツ奢ってくれって」


「よし!本庄!」


 微妙に長い髪を縛った、骨と皮しかないような男が即答する、


「イヤです、今月バイト碌に入れなくてピンチです」


「中条!」


 太った男がポテトチップの袋を漁り、モゾモゾと食べながら言う、


「今月限定フィギュア5体もゲットしちゃったんで無理っす」


「河田!」


 化粧っ気のない眼鏡の女が素っ気なく回答する、


「いやよ、てか所長の家でお姉さんにご馳走してもらえばいいじゃない」


 すると今度は所長を名乗る男が微妙に嫌な顔をしだし、駄々をこねるようにブツブツ言い出したが、懐が寂しいのは彼も一緒だったらしく、渋々と同意した。

 学園都市の一角だけあり、30分も経たぬうちに待ち人はやって来た、出迎えに行っていた柿崎に連れられるように制服を着た少女とジャージ姿の美少年がそこに立っていた。

 写真で見て知っていただけに、所長を名乗る男は立ち上がると少し右足を引きずりながら少年に近寄ると、両手をその少年の肩にかけ熱く語り始めた、


「上杉君だね?君が欲しい!君が必要なんだ!是非僕と一緒に来てくれ!」


 皆が唖然とする中、少年は顔を真っ赤にしながら目を白黒し、どう反応していいものか戸惑っていた、


「え、あ、その・・・」


 口ごもりながら話すその言葉に違和感を感じたのか、男は肩に掛けた手を放し、右手を胸に伸ばした、


「ん?女?」


 言い終わるかどうか微妙なタイミングで男は投げ飛ばされ宙に舞っていた、


「死ね!変態!」


 彼女は捨て台詞を吐くと、すごい勢いで扉を閉め、出て行ってしまった。後には唖然とする面々と、投げ飛ばされ目を回している男が残されていた。




 

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