異世界の議会(1)
―戦艦大和甲板(寄港中)―
「「と列員整列!!」」
「「乗艦された!!」」
「「内閣総理大臣に敬礼する……かかれッ!!」」
と列員整列は、VIPなどに対して行われる。
水兵が数人整列して敬礼し、VIPへの敬意を表すのだ。
VIPの格によって人数は変わる。今回は最大の8人。相手が国連日本陸海空軍最高指揮官たる内閣総理大臣だからだ。
……あ、と列の「と」は常用漢字でないようだ。余談だが、拳銃も「けん銃」と表記している。
戦艦大和に総理が乗艦した理由は、方舟の女王と非公式かつ極秘の会談をするためである。
気になる会談の内容は……駄目だ……言えない。守秘義務がある。
ちなみに会談は成功したらしい。
―数日後―
俺は方舟議会から参考人招致を受けた。
今、ミュラ女王と共にVIP席にいる。
方舟議会は、方舟の立法機関だ。
各地方や部族から選出された首長、つまり領主や族長などが議員として一同に会し、法案を審議する一院制の立法府だ。首長の選出方法は各々に委ねられているらしい。
国王は、議会を召集し、法案を裁可する。但し、日本国天皇とは違う……。
拒否権があるのだ。
とはいえ、それは簡単には発動されず、歴代の国王は恣意的に議会を運営したことはないそうだ。
……彼らの文明度は高い。
開会を告げる鐘が鳴り響く。
議長が中央に出て、VIP席に一礼する。開会の挨拶だろう。
聞くところによると、議長は各議員の持ち回りらしい。
議長が女王を見る。女王は軽く頷いた。
「高貴なる精霊族の首長、ミュラ女王陛下のご臨席を仰ぎ、臨時議会を開会します」
……といった主旨の挨拶を議長がし、議会は開かれた。
「……ミュラ女王陛下よりお言葉がございます。陛下、お願い致します」
隣の席の女王が立ち上がる。それに合わせて、全議員が一斉に起立した。
俺も慌てて立ち上がる。
「…………あの日……デウゴスの放った"神の業火"は、異世界の勇敢な戦士によって防がれた……」
おや、大和のことかな?
「……彼等は、方舟の民を救い、あのデウゴスに一矢報いたのですッ!!!!」
その瞬間、会場に万雷の拍手の音が轟いた。
……光栄の至りだ。俺たちはたまたま召喚され、たまたま持ち合わせていたミサイルで、核を撃破しただけだが。
後で乗員たちに伝えておいてやろう。
俺は気を引き締めて、異世界での喚問に臨んだ…………。